セブンの女 12 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1994年から1995年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします


あもんはR2のツーリングの他にバイクを買った店であるモトボックスにもよく出入りしていた
ここにはあらゆる世代のライダーが集い何度か顔を合わせる度にバイク談義を交わす仲にもなっていった
モトボックスはショップツーリングを毎月開催しており
自然とあもんも参加をするようになった
多い時には50台ものライダーが集まりツーリングをした
初対面のライダーでも同じ目的地へ向かって走ると仲間である
いや、ライダーは違う目的地に向かうライダー同士でも仲間である
その証拠にすれ違うライダー同士はピースサインを交わすことが多い
休憩地で見知らぬライダーとバイク談義をするというのは珍しいことではなかったのだ
ライダーは仲間意識が強い
この頃からあもんの元に同学科同級生でバイク好きな仲間が集うようになった
一人、又一人とバイクを買いあもんとツーリングに行った
R2に入った同級生もいれば入らず面白そうなツーリングだけ参加する仲間もいた



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ある晩、あもんの宿にお客がやってきた
『おっす!あもん!元気にしとるか?ひさしぶりじゃの~』
『うぉぉぉお!ジョージじゃないか!!』

ジョージとは海田高校で2年生の時によくつるんでいた仲間であり
人懐っこいジョージの性格からあもんとはホモ疑惑まで生まれてしまった仲間である
ジョージは勉強するのが好きなようで
大学には受からず浪人生活を送っていた

『どしたんや~えっ、車買うたんか!』
『おお、ええじゃろ~中古じゃけど、マークⅡじゃ』
『じゃけど、いきなりどうしたんや?ほんで、なんでワシの宿知っとるん?』
『ワシ、教えたかいの~で、どっかに行っとったんか?』


『おう、アミのところへ行っとった。ここもアミから聞いたんじゃ』
『えっ…』


アミとはあもんが高校時代に付き合っていた彼女で同大学に入学しつつも数カ月であもんはフラレた
ジョージとあもんは仲が良かったため、アミとジョージも仲良くなるのは自然であった
3年の時はアミとジョージは同じクラスでよく3人で話をしていた
連絡を取り合うのも不自然ではないが
なぜわざわざ遠い福山までジョージがアミに会いに行ったのかが不思議だった


『実はの~あもん、最近よくアミの家に行くんじゃ~』
『えっ、お前ら、付き合いよるんか?』
『いや、そうじゃないけど…アミからいきなり電話があって…』
『話があるいうけん、アミの家に行ったら…そういうことになって…』
『なんか、寂しそうにしとるで…アミは…』














『あもん!ごめん!』
ジョージはいきなりあもんに頭を下げてきた
『別に…あやまることないけど…なんでわざわざワシに言いにくるんじゃ!』
驚いたあもんはなぜかジョージに苛立ちを感じた
『じゃけど、アミのやつ、よう男をつれ込んどるらしいで…』
ジョージが申し訳なさそうに言った
『知っとるわい!どいつもこいつもワシに報告せんでもええんじゃ!!』
あもんの声は次第に大きくなっていった

アミの噂はよく耳にしていた
高校時代あもんとアミはみんなの公認の仲であったし
大学入学当初もあもんとアミは常に二人でいた
入学早々カップルでいるのは大学内でも珍しく
あもんとアミは大学内でも有名であったらしい
おとなしく人懐っこい性格であるアミは多くのコンパやサークルに顔を出すようになった
あもんと付き合っていた時もそんなことがあったが
あもんはそれでいいと思っていた
だけど今考えるとアミは束縛して欲しかったのではないのだろうか?


