本日は朝早く永生病院をまわった後、福岡へ飛んで第12回治療食等献立・調理技術コンテストに、全日本病院協会の立場で審査員長として出席いたしました。

このコンテストは、公益社団法人 日本メディカル給食協会の主催です。同協会(http://www.j-mk.or.jp)は、医療機関、介護・福祉施設で給食を提供している企業が集まった協会です。給食の質向上や安全性確保、調理の効率化を図るとともに、病院など食提供の場における障害者の雇用を促進することにより、国民医療の向上および高齢者・障害者福祉の増進に寄与することを目的として設立されました。
病院等の食の提供に関し、食に対する評価や要望に応じるために、治療食、介護食等の献立作成、調理技術及び下処理から盛り付けに至るすべての調理行程についての審査並びに試食を含めたコンテストを実施し、高度な調理技術の開発、食の資質向上を行い、入院・入所者に、より良い治療食・介護食等を提供することにより、国民医療・高齢者の福祉の向上に寄与することを目的として開催されています。

 

★開会式★

 

コンテストは3部門に分かれており、それぞれのテーマは、治療食部門が「エネルギーコントロール食~心も体も満足~」一般食部門が「高齢者に優しい食事」、行事食部門が「郷土食活用の献立」です。一次審査で、献立の栄養量や食材価格、工夫やアイデア、普及性など、厳しい審査の点数が上位だった20社の参加です。高齢者介護施設の増加につれて、給食の外部委託率が上昇しています。コンテストの趣旨は、コストとクオリティの両面で期待がますます高まる中、献立技術の向上を図ろうというものです。

審査は開会式の後、9時半からスタートして一日がかりです。
私が審査を担当した治療食部門は、既述の通り「エネルギーコントロール食~心も体も満足~」で、エネルギーコントロール食を美味しく満足して食べていただく食事です。午前中は調理面について10項目にわたって審査をします。さらに午後からは、プレゼンを含めた総合評価で審査し、その合計点で争われます。

 

★審査風景★

 

★「プレゼン」の様子★


表彰式では、審査委員長として私が総評を申しあげました。
「調理の状況をそれぞれ拝見いたしましたが、朝早くから、皆様方チームワーク良く熱心に、色々と工夫を凝らしながら真剣に取り組まれ、立派な成果物が出来上がり、大変感動しました。こうして患者さん等に喜ばれ、おいしい食事が提供されることは、誠に嬉しいことです。
私、この日のために昨日の朝ご飯を抜きました。
昨日のランチも抜きました。
さすがに夜は少し食べましたが、今日の朝食も抜いてきております。
本当に試食が美味しくて、食べ放題のバイキングのように食べてしまいました。私の担当は「エネルギーコントロール食」だったのですが、私自身は「ハイパーエネルギー食」になってしまいました。まさに皆さんは「料理の鉄人」ならぬ「調理の鉄人」ですね。

入院患者様は病気で来ていますので、食欲もないのが普通です。皆様方もご存じのように、病気は、薬や手術だけで直すものではありません。患者様がしっかり食事をとり、栄養をとって自然治癒力で病気の回復を図ることが重要になってきます。そのためには、このように如何にして患者さんに喜ばれる食事を提供できるか、また併せて、質の向上、知識の向上を図ることが重要です。

ただ今、表彰式がありましたが実は皆様方が一所懸命作られた作品の審査は、どれも非常によくできており,献立全体のバランスが優れたチームがある一方、一つの皿に光るものがあるチームもあり、採点にはとても苦労しました。順位ほどの技術の差はないと思います。患者様が病院の食事に求めているものは、「安心、安全な食事」「質の高い食事」、そして何より「美味しくて楽しい食事」だと思っています。そうした観点も念頭に審査いたしました。

最近、高齢者の方の「フレイル」ということが盛んに言われるようになりました。日本語でいうと「虚弱」ということなのですが、メタボ健診で食事制限に慣れてしまったご高齢者が、75歳を超えてもダイエットを続けてしまい、身体が弱ってしまうのです。そこでもっとも大事になるのが「食事」です。皆様方には釈迦に説法ですが、肉や魚等のたんぱく質を十分に取ることが必要だということです。「虚弱」の予防にも食事が重要です。私は、75歳を超えたら、「メタボ健診」ではなく、栄養面を主体にした「フレイル健診」を行うべきだと考えています。
また、手術の前後にもキチンとした栄養ケアが必要です。本日の皆様方のように、日々スキル向上のために互いに切磋琢磨していることは素晴らしいことだと感じています。医師会でも摂食嚥下やそれに伴う栄養ケアについては研修会・勉強会を積極的に開催していこうと思います。
さらに、褥瘡のケアにも栄養ケアが必要だと思っています。医師会、病院協会、医学会でも摂食嚥下が非常にクローズアップされています。

最後になりますが、これからの超高齢社会においては、病院や介護施設のお食事だけではなく、高齢者住宅や在宅にまで、皆様のご活躍の舞台はさらに広がっていくことは確実です。今後ますます、お食事を通して多くの患者様を幸せにしていただくことを切にお願いいたします。」
というお話をいたしました。今年もコンテストの治療食がとても美味しかったので、すっかり食べ過ぎてしまい、お昼はお腹が一杯でほとんど食べることができませんでした。とは言え、懇親会場のお料理は、地元の食材がタップリでとっても美しく、さらにはモツ鍋や豚骨ラーメンなどの名物もあって、やっぱり食べ過ぎてしまいました(笑)。
少し気になったのが、調理の際に食材を残して廃棄する場面を散見しましたが、食材を使い切ることを審査のポイント加えたらと思いました。

 

★表彰式★

 

その後、東京に戻り、医療法人社団高輪会前理事長の深井眞樹先生の一周忌メモリアルに行ってまいりました。

深井先生は、全国32箇所で歯科診療所を展開する高輪会グループを確かなノウハウと技術により、口腔機能を蘇らせる日本初の訪問歯科診療スペシャリスト集団に育て上げた、まさに訪問歯科診療のパイオニアであります。全国の歯科医院に先駆けて専用の訪問診療者を導入され、歯科に行けない患者様のために、老人保健施設を訪問し、治療をするという仕組みを初めて作られたのも深井先生であります。
また、平成19年には東京青年医会の早朝勉強会でも「海上自衛隊 遠洋練習航海に学ぶ~リーダーの育成方法~」のテーマでご講演をいただき、大変感銘を受けました。
一方でジャズバンドのドラムも担当されるなど、芸術方面にも精通されており、魅力に溢れた方でした。
ご冥福をお祈りいたします。

 

その後、東京都医師会に立ち寄り、セントラル病院分院・本院・松濤をまわり、永生病院のドクター関連のお通夜に行って、南多摩病院をまわりました。