国芳イズムー歌川国芳とその系脈 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

平成28年4月10日(日)、
『国芳イズムー歌川国芳とその系脈 武蔵野の洋画家悳(いさお)俊彦コレクション』
(in 練馬区立美術館)に行く。

ぴあで演劇だのクラシックコンサートだののチケットを購入して、
貯めに貯めたポイントの一部の期限が切れそうだったので、
ポイントを使ってこの作品展のチケットをゲットしたのだが、
なんだかんだでなかなか行くヒマもなく、ようやく最終日に行くことになった。
しかも午後は半年ごとの恒例行事、中野交響楽団の演奏会、というアイドル並みの忙しさ。
もっと早く行っときゃよかったよ・・・。

「中村橋」とかいう初めての駅に降り立ち、テクテク歩いていきますれば・・・



くま「がおー!」
私「・・・・」

不思議な公園にやってまいりました。



公園の中にあるらしい。



私「う・・うま?」



汗「だ・・大根?」

とにかくシュールな公園の中を通って、美術館へまっしぐら。

私「あ!最終日だから結構混んでたりして。」
汗「まさか~。朝早く来たんだし、大丈夫だよ~。」
私「ま、そうだよね~。」

と思ったら、めっちゃ混んでいた。。。

最終日の美術館は避けるべし。
一つ勉強になりました。



とはいえめっちゃ混んでいたのはチケット売り場だけで、館内はほどほどだったよ!

私「こんにちにゃー!」

◇◆



こじんまりとした美術館であったが、120%堪能した!!

◇◆

(練馬区立美術館より)
 初公開の作品を多数含む幕末・明治期の浮世絵コレクションと悳氏の油彩画を紹介。
 歌川国芳(寛政9~文久元・1797~1861)は今や言わずと知れた幕末浮世絵の大スターです。ヒーローやアウトローはカッコよく、戯画は大ウケ、動物は愛らしく、江戸の市中の話題は持ち前の反骨精神と洒落っ気でものの見事に描いてみせます。
そうした国芳が切り拓いた幕末浮世絵の奇抜さ斬新さは数多くの弟子達はもとより、幕末・明治に活躍した浮世絵師、風俗画を描く市井の絵師たちに脈々と受け継がれていきました。
 この展覧会は武蔵野の自然を描く洋画家、悳俊彦(いさおとしひこ)(1935生)氏の数百点にも及ぶ国芳コレクションの中から、彼の代表作、そして世に1点、数点しか確認されていない稀少作を選りすぐり、また、河鍋暁斎、月岡芳年を含む国芳一門の作品を余すところなく紹介します。加えて、“国芳イズム”を継承する尾形月耕、山本昇雲、そして近年大注目の小林永濯らの初公開の作品を数多く含む約230点で、幕末・明治期の浮世絵・風俗画の粋を紹介するものです。
 悳氏は幕末・明治期の浮世絵の革新性、楽しさに早くから着目し、長年に亘りコレクションしてきた蒐集家・研究者として国内はもちろん、海外でも高い評価を受けています。
そうした一面と共に、本業である洋画家としては風土会に所属し、四季折々に木々や空や水がその彩りを変化させる武蔵野の風景を長年に亘って描いてきました。未だ武蔵野の面影を残す練馬ともなじみの深い悳氏の作品も併せて展示し、コレクターの素顔を紹介します。


大学では江戸文学を専攻してたくせに、本格的な浮世絵展はこれが初めてであったのだが、
すんごーーーーーく、おもしろかった。
熱視線で作品が燃えちゃうんじゃないかってくらい、2人でジロジロ見まくった。

家を出る際は、しぶしぶしぶしぶしぶしぶといった具合に、
隠しきれない渋々感満載だった汗かき夫。
美術館を出る際は、たのしかったー!と歌川国芳を私以上に堪能していたのでありました。

そんな楽しいテンションな汗かき夫にすかさず

私「あ~見て見て~。解説本売ってる~!家に帰って2人で復習したいよね~♪♪」

と、クネクネおねだりしたもんだから、
解説本とそれに合わせて作品集もほいほい買ってくれたのでした。
うぷぷ~。

国芳イズム—歌川国芳とその系脈/青幻舎

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歌川国芳 (ちいさな美術館シリーズ)/青幻舎

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計画どおり。 →夜神月の顔で。

ありがとう、汗かき夫。
そしてありがとう、ぴあ。
ポイント貯めててよかった。
チケットも本もぜ~んぶ無料!!

