「はー、気持ちよかった」
風呂あがり、頭をガシガシ拭きながら冷蔵庫を開ける。
メシ、食ってる間もスマホをずっと気にしてる自分が…なんか、嫌だった。
はーって、ため息をつきながら、お茶のボトルを取り出す。
「うわわ!つめてっ!」
コップに注いだお茶が勢いよくこぼれて、慌てる。
…もう、しっかりしろよ、俺。
こぼれたお茶を拭いて、コップを持ったまま、ソファに沈む。
「あ、オリンピック」
一応、俺もスポーツ番組やってるし、ちゃんと見ておかないとね。
テレビのスイッチを入れた瞬間、テーブルの上でスマホが震えて、慌てて立ち上がる。
画面に表示された名前に、気持ちがぽんって跳ね上がる。
「もしもし?」
『雅紀、おつかれーぃ』
「くふふ、しょーちゃんもお疲れ様」
『なかなか時間取れなくてさー』
「うん。忙しいよね」
『今、何してんの?』
「え、風呂入って、テレビ見てる。オリンピックの…」
『………』
「もしもし?」
急に無音になった電話に焦る。
あ、でも、向こうは電波悪いとこも多いって言ってたっけ?
どうしよう。
「もしもし?…しょーちゃん?」
『………』
「もしも…」
ゴトッ
鈍い音を立てて、スマホが手から床に落ちた。
「ただいま」
…え…
……なに?……
心臓、止まる。
止まっちゃうよ。
「…しょ…ちゃん…」
大好きな匂いの腕をぎゅっと握る。
「ただいま、雅紀」
俺を抱きしめたまま、しょーちゃんが耳元で囁いた。