創刊は1979年だったとか…41年前のお話。
当時駆け出しだった僕は、よく楽器店にたむろしていた。
ギタリストの通称T氏、ピアニストのA氏とともに3人でよくつるんで遊んでいたことが思い出される。
楽器店の向かいにあった喫茶店…そこはランジェリー・ショップも兼ねてたので、僕らは「パンツ屋」と呼んでたのだが、そこで焼きそばばっかり食べてたり、T氏のアパートで伝説の「タモリ3」を3人で聞きながらゲラゲラ笑ってたり。ちなみに酒は飲まなかった。
A氏に感化されたこともあるのかもしれない。
彼が演奏する店に行くと、彼の所有するオルガンがステージの上に実に堂々と置かれている。
名機と言われたYAMAHA YC45Dだ。
僕はシンセサイザーを買った。
ROLANDのジュピター4というアナログ・シンセ。同時に発音できるのは4音のみ。
A氏はKORGのポリ・シックスとか買ってたのかな。こっちは6音ポリ。
そんなころ、僕らにとって興味深い楽器の情報を得られる専門誌が創刊された。
それがKeyboard Magagine。
アーテイスト、ミュージシャンへのインタビューと、新製品レビュー。そしてヒット曲のコピー譜などが主な内容。
たむろしてた楽器店では頼んでもないのに取り置きしてくれてたので(笑)、買い忘れることはなかった。
隅々までじっくり読んだ。
時代は間もなくアナログからデジタルへと進んでいく。
世界的に大ヒットしたデジタル・シンセ、YAMAHA DX7が発売されたのが1983年。
その前の1981年にはMIDI規格が公開。
MIDIは電子楽器間で演奏情報をやり取りできるもので、例えばAのキーボードを弾いてBのキーボードを鳴らすとかが可能。
その後はコンピューターを中心に置いて、いわゆる「打ち込み」、一般的にはDesk Top Musicというレコーディングの一分野に発展したり。
そんな状況をキーボード・マガジンはずっと僕に教えてくれた。
実は2000年あたりからはもう読まなくなってたのだが、今回書店で久々に手に取ったのには理由がある。
創刊以来、月間で発行されてたのがいつの間にか季刊発行になり、そして今回この号をもって、定期刊行は終わるという。
今後は不定期刊行になるとはいえ、時代の流れもあるのだろうか、栄枯盛衰ではないが一つの時代が終わったとも感じる。
音楽マーケットの縮小もあるし、情報ならインターネットで簡単に入手できる現在。
妻は「最近、ギター・ケースを背負って自転車に乗ってる若い人たちを見なくなったわねぇ」なんて言ってる。
久々に読むキーボード・マガジンの紙面には昔と変わらぬ編集コンセプトを感じる。懐かしくさえある。
YAMAHAが近々リリースする新しいコンボ・オルガンYC61の紹介に6ページも使ってる。
これは嬉しい。
「鍵盤を『弾きたい』という気持ち、ずっと応援しています」
これは背表紙に書かれたキャプション。
あの若かりし頃と同じようにじっくり読ませていただこう。胸をときめかせながら。