タダ、大好き!


作品の内容をちょこっとだけ・・・



超有名な「相馬の古内裏」も当然(?)ありました。

医者じゃないのでよくわからないが、かなり詳細な人体骨格。
歌川国芳って、髑髏をどこでみたんだろう。
江戸時代はわりと人が普通に死んでたのかなあ。

レオナルド・ダ・ヴィンチは人体の中身を調べるために、
病院だか葬儀屋だかに夜な夜な忍び込んで、死体を解剖していたとか。
そりゃ宗教裁判にかけられるわい。
時代が時代だけに、奇妙奇天烈な人にしか見えないもん!

髑髏図の前をさくっと通り過ぎまして~ →黒山の人だかりなもんで。
汗かき夫のお気に入りは



「六様性国芳自慢 先負 文覚上人」でありました。

私「もんがくしょうにん~?」

と思い、解説本を開いてみると(早速役に立った!!)

「文覚上人はもともとは遠藤武者盛遠という武士であったが、
 渡部亘の妻、袈裟御前に横恋慕し、誤って袈裟御前を殺してしまい出家することとなる。
 厳しい冬のさなか、熊野の那智の滝で荒行を・・・略」

ちょっと待て待て。
「袈裟御前に横恋慕し」まではいいとして、なぜに恋した相手を誤って殺しちゃうわけ??
極度のおっちょこちょいか!!

と思って、wikiで調べるも

「出家の原因は、従兄弟で同僚の渡辺渡(わたなべわたる)の妻、袈裟御前に横恋慕し、
 誤って殺してしまったことにあるとする。」

やはり同じく「誤って殺してしまった」のみ。
だ~か~ら!そこが知りたいんだってば!!
と思って、さらに調べてみますれば・・・

「真言宗 文盛山 佐渡 真禅寺」のHPに詳細が書いてありました。 
 →『真禅寺と文覚上人

「文覚上人は俗名を遠藤盛遠(えんどうもりとお)と言い、佐藤義清(後の西行)とともに、鳥羽天皇の皇女上西門院に仕える北面の武士でした。若かりし頃、架裟御前(けさのごぜん)と恋に落ちますが、彼女は同僚の源渡(みなもとのわたる)のもとへ嫁いでしまいます。架裟と添い遂げようと思った盛遠は源渡を亡き者にするため、架裟に手引をさせようとします。ある夜、手引された盛遠が家に忍び込み、夜具の中に横たわる渡をめがけ、刀で突き刺します。ところが夜具をはいで見ると、そこには血まみれの架裟が横たわっていました。夫を死なせるに忍びないと、架裟が身代わりになったのです。愛する人を失い、また罪の深さを懺悔した盛遠は、発心し出家しました。」

袈裟御前、なにゆえ手引きしちゃった!?
文覚上人があまりにしつこいから、仕方なく家の中に入れちゃったのか。
それとももう逃げ切れないと思って、家の中に入れて自分を殺させようとしたのか。
袈裟御前の行為はとりあえず横に置いといて、文覚上人をストーカー認定いたします。

相手はストーカーのくせに、
ちょっと滝行したくらいで不動明王の使いが助けてくれるとはなんと仏様は生ぬるいことか。
私が不動明王だったら、滝の水をつららにして、文覚上人の体を貫いてやったであろう。
ストーカー死すべし。

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この映画、いろんな意味でこわかったす。


ほかにはー



「忠臣蔵十一段目両国橋勢揃図」

「モブシーン ざわめきの群像表現」
と題されたコーナーを彩る作品の一つであったのだが、
この作品以外も、人間がごちゃごちゃいる様子や、妖怪がごちゃごちゃいる作品やら、
とにかくごちゃごちゃごちゃごちゃ。
浮世絵版ウォーリーを探せ。が多数飾られていたのであった。



「道外天中行事 五日めの風」

歌川国芳の才知と洒落を紹介する企画の一つであったが、
私、これが好きでした~。

心地よい春風も、荒れる冬の嵐も、雲上の鬼たちがうちわで仰いでいると思ったら
笑えるではないか。
鬼が浴衣を着ているのも笑った。裸ではないらしい。

ちなみに解説によると

「大変珍しい作品で、現時点で展覧会でも図録版画集等でも見たことがない。
 なお、風神があるところをみると、雷神もあるものと思われる。
 遠景に富士山があり、雲がわき上がって雷雲に合流しており、
 雲の上では風神が「風」と書いた団扇で風をおこしている。」

