ニューヨーク・フィルの仲間たち2014 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

平成26年2月14日(金)、
『ニューヨーク・フィルの仲間たち2014 心の癒し~室内楽特別演奏会』
(in 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール)を聴きに行く。

チケットぴあから、
半額にするから買わんかね~
というメールが来たのは2週間ほど前のことであった。

うーん。室内楽かあ。
あまり興味はないんだけど、値段が魅力的すぎる。
もともとお安いのに、そこからさらに半額って!!
ちょっとしたランチを2回我慢しておにぎりにすればいいじゃないか。

おにぎり2個分で(←ちょっと違う)チケット叩き売りかあ・・・
なんでそんなに売れてないの?
世界のニューヨークフィルでしょ?
170年の歴史を誇る名門ニューヨーク・フィルのトップ奏者たちが来るんでしょ?
つーか、さくらホールってどこ?行ったことないんですけど。

・・・うーん。メールを前にしばし悩むあもちゃん。

あ、曲目は何を演奏するんだろ?
それ次第かな~。

「R.シューマン:ピアノ五重奏曲 Op.44」

なぬ!!!
シューマンのピアノ五重奏曲とな!?
行く行くー!
あもちゃん、行く行くー!!
ポチっとな。
購入ボタンを光速で押したのであった。

R.シューマンのピアノ五重奏曲 Op.44といえば、
私がのびのびすくすく育った、岡山県内でも有数のチョー過疎化地域のど田舎村に、
天下のTSUTAYA様がいらっしゃったのは、私が中学生の頃(小学生かも)であった。
初物大好きあもちゃん一家、車かっ飛ばして皆でレンタルしに行ったのであります。
(自販機で缶コーヒー1本買うにも車がないと動けない、それがチョー過疎化地域。)

映画のビデオ(←昭和だ~)を借りていた父と母、そして妹。
そんな中、私が借りたのはCD。
それがこのシューマンのピアノ五重奏曲なのであった。

初めてCDを借りるという行為に興奮したことも重なり、
帰宅後、この曲を聞いて一人興奮したことを三十年近く経った今も、すごくよく覚えている。

それ以降、あらゆるクラシック曲をラジオで聞くことになり ←TSUTAYAに飽きた(笑)
この曲を耳にすることがほとんどなくなっていたのだが、
今、こうして生で、しかもNYフィルの演奏で聞けるなんて・・!
行く行く!あもちゃん行くー!

というわけで、迎えた当日、バレンタインデー。
外を見ればあーた、大雪ですよ。
どないすんの、これ。

夜からさらに降雪量が増えるとか言ってるし。
会場に行くのはともかく、無事帰ってこられるのか??
あ~おにぎり2個分につられた2週間前の私を小一時間ほど問いつめたい。
ランチ2回分のお金を捨てて、家に避難したい。
でもシューマンが待っている。

実は私、岡山のシューマン弾きで有名なんですよ。但し、半径1m以内。
岡山のベートーヴェン弾きとしても有名なんですが。但し、半径5m以内。
最近の流れとして、シューマンの評価が低すぎることを危惧する私。
ここはあもちゃんが率先してシューマンの魅力を世の中の皆さんに伝えなければなるまい!
キリッ。

シューマン応援隊長としての責務を果たすべく、
上半身おされして、深い雪を漕いで会場に向かった。
もちろん足元は長靴である。



はあはあ。
ようやく着いた。

電車が遅れると見込んで早めに行動したのだが、案外早く着いたため、
軽く食事をすることにした。



むっしょーにワインが飲みたくなったので赤ワインを頼む。
チケットが格安だったし、ちょっとくらいいいよね~。
てな具合に、せっかく浮かせたお金を散財するあもちゃんなのであった。
節約、意味なし。



ついでに(なんの?)うにのパスタも食す。さらに散財!!

