究極の選択 ~ 「ひかりごけ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

えいやっ、と、おしゃべりな本と静かな本に分けるなら、
今回読んだのは静かな本です。

    

「流人島にて」、「異形の者」、「海肌の匂い」、「ひかりごけ」、
この4編からなる短編集です。

ひかりごけ/武田 泰淳 (新潮文庫)
¥420 Amazon.co.jp

いずれも、特別な場所に紛れ込んでしまった男が、女が、主人公。
目の前の状況と静かに格闘し「生きる」ことが最優先な人たちです。

    

一見、彼らの姿勢が諦めのように見えながら、
彼ら主人公はどこか遠くを見ながら生きているように感じます。

世の中? 世界? 宇宙?
のようなものを動かしている「何か」ではないかと思います。

    

短期の行を終えた主人公がひとりごちる、
「異形の者」のラストシーンは短編とは思えない、
物語の積み重ねの先に待つ迫力を感じました。

「ひかりごけ」は究極の選択を描いた末に、
サスペンスものも顔負けのラスト。

生死の間をさまよった体験をもつ著者のもつ迫力かもしれません。

    

読み終えて振り返ると、じわじわといろんな問いかけが押し寄せます。
静かでいながら、ほんとうはおしゃべりな本だったようです。


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