悳俊彦氏のコレクションがいかに貴重で珍しいものかがわかる解説でもあった。
それを今回、無料で見せてもらえたこの幸せといったら・・。

国芳は無類の猫好きだったようで、猫の作品が多く残されている。
絵を描きながらしばしば懐の猫に話しかけていた、というエピソードが残されているほど。

猫かあ。
犬を描いてくれるとなおいいのにな~。



「流行 猫の狂言づくし」

あはは。かわいい。



「鼠よけの猫」

解説を読む前にこの絵に不思議な何かを感じて、ずーっと見ていた私。

解説によると

「これを家の中に貼っておくと、鼠はこれを見て恐れをなしていなくなり、
 たとえ出たとしても決していたずらをしなくなる、誠に不思議な図である、
 と上部にかいてある。
 この図は現在2点しか発見されておらず、また、いずれも状態は良くない。
 おそらく本当に貼っていたのであろう。つまり消耗品のため現存が極めて少なく、
 遣ったこれらも使用感があるというわけだ。」

とあった。

ねずみが恐れをなしていなくなる、と書かれたのもわかる気がした。
私はねずみではないので怖れはなさなかったが、なんだか撫でてやりたくなったもの。

そして国芳コーナーは終わり、国芳の門人の作品コーナーへ。



月岡芳年「義経記五條橋の図」

時代が近代に近づいてきて、色鮮やかになってまいりました。
構図がマンガっぽい。



河鍋暁斎「元禄日本錦 岡嶋八十右衛門常樹 倉橋伝助武幸」

格好でわかると思うが、赤穂四十七士の一人である。
他にも堀部安兵衛などがあった。

河鍋暁斎の紹介文には

「梅雨の長雨による出水時に神田川で拾った生首を写生し、
 周囲を吃驚させたという「生首の写生」の伝説を残す。」

というおっとろしいエピソードが書いてあった。

私&汗「ひょえーーーー!レオナルド・ダ・ヴィンチもビックリ。」



小林永灌「猫図」

目がこわいよ~。



小林栄灌「鍾馗図」

汗「関羽?」
私「あはは」

しかし今回、一番私を幸せにしてくれたのは・・・



小林栄灌「食いしん坊の図」



私「かわえええ~。ダッコマンと同じくらいかわえええ~。」
汗「ダッコマンも負けず劣らず食いしん坊だぞ~。」



現代版「食いしん坊の図」

「僕ダッコマン、趣味は食べることです!好きな食べ物はマンゴームースです!!」

◇◆

いやー、堪能した堪能した。

さ!中野へ移動だ、れっつらごー!!!

というわけで、中野交響楽団の演奏会の様子は後日アップ予定。


ヨイ豊/講談社

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第154回直木賞候補作である『ヨイ豊』には、歌川国芳も登場する。
主役は四代歌川豊国であり国芳ではないのだが、
師匠である三代豊国と同世代に生きた歌川国芳、歌川の三羽烏の一人として描かれている。
(歌川の三羽烏=広重、国芳、三代豊国)

この作品を読んでいたので(フィクションとはいえ)、
違った角度からも見ることができて、大変楽しめた。

ちなみに河鍋暁斎の生首エピソードもさらっと出てくる・・ひぇー。


ところで・・この日は桜花賞だった。
本当に年に3~4回くらいしか(しかも100円とか)かけない私であるが、
なぜかこの日は競馬予想をしている汗かき夫に自ら近づき

「桜花賞、私も賭けようかな。
 うんとね~、シンハライトの複勝の倍率はいくらかな?今んとこ一番高くて2.6倍?
 じゃあ、シンハライト複勝で5000円賭けるよ!!」
「え!?マジでそんなに賭けるの?そんなに賭けるなら最初に金出せ。」

と言われ、ブーブーいいながらも(コッソリ)生活費から5000円を渡した。

三択の女王が竹下景子ならば、複勝の女王はあもちゃんである。
レースは3時半。演奏会終了時には結果が判明しているであろう。

という出来事が家を出る際にあったのだが、この歌川国芳展をみていると・・・



歌川国芳「しんは連 魚かし連 市川三升へ送之」

私(しんは・・・これはきっとシンハライトが来るお告げだね!)

脳内で雑念と欲望渦巻く中、ニヤニヤしていたのでありました。