明晰で脆い男の生きざま ~ 「今夜、すべてのバーで」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

私は酒が好きです。
家では日本酒かウィスキー、外では主に焼酎かウィスキー。

といっても、酒量はわずかです。アルコールに弱い体質なので。
呑むペースはゆっくりで、ほろ酔いをキープ。
酔うこと自体より、旨い酒を味わうことが主眼です。

酒にまつわるこれといった武勇伝があるわけでもなく、
呑み仲間としては、私は面白味に欠けます。

    

もし私が酒をもっと呑めたら、
酔ったら酒癖がわるくてカラんでいるかもしれないし、
呑み過ぎて体を壊していたかもしれません。

  - オレは、まだだいじょうぶ。

こんな気休めがアルコール依存症への第一歩だとか。

    

この物語の語り手"おれ"は、すごい呑みっぷりです。

今夜、すベてのバ-で/中島 らも (講談社文庫)¥560 Amazon.co.jp

アルコール依存症の"おれ"のγ(ガンマ)GTPは1300。即入院です。

その病院での医者"赤河"や、"三婆"など入院患者たちとのやりとり、
亡くなった経営パートナーの妹"さやか"との喧嘩のような会話。

面白おかしい入院生活や、壮絶な過去のアルコール漬けの生活が、
アルコール依存症に関する豊富な情報とともに描かれています。

    

"おれ"は、アルコール依存症の知識が豊かで、
過去の経緯も振り返りながら、自分の状態も冷静に理解しています。

それでも、酒に手を伸ばしてしまいます。
明晰で脆い男の生きざまがここにあります。

    

読み終えてグッタリするほど迫ってくるものがあります。

それでも、本を閉じれば、ほっと安心しました。
主人公の"おれ"に比べたら、

  私は、まだだいじょうぶ。


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