アミは田舎で生まれ育ち、一人っ子であり、祖父や両親に可愛がられていた
その結果、アミはさびしがり屋になり甘え上手になった
そこがアミの可愛い所であったのだが
あもんは何処かよそよそしかったのであろう
あもん的には節度はある程度あったほうが長続きするだろうと思ったため
“半同居生活”的な付き合いはしたくはなかった
だが、それはアミにとっては寂しいことだったのであろう…
アミはコンパやサークルで出会った男で寂しさを紛わせていったのだ


『あもん、ごめん、ワシにはどうしようもできんくて、
あもんならどうにかしてくれると思うての~』


ジョージにはきっと悪気は無かったのであろう
かつては恋心があったのかもしれない
しかし親友の彼女であるという存在がジョージの気持ちにストップをかけていた
ならば今度は自分がアミを助けるんだと思ったが自分ではどうしようもない事に気付いた
だからあもんにアミを助けてやってくれと頼みに来たのが本心のようであった
それに気付いたあもんは落ち着いて言った


『でも、ワシももうアミの彼氏じゃないんじゃけん、どうすることもできんよ』
『ワシはあの頃のアミが大好きじゃった。今のアミじゃぁない。あの頃の感情は一生忘れんつもりじゃ』
『じゃけん、あの頃はあの頃のままでええと思うとる』
『結局、ジョージもワシもどうすることもできんのんじゃ』

それから無口になったジョージはしばらくして帰っていった






ジョージが帰った後、あもんは部屋で叫んだ
『あぁ~ぶち、たいぎいの~』
面倒くさくなったのはアミのことでもジョージのことでもない
“恋”という感情に対してである


恋をすれば悩み苦しむ
恋が実れば一時の愉悦がある
しかしそれから待っているのは“別れ”
別れはさらなる悩みや苦しみを生み
さらにそれは妬み嫉み恨みなど負のサイクルがグルグル回る
何故、人は人を好きになるのであろう
何故、人は人を独占したくなるのであろう
何故、人はそこに愛を求めるのであろ
考えれば考えるほど分からないこの方程式にあもんは嫌気がさした





『もう、ひとりになりたい…』
『誰にも会いたくない…』
これがこの時、あもんが出した答えだった
この負のサイクルから逃れられるのは一人旅に出ることだと思った



その日の夜、あもんはスミ子を宿に呼んだ
『ワシ、九州に行こうと思うとる』
『えっ、九州!ウチ、行った事無い!で、いつ?』

スミ子は喜んで答えた
『いや、ひとりで行こうと思っとる』
『ええか?』
『そうね~ひとりで行くんね~』
『うん、ええよ、行って来んちゃい!』
『えっ、スミ子って寂しくないんか?』
『うん、寂しいよ、でももうあっくんがウチのこと好きじゃって確かめとるけん、ウチは心配しとらん』
『それより、あっくんがこの一人旅でたくましくなって帰ってくることが楽しみじゃけん』
『男はやっぱ、何かこだわりを持って欲しいんよ』
『奥さんや彼女のためだけではなく、自分の為にも生きて欲しいんよ』
『あっくんはそれがはっきりしとるけん、かっこいいと思うとるんよ』


スミ子はあもんと同じ年だが、仕事柄か大人の意見を持っている気がした
あもんは明日のことを考えている
しかしスミ子は、明後日のことを考えている
これまで考えたことも無かった“生きるということ”
毎日が新鮮な大学生活では見るモノ全てに興味がありそれに没頭できる
単調な社会人生活では社会に流され自分を失うことがある
スミ子はその中で男なら何かひとつでもこだわりを持ちなさいという主張であった
“好きなことに没頭する”それが男のかっこよさだとう主張だ


『ありがとう、ワシ、九州に行くけん!』
『うん、行ってき、でもひとつだけお願いがあるの』
『何?』
『絶対に事故せんといて!』
『そして、絶対にウチの所に帰ってきて!!』
『あっ、お願いが二つになった!ええよね!!ウフフ』
『分かった!二つの願い叶えるけん!!』


あもんはスミ子にやさしくキスをした
そして激しくスミ子を抱いた
スミ子はベットの中で踊りあもんを求めた
窓から差し込む月明かりの中
あもんとスミ子は本能を最大限に活性化させ
お互いの肌の温もりを感じ合った







続く