セブンの女 9 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1994年から1995年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします


男の人生には幾つかのリセットが必要である
築きあげた絆に十分に甘えた後
新たなる自分を見つけるためにリセットを行う癖がある
あもんも応援団でひとつの大きな絆を創った
それはあもんの人生に於いて確実な根と成りえたが
いつまでも根を伸ばすだけではいけない
大きな根を頼りに雨風に打たれながら枝を大空へ向かって伸ばし
葉を広げ太陽を吸収しやがて大きな花を咲かせるのが男のロマンである
あもんは海田高校を卒業してひとつのリセットを試みた
まずはじめに襲ってきたのは孤独だった
次に襲ってきたのは悲しみだった
そしてそれは寂しさまで誕生をさせた
リセットを試みて1年が過ぎ、あもんは大学2年生となった
この頃からあもんはようやく枝を伸ばし始めていたと今では思うのだ


あもんは相変わらず京ちゃんとつるんでいた
たまにコージとカズがバイト先に遊びに来て4人でよく話した

『あもんは相変わらずツーリングしよるんか?』
『おうR2っていうチームに入ってよく行きよるで』
『バイク屋のツーリングも意外と面白くておじさんや看護婦さんとかとツーリングしよる』
『最近は一人旅も少しずつ始めての~一人旅は自由でええで』
『一人旅って寂しいんちゃうん?』
『いや、意外と出逢いがあったりするらしい。まだ出逢った事無いけど』
『そういや~カズって彼女ができたらしいじゃん』
『いやいや彼女とわ言えんわ。ただのアッシー君化しとる。元々ナンパじゃし』
『違うわい!彼女はいつも喜んでくれとる。ワシのSiRも綺麗じゃと言うんじゃ』
『そりゃ~まだ新しいけ~じゃろ』
『あはははは』


『みんなに相談があるんじゃが…』
京ちゃんが少し悩ましげに言った
『どうしたんじゃ?何かあったんか?』
『うん、この前福山の中小企業で合同の新入社員研修があったんじゃが』
『おう2泊3日ぐらい行っとったやつじゃろ』
『そうそう、そこであるベッピンさんにおうてのう~』
『その娘、ルミ子っていうんじゃけど、ルミ子が今度デートしようって言うんじゃ』
『おおお!京ちゃんやるじゃん!で、何が問題なんや』
『いや、その娘ってぶち、ベッピンじゃし、聞いたら親父が尾道で事業しよって金持ちらしいんよ』
『おうおう!ええことじゃん!でも何で京ちゃんなんかを誘ったんじゃろ?』
『そうなんよ!そこなんよ!ワシでも自分で不釣り合いちゅうのは分かっとる』
『じゃけん、騙されとる気がするんよ。二人きりになったら怖い兄さんとか出てきてボコられるとか…』
『どうしようかの~誘われて嬉しいけど怖いんよ』

京ちゃんは時折、ネガティブになる癖があったのだ
『そうじゃ!誰かデートについてきてくれや!頼むけん!』
『あほ!なんで人のデートについていかんとイケんのんじゃ』
『頼む!怖いけど行きたいんよ!』
『しょうがないの~でいつなん?』
『今晩じゃ』
『今晩はダメじゃ、ワシ最近夜も福山でバーテンやっとるんよ。ハチロクをインチアップしよう思うて』
『ワシも今晩も彼女を迎えに行かんといけんけ~の』
『じゃぁ、あっくんは?』
『えっ、別に何もないけんエエよ』

ということであもんは京ちゃんの初デートに同行することとなった

『こんばんは~始めましてルミ子です』
ルミ子は確かにベッピンさんだった
あもん達のひとつ年上であったが20代半ばの色気が漂っている
スレンダーで背が高く上品な毛先ウェーブが色気を彩っている
あもんも確かにおかしいと思った
京ちゃんには不釣り合い過ぎる
そして、何故か人のデート同行なのにドキドキしているあもんがいた
京ちゃんの運転する車でまずはファミレスに行きご飯を食べた
京ちゃんは男らしく全支払いを払ったのだが
その感謝の意を込める行為もルミ子は完璧であった
店から出るとそっと京ちゃんの腕に触れ

