さくらんぼとふたりんぼ 13~あもん史 妄想編~ | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1995年から1996年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします




『カサカサカサ!』
あもんは今朝、この音で目が覚めた
テントの前室から何やらビニール袋が動く音がした
『何?』とテントから顔をだすと一匹のキツネと目があった
キツネはあもんと目が合うと一目散に逃げたが
そこに残ったのは散乱したあもんのゴミであった
『パンパンパン』とテントの外で音がした
外を覗いているとハカセと福さんがエアーガンを発砲している
『こら~~』と叫んでいたハカセがあもんに気付いた
『おっ、あもん大丈夫か!ここのキツネは変に人間なれしているからな』
北海道のキャンプ場ではこのような光景が良く見られた
ノラ猫が食料をあさるのではなくキツネが食料をあさるのである
キャンプ場であるため餌は豊富にある
その事を動物たちはよく知っており、この羅臼国設キャンプ場ではクマまで降りてくるという噂も聞いた
『あもん、エキノコックスって怖いんだぜ!だからキツネには近づかない方がいいぜ』
『もし、心配だったらそこのビジターセンターで調べてくれっから』

エキノコックスとはキタキツネなどに寄生する寄生虫であり
人間の口の中から入ったら体内で寄生もする
潜伏期間が10年というから恐ろしい寄生虫なのである
キタキツネの糞などに幼虫が寄生しており
キタキツネを触ったり山水を飲んだ時に寄生する可能性が高いみたいだ
“可愛い”と言ってキタキツネに餌をあげてヨシヨシとするのは大変危険な行為なのだ!
とハカセは力説をした
よってハカセと福さんは食糧泥棒をするキタキツネをエアーガンで駆除をしていたのである


今日は“カムイワッカの湯”に行くことにした
カムイワッカは知床秘湯のひとつであり単なる温泉では無い
温泉が大量に河口に流れ込み川となっているのである
その川には滝が幾つかありその滝壺が露天風呂になっている
上流の滝壺に行くには幾つもの滝を超えなければいけないので沢登りとなる
『かなり滑るから裸足じゃないほうがいいよ』
『わらじも売ってるけど、靴下履いて昇れば大丈夫さ』

とハカセは助言をしてくれた
ここにいるみんなはもうカムイワッカには行っているみたいで
あもんはひとりでカムイワッカの湯の滝へ行くことにした
知床峠を斜里側に抜け知床半島を北上していると途中から未舗装道となった
北海道は未舗装道が多いが、もうだいぶ慣れたあもんは快調に走らせる
ふと道路わきを見るとエゾシカの親子がいた
思わずバイクを止めてみるとエゾシカもあもんの方を見つめている
もう少し近くに行こうと歩き始めるとエゾシカの親子は逃げて行った
カムイワッカの入口は単なる川であった
川沿いに道はなく上に行くには川の中を歩いていくしかない
わらじ売りを横目にあもんは靴を脱いで川を上り始めた
水が流れていない所はエメラルドグリーンのコケが生えていてそこを歩くと物凄く滑る
思ったより沢登りはきつかった
滑らないようにコケないように慎重に沢を登っていった
暫く昇ると湯気が見えてきた
その湯気の下には滝があり滝壺温泉があった
秘湯とは言えかなり有名な温泉なので人は多く
混浴ではあるが水着で入っている人もいた
なんとなく“秘湯”という感じはしなかったのであもんは残念に思った




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しかしよく見るとこの滝を登っている人がいる
『なんだ、まだ上にもあるんじゃん』とあもんは登っている人についていった
またしばらく歩くと湯の滝があった
下の滝壺に比べると滝壺は小さくなっていた
この滝壺の横にはロープが垂れており更に奥まで行けるみたいだった
もちろん、あもんは更に奥へ行く


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3つ目の滝はかなり大きく迫力があった
ここまで来きた人はあもんを入れて4人だった
この滝で出逢った4人ではあるが自然と話をするようになった
するとその中の一人が大きな滝を登り始めた
ロープなど無い 辺りは熊が出そうな雰囲気である
まさにロッククライミングのように登っていった
それを見た3人は『大丈夫か…』と思いつつも滝を登った
みるとそこは大きな岩だらけであった
しかしお湯の川は小さく続いている
あもんたち4人は沢登りから岩登りに変えお湯の先を目指した
もうここまで来ると我等は同志である
“本当の秘湯”を目指して進む探検隊のようでもある
あもん達はさっき出会ったばかりの同志で名前も知らない
だが、このカムイワッカを旅する同志である



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そんなことを考えながら歩いているとようやく滝壺があった
この滝は急でありもう登ることは無理である
あもん達4人はこの滝壺を見て“ニコッ”と笑い合った
そしてあもんは言った
『ここって、水着禁止令ですよね!』
みんなはあもんに賛同し服を脱いだ
浅く小さな湯壺のような温泉ではあるが
達成感と爽快感が最高である
名前も知らない同志はしばし素っ裸で愉悦感に浸かった



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しかし、この温泉にはゆっくりと浸かってはいけない
その理由として、このカムイワッカの湯は強酸性であり
浸かり過ぎると肌を傷める危険があるのだ
実際、浸かっていると身体が少しピリピリする
ここに着くまでに所々に湯気が立ち源泉が湧きでている穴がある
その穴はとても高熱で酸がきつい
その穴にあもんは10円玉を入れてみた
すると汚れた銅の硬貨は見る見るうちに汚れが取れ
瞬く間にピカピカの銅貨になっていったのである
それを見た同志は『サンポールやん!』と言って笑った
あもん達はこのカムイワッカの湯を“サンポールの湯”と俗名をつけたのであった



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羅臼国設キャンプ場に夕方に帰ってくると旅人はソワソワし始めていた
午前中は静寂を保っているこのキャンプ場では夕方ぐらいから活気づき始める
どのサイトでも今宵の肴を料理し始めるからである
多くの旅人は昼間に食材の調達に出かける
その主なものは釣りなのであるが地元民と仲良くなって食材を頂く者も多かった
又、隣のサイトと食料を物々交換する機会も多くあらゆる食材が集まるのである
このキャンプ場はあるひとつの村のような雰囲気を出していた
あもん達の今晩のおかずはイカ、ホタテ、ホッケ、オショロコマにジンギスカン
それぞれが少しずつお金を出してみんなで飲んで食べた
少し酔ったのであもんはハカセと目の前にある熊の湯に入った
今日は星が空一面に輝いている
あもんとハカセは湯船の横に寝転び星を見ていた
今日のハカセは珍しく無口である
あもんはハカセに聞いた
『なぁ、チェリーって今頃、何してるんだろう?』
ん!という顔をしたハカセは
『さあな~今頃どっかで笑ってればいいけどな~』
と言ったきり何も言わなかった
チェリーを思いだしたあもんはさらに想い出をさかのぼり
スミ子やアミまで辿り着いた
遠いこの北海度の地であもんはこうして星を見つめている
みんなもこの星を見つめているのだろうか?
また一緒にこんな星を見れたら幸せだろうなと思った





あもんはこの夜、3つの流れ星を見つけた







続く