わかりにくい優しさ ~ 「たまさか人形堂物語」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

以前勤めていた会社で、顧客も招いてパーティーをした時、
あるお客様が私の方に寄ってきました。

 - ちひろさん、アンケートをとってみたんだ。
 - アンケート?
 - そう。「ちひろさんて、どんな人?」って訊いてみたんだ。

もっとも多かった回答は、
「口にしていることの他にも、まだ何かをたくらんでいそう。」だったとか。

    

たまさか人形堂物語/津原 泰水 (文春文庫)
¥560 Amazon.co.jp

人形店をやっていた祖父がさっさとニュージーランドに行ってしまい、
広告代理店を解雇された30代の孫娘澪(みお)は店を任されることに。
彼女は人形の修理の店として再生を図ることにしました。

その店の従業員募集に応募して採用された、
言葉の多い冨永くん、口数の少ないシムさん。、
タイプはことなるものの、ふたりともどこか謎めいています。

そこに持ち込まれる人形の修理の話、ふたりの従業員の謎にまつわる話を、
澪が語ります。

    

顔が毀された人形の修復を依頼する女性客と、
修理しても子供に再三ひきちぎられるティディベアの修理を依頼する母親、
どちらも冒頭の章「毀す理由」の客です。

人形の毀された理由にあれこれ想像をめぐらせながら、
シムさんと冨永くんが修復のしかたを探り、思わぬ結論にたどりつきます。

    

店にくる前には人形との関わりも、人形に対する考えも異なる3人が、
互いに一目おきながらすぎていく日々。

冨永くんもシムさんも、手先は器用ながら、人づきあいは不器用です。
澪もまじえた三人三様のやさしさが、いずれも不器用なかたちで表されます。

    

私の身近にも、わかりにくい人がいます。

しっかりした思いにうらづけられた行動が積み重なるうちに、
それが試行錯誤をくりかえしていても、
その人となりがぼんやりと浮かびあがってきます。

そう思っているのは私ばかりでなく、
ツレアイの方でもそう思っているかもしれません。


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