お腹も満足したところで、会場に入る。
さすがに格安チケット、2階のあまりよくない席。
というか、ほぼ舞台の真上。
音がここまで飛んでくるといいんだけど・・・と不安になりながら、周りを見渡す。

この大雪のせいか、もともとなのかわからないが、
開演時間直前になっても、とにかくあっちこっちがガッラガラ。
1階の空席に座っててもバレないんじゃなかろうか、
と思いながらも小心者あもちゃん、ちんまり2階席に座る。

会場の外も中も寒々しい感じで、開演のお時間です。

◇◆



心にしみる、懐かしいメロディ。

■出演
<ニューヨーク・フィル奏者>
シェリル・ステイプルズ[ヴァイオリン/アソシエイト・コンサートマスター]
ミシェル・M・キム[ヴァイオリン/アシスタント・コンサートマスター]
シンシア・フェルプス[ヴィオラ/首席奏者]
カーター・ブレイ[チェロ/首席奏者]
マーク・ヌーチォ[クラリネット/副首席奏者]

<ゲストアーティスト>
小林有沙[ピアノ]

■曲目
R.シューマン:ピアノ五重奏曲 Op.44
L.バーンスタイン:クラリネット・ソナタ
C.M.v.ウェーバー:クラリネット五重奏曲 変ロ長調 Op.34


ジャン、ジャン、ジャン、ジャン・・・
ピアノと弦楽器4挺が鳴り響く。

最初の和音がぼわーんとこもる感じで届く。
おお・・・さすが2階、音が悪い。

けれども、その音に慣れてくると、
ああこういう曲だった、なんと懐かしい、
と寒々しく感じた会場内が嘘のように、あったかくなってきた。

ぽわん。
NYというと、私の中では大都会というイメージで、
そんな大都会の楽団だから、都会的で洗練された音を出すものだと勝手に思っていたが、
そんなきりっとしたイメージとは全く違う、やわらかいやっさしい音に驚いた。

シューマンらしい湿り気を少し残しながらも、明るく闊達な1楽章。
上へ、上へ。
ご機嫌なシューマン像が見えてくる。

少しメランコリックに、そしてちょっぴり大胆にさまよう2楽章。

3楽章は上へ行ったり、下へ降りたり、くるくる回ったり。
ひたすら階段をのぼっては降りてはくるくる回る。
無駄な動きが多すぎ、とも言える楽章ではあるのだが、
それも含めてなんだかシューマンらしくて愛おしい。
完全には突き放せない、そんな愛おしさ。
んもー、私がいないとダメなんだから~みたいな。
ま、言うなれば、ダメ男ならぬダメ楽章。
そしてそんなダメ楽章を愛する私はダメンズ。

その勢いのまま、ドラマティックな4楽章が始まる。
第1楽章の明るさを取り戻し、元気にシンプルに進んで行く。
淋しいシューマンも好きだけど、ちょっと元気を装うシューマンも好き。
そういうときのシューマンのメロディは、だいたいシンプルなことが多い。
技術よりも自分の感情に素直に書き付けている感じ。
メソメソと病的なところが嫌いなときもあったけど、なんだかんだでダメンズあもちゃん、
そんなシューマンが見捨てられないのよね~。

NYフィルの面々はそれぞれ優れておりましたが、
ひときわ目立っていい音を出していたのは、チェロのカーターさんでした~。
人の心を落ち着かせる、静かな微笑みのような音を出していた。

また、ゲストとして呼ばれたピアニストの小林さんの奏法が、
なんとなく私と似ていたので調べてみますれば、特に共通点はなかった。
奏法が似ているのではなく、手首の形が似ているからそう思えたのかもしれない。

休憩後、
バーンスタインのクラリネットとピアノのためのソナタ、
ウェーバーのクラリネット五重奏曲
が続く。

前半のシューマンのインパクトには少々劣ってはいたが、
クラリネットがとてもいい音を出していた。

とはいっても、アンコールの
F・ジェミニアーニ「ソナタ」より第1楽章
が一番よかったのだが。

クラリネットってあまり好きじゃない楽器だったのだが、
ちょっと見方が変わったかも。
バロックにも合うんだな~。

席がもう少しよければ言うことなしだったが、
ランチ2回分のお値段で大変いい演奏を聞かせてもらった。

帰りも大満足で、大雪漕ぎ漕ぎ、帰宅したのであった。

そんな懐かしいシューマンのピアノ五重奏曲はこちら・・・



偶然、ピアニストがバーンスタインのものを発見。
こちらは私が初めて聴いたCDではないが、スタンダードないい演奏であります。