あもる一人直木賞(第151回)選考会ー結果発表・統括ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

山椒は小粒でもぴりりと辛い。ってか。

直木賞候補作品発表から受賞作品発表まで1か月という長い時間は、
神経細やかで行き届いた100%の心配り、故に小心者の気にしぃあもちゃんにとって、
時間を気にせず、作品に没頭できる満足した時間であった。
候補作品発表直後は
なんだか心躍らない地味な顔ぶれー
とかとか、ぶひぶひ文句たれ子だった私であったが、
終わってみれば、大変満足した読書期間であった。

ま、だからって直木賞をあてられるわけでもないんですがね。

読了後すでに1週間が経っているにも関わらず、まだ決めてない。
というか、決まらない。
小さくまとまった作品がそろったが、それぞれキラリと個性の光る作品が多くてさー。

はー。
私の好きな作品が直木賞っぽくなーい。
でも他の作品はイマイチ、押しがたりなーい。
私の好きな作品って、たいてい直木賞を外すしー。いじいじ。

しかーし!!
私と意見の合わないエロ淳も選考委員からいなくなったことですし(先日ご逝去されました)、
これを機に、そろそろ当てたいんや。by 仙一 ←最近こればっか。
はー。
仙一ネタも使い過ぎて、骨董品的価値が出てきた・・・

と、悩むだけなら好きなだけ悩めるが、私には時間がないのだ。
発表まであと1日半。
よーし、もう決めちゃうぞ!!!

それではあもる一人直木賞選考会(第151回)の受賞作品の発表です!!!!!


はいっっ!ドラムロール、スタ~ト!!!!


ドロドロドロドロドロ~~~~~~


ドロドロドロドロドロ~~~~~~


ジャン!!!


黒川博行「破門」(KADOKAWA)


で~す!!!

くろちゃん、おめでとうございま~す!!!!

あれあれー。
あんなに悩んでたのに、意外とすんなり決められた。
女が腹をくくると(←大げさ)、1作品に絞るのもそんなに難しいことじゃないのかも。

しかし今回は(も)悩んだ。
6作品中、以下4作品で悩んでいた。

▽伊吹有喜『ミッドナイト・バス』(文藝春秋)
▽黒川博行『破門』(KADOKAWA)
▽千早茜『男ともだち』(文藝春秋)
▽米澤穂信『満願』(新潮社)

4作品も受賞候補を挙げたら、そりゃどれかは来るでしょ、くらいの多さ。
しかしそれでも外す、それがあもちゃん!!キリッ!

でも!絶対残りの2作品の受賞はない!!
このカシオミニを賭けてもいい。

それにしても読む順番によって大きく結果が左右されたかもしれない、今回の4作品。
フィギュアスケートで滑走順は結構大きい、というのがよくわかる。
そら絶対評価にしたいのはやまやまだが、どうしても相対評価になってしまうのよー。

そんな相対評価地獄から抜け出したのが、
くろちゃんこと黒川博行さんの『破門』であった。
えー、黒川氏は御年65歳のベテラン作家でありまして、
さらにマスコミからグリコ森永事件の犯人視され、裁判にまで発展した、という
大変な方らしいのでもあります。(←詳細は各自調べてくださいまし。)
そんなベテラン作家を、くろちゃん呼ばわり。
あもちゃん、向かうところ敵なし!

ハードボイルド作品って直木賞っぽくないじゃないですかあ。
お堅い文学賞って感じでもないじゃないですかあ。

などと、うだうだ思って過去20年の受賞作品をざっくり調べてみると、
思ってたよりハードボイルド系作品が受賞していることに驚き。←今更。
なんだ、ヤーさんがウロウロしてる作品が受賞しても別におかしくないのか。
それならば、と、あっさり栄冠はくろちゃんに輝いたのであった。

まず最初に、伊吹氏『ミッドナイト・バス』を読んだことが、
今回の迷った原因だと思われる。
いきなり水準が高かったのだ、これが。
それからくろちゃん、米澤氏の短編、そしてあもちゃん期待の作家、千早さんと続いた。
伊吹さんを基準にしたら、その他3作品との差がわからなくなってきた。
そんな混戦の中から、まずくろちゃんが頭一つ抜け出てたかな、と感じたのである。

ちなみに今回、あもちゃん期待の作家千早さんを推さない理由は、
ズバリ!外すから!!!
です。

道尾くんしかり、伊東潤さんしかり、私が好き、と公言する作家さんは、
たいてい直木賞受賞まで長いんだ、これが。
伊東さんなんて、毎回あと一歩ってとこまで来てるのに、未だ授賞せず。
きー!一体どーなってんだ!!!
桜庭さんは私に推される前に、さっさと授賞しててよかったよ。
ほんと。

