高校生の恋愛をえがいた作品は、小説に、コミックにたくさんあります。
登場人物たちと同世代、あるいはその前後の世代くらいなら
物語の感性になんなくついていくことができるかもしれません。
私のような歳ともなると、高校生の時代があったとはいえ、
そう簡単に物語に同化することはできません。
人気作家の作品であっても、
時代を超えてしっかり読ませてくれるものなしでは、正直つらいものがあります。
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百瀬、こっちを向いて。/中田 永一 (祥伝社文庫)
¥600 Amazon.co.jp
高校生の恋をえがいた4編がおさめられています。
青春モノはちょっと、という人でも、この本ならいいのでは。
主人公が、
先輩のふたまたを隠す役割を負う人間レベル2の「百瀬、こっちを向いて。」
高校生の時に意識を失い、5年後に目覚めた「なみうちぎわ」
国語教師が覆面作家と知った女子高生の「キャベツ畑に彼の声」
美しいことを隠すために"ブスメイク"する「小梅が通る」
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いずれも、物語の設定が、並みの青春モノよりひねりが効いています。
物語の展開も、ひとひねり半あって、最後の半回転が、
甘酸っぱさを越えた大人の心地よさを感じさせてくれます。
私がもっとも気に入ったのは「なみうちぎわ」。
5年間の眠りを存分に活かした物語の流れ、
その流れに過不足のない表現は、60ページを使いきっています。
映画にしたら、監督が原作にさらに書きこむ余白もまだ十分にありそう。
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突飛な、非現実的な現象や生物を道具立てにしなくても、
現実の範囲内で、まだまだ物語って創りだせるんですね。
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