こんな時に限って、翌日には5人の仕事って、ホントにメンタル鍛えられる。
机に突っ伏したまま、嗤う。
ポケットでスマホが震える。
『月、綺麗だな』
なんなんだよ、もう。
こんな時に月って。
てか、運転中じゃないのかよ。
ふらりと立ち上がって、窓を開けた。
「見えないじゃん、月なんて……」
見上げたらぼんやりと光る雲。
『見えた?』
また届いたメッセージ。
「だから、見えないじゃん」
なんなんだよ、もう。
こんな短いメッセージにも反応しちゃう俺も馬鹿だろ。
『月下美人』
また震えたスマホに吹き出した。
なんなんだよ、ほんとに。
俺の気持ちなんてお構い無しじゃん。
ほんとに反省してんのかよ。
手の中でまた震えるスマホ。
表示された名前をタップした。
「なに?」
『伝え忘れたことがあんだよ。開けてくんねぇ?』
「それが人にものを頼む態度かよ」
『えーと、開けていただけませんでしょうか』
「仕方ねぇな、開けてやるよ」
『ありがたき幸せ』
俺、さっきまで沈んでたのに。
……笑えてる。
エントランスの映像をチェックしてから、ロックを解除した。