私の友達は、サラリーマン、脱サラ自営、跡取り自営、職人など、
生活の糧をえる手だてはさまざまです。
それぞれ苦労を背負いながらも、
しっかりと、あるいはなんとかやっている者もあれば、
商売をたたんだ者もいます。
◆
八番筋カウンシル/津村 記久子 (朝日新聞出版、2009年)
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Around 30 のタケヤスは体を壊して会社を辞め、地元に帰ってきました。
彼は小説の新人賞を受賞しましたが、まだ次の作品のオファーはありません。
彼と同じく地元の商店街"八番筋"に暮らす同い年の友だち、
ホカリ(女性)、ヨシズミ(男性)もそれぞれ実家の店を再開を考えています。
彼らは皆、母子家庭で育ちました。
ある日、同じ母子家庭で、追われるように町を去ったカジオが姿を見せます。
◆
八番筋の青年会の連中の多くは、暇にまかせて噂好き。
そこに、八番筋の今後を左右する話が舞い込みます。
青年会の連中は賛否を論じたり、どちらにつこうか迷ったり。
そんな時期に、タケヤス、ホカリ、ヨシズミも青年部に巻き込まれます。
◆
地元相手に商っていると、商圏の人たちの構成が変化したり、
時代の変化で扱っている商品やサービスが下り坂になったり、
跡取りがいなかったりして、商いを続けるのが難しくなることも。
商いの舵を大きくきろうとすれば、資金が必要になったり、
新たに商いのコツを身につけなおしたり。
そんな自営の人たちは、おいそれと、
勤め人ほどには柔軟に稼ぎの元を変えることができません。
◆
でも、ちょっと考えてみると、
これって会社の中にもよく起きることです。
市場の変化に対して、経営の舵をどちらにきるか、あるいは切らないか。
結論にたどりつくために喧々諤(けんけんがくがく)々の議論が展開され、
結論が出たあとも、会社の中の意見は斑模様だったり。
◆
卒業をひかえ、どんな道に進もうかと考える学生さんだって、
ひとり心のなかで、舵をどちらにきろうか迷うことはあるでしょう。
私も勤め先を変えようと考えたとき、
自分のなかで八番筋のオヤジやオバサンや若者のように、
あれやこれや自問自答して、心の中は喧々諤々でした。
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どうやら"八番筋"は、
会社のなかにも、ひとりの心のなかにもあるようです。
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