そんなわけで、相当縁起が悪い「あもる推し」。
前回の候補作品では、千早さんの美しい日本語に見惚れたものであった。
しかし今回は千早さんを意識しながらも、見ないふりー。見ないふりー。

だがそんな千早さん以上に気になる存在があった。
それは、米澤穂信さんである。
今回の候補作品6作品の中で、唯一の短編を引っさげてのご登場である。
お恥ずかしながら、今回米澤さんとは初めての顔合わせであったのだが、
いやー、短編ってやっぱいいよね。と思わせる作品ばかりが並んでいた。
おっ!!と最初の数行を読んだところでいきなり引き込まれた。
彼の紡ぎ出す言葉はとても美しく、特別で、さすが山本周五郎賞受賞作品である。
いわくつきの山本周五郎賞ではあるが、
(山本周五郎賞受賞作品は直木賞が獲れないというジンクスがある)
黒ちゃんを1位にしたものの、正直、彼なら獲ってくれてもいい!!許す!!

そんなわけで、今回の判断基準はいつもと同じく、ずばり!好み!!!!
と言いたいが、ちょっとひねりをくわえてみた。
好きなものは好きだし、確かに好みから選んだが、えこひいきはしないぞ!!
という判断である。
あもちゃん、ちょっと成長した!!!
(それで外したら、一生立ち直れないかもしれん・・・いや、これ、マジで。)

というわけで、
私の順位の発表と各作品の簡単な総評を行いたい。
(各作品については、後日個別に書評をアップしたいなあ。・・・
 すでに150冊以上、手をつけていない書評がある気がするなあ・・。←遠い目
 もうどうしよう・・・)

1位 黒川博行『破門』(KADOKAWA)
作品全体から漂うベテラン臭がはんぱない。
文章の勢いといい、まとまりといい、文句なしの完成度。
疫病神シリーズの第5弾とのことで、過去のシリーズ作でも何度か直木賞候補になっている。
まあ、とにかく面白かった。
描かれる世界もでかいし、リズム感もいいし、登場人物の息づかいがすばらしかった。
ハードボイルドが好きな人はもちろんんこと、
私のような花も恥じらうお年頃の婦女子までをも魅了するおもしろさ。
私たちカタギの人間とは全く違う世界のことを描いているのに、
実はヤクザものが身近に潜んでいる、という現実とのバランス感覚もよかったなー。
しかも、切った張ったの黒い世界を描いておきながら、誰も死なないという小粋な計らい。
これ、大きい気がする。

今更直木賞なんて意識してないと思うが、あげちゃうよ、クロちゃん!
どぞどぞー。
どもどもー。
みたいな感じの会見が目に浮かびます!!!妄想中です。お静かに。
くろちゃんのお姿を拝見したことはないのだが、スーツで来てほしいなあ。


2位 米澤穂信『満願』(新潮社)
6編からなる短編集である。
最初の『夜警』で、あもちゃん、度肝を抜かれた。
平織りのような日本語から紡がれる、この闇のような深さはなんだ、
平易な単語からひたすら率直に紡がれていく美しさと怖さはどうしたものか。
とおそれおののいたのである。
またそんな言葉から繰り出されるストーリーそのものも恐怖。
幽霊とかそんなんじゃないのだ。
淡々と語られる普通の人の話。
こういう人、いるよねー。という人の死の真相。
こええええええええええ。
6編の中で一番よかったと思う。
こわいの。とにかくすっげーこわい。
最後の『満願』もよかったが、ちょっと狙っちゃったかも。
しかしかなり凝っていて、折り目正しい下宿先の女主人のキッチリ感がよく表現されており、
着物の衣擦れの音までもが聞こえてくるような静けさであった。
6編の水準はいずれも高く、言葉も美しく、大変よかったのだが、
イマイチ・・・と思われる作品がいくつかあったのが2位の原因である。
『夜警』と『満願』だけで勝負したなら、1位の黒川氏といい勝負をしたであろう。
次回はぜひぜひ期待したい。
最高に縁起の悪い「魔のあもる推し」ではありますが・・・。


