ほら、俺はここにいるよ ~ 「無用の達人 山崎方代」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

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山崎方代(やまざき・ほうだい)という名は2、3年前に知りました。
ある本に彼の短歌が紹介されていました。

  一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております

彼の歌とはじめて出逢った時は、女性かな? との印象でした。

    

彼の短歌には、どこかさびしくて、あたたかい体温を感じます。

              ちゃぶだい
  寂しくてひとり笑えば卓袱台の上の茶碗が笑い出しけり

一生を独り身で通した彼の、純朴で、日ごろの暮らしから、
ひょい、と飛び出でてきたような印象の歌です。

    

どんな人かと気にとめていたら、図書館でこんな本をみつけました。

無用の達人―歌人山崎方代伝/田澤 拓也 (角川書店)
¥1,785 Amazon.co.jp

無用の達人 山崎方代/田澤 拓也 (角川ソフィア文庫)
¥820 Amazon.co.jp

山崎方代さんの死後、
彼の住んでいた庵に泊まり込み、
  彼の作品や対談や随筆を丹念に追い、
    たくさんの彼の知人に話を聴いてまわり、
彼の足跡を書きつづった本です。

    

読み始めてみると、
方代さんのホームレスのようないでたち、
一筋縄ではいかない彼の素顔が浮かびあがりました。

  とんだ喰わせ者だなあ

方代さんにそんな人物像を重ねました。
彼に興味を持っても、彼と会って背を向ける人も多かったでしょう。

それでも、たくさんの人たちが彼の周りにいて、
少々困り顔ながら、彼とつきあい続けていました。

彼の話すことを、出まかせと知って聴いている人たちです。

    

読み進むうち、
寂しく、妙に人懐っこく感じてきました。
彼の詠む短歌も、なかには10年以上も言葉を探していたりすることも。

おのずからもれ出る嘘のかなしみがすべてでもあるお許しあれよ

    

詠み終えてみると、

  お~い、俺はここにいるぞお。
  みんな俺の方を振り向いてくれよお。

そんな彼の声が聴こえてくるような気がしました。


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