山崎方代(やまざき・ほうだい)という名は2、3年前に知りました。
ある本に彼の短歌が紹介されていました。
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております
彼の歌とはじめて出逢った時は、女性かな? との印象でした。
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彼の短歌には、どこかさびしくて、あたたかい体温を感じます。
ちゃぶだい
寂しくてひとり笑えば卓袱台の上の茶碗が笑い出しけり
一生を独り身で通した彼の、純朴で、日ごろの暮らしから、
ひょい、と飛び出でてきたような印象の歌です。
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どんな人かと気にとめていたら、図書館でこんな本をみつけました。
無用の達人―歌人山崎方代伝/田澤 拓也 (角川書店)
¥1,785 Amazon.co.jp
無用の達人 山崎方代/田澤 拓也 (角川ソフィア文庫)
¥820 Amazon.co.jp
山崎方代さんの死後、
彼の住んでいた庵に泊まり込み、
彼の作品や対談や随筆を丹念に追い、
たくさんの彼の知人に話を聴いてまわり、
彼の足跡を書きつづった本です。
◆
読み始めてみると、
方代さんのホームレスのようないでたち、
一筋縄ではいかない彼の素顔が浮かびあがりました。
とんだ喰わせ者だなあ
方代さんにそんな人物像を重ねました。
彼に興味を持っても、彼と会って背を向ける人も多かったでしょう。
それでも、たくさんの人たちが彼の周りにいて、
少々困り顔ながら、彼とつきあい続けていました。
彼の話すことを、出まかせと知って聴いている人たちです。
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読み進むうち、
寂しく、妙に人懐っこく感じてきました。
彼の詠む短歌も、なかには10年以上も言葉を探していたりすることも。
おのずからもれ出る嘘のかなしみがすべてでもあるお許しあれよ
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詠み終えてみると、
お~い、俺はここにいるぞお。
みんな俺の方を振り向いてくれよお。
そんな彼の声が聴こえてくるような気がしました。
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