『ありがとう、今度はウチが出すけんね』
と微笑みを見せた
その微笑みは美しい容貌から考えられないほどの可愛さが籠っていた
あもんはますますこのルミ子に策略があるのかと考えた
車を走らせドライブをした
流石にグリーンラインは走らず夜のデートスポットにもなっている横島に車が向かった
海岸沿いに座り3人で何気ない話をした
ルミ子はごくごく自然にあもんと京ちゃんの会話に入ってきて
時に感心し時に大爆笑し楽しんでいた
あもんと京ちゃんもルミ子の愛嬌の良さに気を許し
いつしかあの疑いも薄れてき始めた
0時もまわったのであもん達は家に帰ることとした
まず、あもんは京ちゃんに車で送ってもらった

『あっくん、ありがとうね、また遊ぼーね』
ルミ子はわざわざ車から降りあもんに握手を求めた
完璧な女だとあもんは思った


次の日あもんは京ちゃんから後のことを報告を受けた
どうやら疑っていたことは全くなく
しかも京ちゃんはルミ子と付き合うことを決めたのだ

『あんだけビビッとって、なんじゃい!決めるの早過ぎるじゃろ~』
『だって、ワシのことカッコいいって言うんじゃ』

デレデレ顔の京ちゃんの顔はグリーンラインで車を転がしている時の顔とは
比べごとにならないくらいかっこ悪かった




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それから2ヶ月が過ぎた

『あもん!大変じゃ!』
京ちゃんが汗を流しながらあもんに言い寄った
『どしたんじゃ?ルミ子にフラれたんか?』
『いや、違うんじゃ!ルミ子にできたんじゃ!』
『じゃけ~新しい彼氏ができたんじゃろ~しょうがないじゃん、元々不釣り合いだったんじゃし…』
『じゃけん、違うって言っとるじゃろ!できたのは子供じゃ!』
『なにぃぃぃぃ!ルミ子が妊娠しとったんか!昔の男の間に!!』
『いや、ワシの子供じゃ!!妊娠2ヶ月じゃけん!間違い無いんじゃ!』
『なにぃぃぃいいッー!2か月前言うたらあの初デートの日じゃろうが!』
『といったら、ワシを送った後の出来事か!!』
『そうじゃ~だって、ルミ子はワシのことカッコいいって言うんじゃけん』

どうやらルミ子は結婚がしたかったらしい
ルミ子は京ちゃんを彼氏として選んだのではなく旦那として認めたみたいである
その妊娠の時期がイマイチ微妙ではあったが京ちゃんが間違いが無いというから間違いは無いのであろう
あの初デートの時、勢いで誘ったのは京ちゃんであり
急であったためちゃんとした準備をしなかったのも京ちゃんである
これがルミ子の策略であったかどうかは不明であるが京ちゃんの子供ができたのは事実であった
あもんは京ちゃんにもう結婚するしかないじゃろと言った


『問題は親父じゃ!』
と京ちゃんは言った
『ワシの親父マル暴の刑事やっとるけん、頭が固いんよ』
『順番が逆じゃとか言わんじゃろうか?』
『おぅそうじゃの~結婚は親がからむけん、難しいの~でも殴られても正直に言うしかないじゃろ~』

京ちゃんはその日の夜、親父に全てを告白した

次に朝、あもんは京ちゃんにいきさつを聞いた
『親父さん、どうじゃった?殴られたか?』
『あはははは、親父は笑いよったで!』
『いや~ワシって小学2年生の妹がおるじゃろ~年がようけ離れとるの~と思いよったんじゃ』
『ようよう聞いてみたら、ウチの両親もデキちゃった結婚らしい!』
『昔は親父もイケイケどんどんだったらしいわ~』
『親父は昨日オレの話を聞いて笑いよったわ~』
『お前もオレの息子じゃの~ってね、あはははは』

こうして京ちゃんは若干19歳にて夫となりパパとなった
何事も“速い”ことが好きな京ちゃんは
暴走族時代も先頭を走り、バイクレースをこよなく愛し、
自衛隊でのホフク前進もいつもトップであった
そして最近はグリーンラインでもドリフトテクを磨いていた
あもんは次に何の速さに挑戦するのだろうと思った





続く