同率3位 千早茜『男ともだち』(文藝春秋)
前回の直木賞候補作品『あとかた』で、私に強烈な印象を残した千早氏。
日本語が美しく、きりっとひきしまった作品で、好きになってしまった作家さん。
そんな期待を背負っての今作品であった。
うーん。
前回の研ぎ澄まされた、ちょっと狙い過ぎじゃね?くらいの美しい日本語が
普通になっちゃった・・・
その代わり作品自体は、登場人物も展開もよく練られていてよかったと思う。
じゃあなんで3位?
かと申しますれば、魔のあもる推しを避けた、というのも当然あるのだが、
なんといいますが、主人公の女性が魅力的じゃない、ということだろうか。
ゲージュツ家の女性が主人公なのだが、なんか不安定すぎる・・・
依存体質なのに妙に攻撃的。
こわいって!!
統一感がなくて不安にさせるのかもしれない。
とはいえ、そうは言っても全部わかるの。
言いたいこともやりたいことも考えていることも全て。
丁寧に描いているし、そういうこともあるのかも、ととりあえずは納得できる。
男ともだちを頼りながら、
少しずつ成長していくさまも、シンプルになっていくさまも、全て。
けれど最終的には、でもさあ・・・と納得できないまま、
で??と未消化のまま、混沌として終了してしまうのだ。
それがどうも腑に落ちなかった。
世の中には、そんなむちゃな!と思っても妙に引き込まれてしまう作品もある。
それだけの引力がこの作品には足りなかった。
まあ、結局のところ、作家は好きだが作品が好みじゃない、ということかもしれない。


同率3位 伊吹有喜『ミッドナイト・バス』(文藝春秋)
千早氏『男ともだち』と同位である。
両作品、全く毛色が違うのだが、どっちが上位かと問われれば、
どちらも全く譲らず、と言ったところ。
無理のない形で、登場人物を自然体で写し取っている、そんな姿勢に好感が持てた。
常に一定の落ち着いたトーンで淡々と描かれており、
ガツンと響いてくるわけではないが、じんわりと響いてくるよさがそこにはあった。
直木賞への意欲が充分に感じられる作品である。
直木賞選考委員、そういうの、好きそうやなー、みたいな、仕掛けがいくつも・・・
ただ、詳細に描き過ぎて雑さが目立つ、という一面もあった。
今後、物語を作る際の、間引き、のテクニックを磨いていくと、
おもしろい作品が作れるのではないか、と思う。


5位 柚木麻子『本屋さんのダイアナ』(新潮社)
選考会前半では4位につけていたが、終わってみれば5位。
しかし前回はダントツのビリッケツだったのだから、大健闘である。
とはいえ、正直まだまだ、全然まだまだなのだが、
いい作品を描きたいと思って力一杯描きました!
と作家さんが楽しんで描いた(であろう)ことを評価したい。
文句をつけようと思えば死ぬほどあるが、それ以上にいいところがあった。
今後も直木賞選考会でお会いして、その成長ぶりを見守りたい。


6位 貫井徳郎『私に似た人』(朝日新聞出版)
ぬっくんワールド炸裂。
そのお仕着せの偽善感はなんだ、と少々げんなり。
最初から最後までずーっとおいてけぼりの私であった。
まあ一言で言うと・・・つまらなかった!!
期待どおりのぬっくんワールド。
終始、イライラするーーーーーーーーぅぅぅぅ。
なのに、語りたいことが何もない。
イライラする偽善感はさておいても、
作品そのものも、これといっていいところもないし、かといってすっげー悪いわけでもない。
可もなく不可もなく、小さくまとめてきたことが残念ではある。
こちらの作品、迷うことなく最初の6位から微動だにせず。


今回は、直木賞候補6作品のうち短編小説は1作品のみであり、
ここ最近続いていた短編の流行が終了したのであろうか。
短編好きのあもちゃんとしては、ちょっと淋しい。

エンターテイントメント色の強い作品が並び、
教科書のような「文学臭」がするのは、
唯一短編の、米澤氏の『満願』だけであったことも、今回の特徴とも言えるであろう。

また、ゲームや映画から書きおこしたかのような作品が多くなりつつあった傾向の中、
エンターテイントメント色が強い作品が多くはあっても、
前回同様、文字から世界を描いた「小説」ばかりで、私を大変満足させてくれた。

これは!!!と思わせる強力な作品がない中、
文字から音がするってこと、あるんだなー、と思わせてくれた黒川氏の作品は、
私を大いに楽しませてくれた。
物語の進むスピード感にワクワクが止まらない時間であった。

いよいよひっさびさに当たっちゃうのか!?
「魔のあもる推し」の呪いにかかった千早氏と米澤氏の受賞はあるのか!?
はたまた、柚木氏と貫井氏の受賞は絶対にない!とか言っちゃって賭けたカシオミニ、
ボッシュートされちゃうのか!?

さあさ、お立ち会い!
結果発表は17日!!
(場合によっては、カシオミニ没収ショーもあるよ!
 草野さん、徹子さん、念のためスケジュール開けといてください。)

17日、乞うご期待!