2016年/日本/120分
監督:赤堀雅秋
出演:三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈、他
おすすめ度(5点中) → 4.2点
――― あらすじ ―――――――
親から引き継いだ金物屋を営む葛城清。美しい妻・伸子と2人の息子に恵まれ、東京の郊外に念願の
マイホームを建てることもでき、思い描いてきた理想の家庭が完成したかに思われた。しかし清の理
想への執着が、いつしか家族を抑圧的に支配してしまっていた。従順に育ってきた自慢の長男・保は
会社からリストラされたことを誰にも言い出せず、デキの悪い次男・稔はバイトも長続きせず、“一
発逆転”を夢みている。そして清に一方的に言われるがままで、耐え忍ぶことしかできなかった伸子
は、ついに不満が爆発、稔を連れて家出してしまうが…。(allcinemaより)
――― 感想 ―――――――
うん、キツイ映画でした(すごく褒めています)。
▲葛城一家。長男は自殺、次男は連続殺人事件を犯し、妻は精神的におかしくなる。
そんな破滅的な道のりを歩むことになる葛城一家の「崩壊後」と、「そこに至るまでの過程」を時系列をいじりながら展開してくれます。時系列は全然複雑じゃないので、観やすいと思います。
▲とにもかくにも、この父親・葛城清がクソすぎて。
家族に自分の理想を押し付けすぎていることに気付いていないのです。といって、それを要求するだけこの父親が高いスペックかというと、全然そんなわけでもなく。それがまた腹立たしいのです。お前にそんなことを要求する権利はない!\(*`∧´)/と怒りながら観ておりました。
▲長男の嫁さんが妊娠したことを祝う会では、清が行きつけの中華料理店でクレーマー化。
常連振って、とにかく酷い暴言をまき散らす。あげく、妊娠中の義理の娘の前でタバコを吸う始末!ちょっとは妊婦さんを気遣いなさい!そして、長男よ!父親が怖くとも、そこは「タバコ吸うなら、外で」ぐらい、やんわり言ったらどうなんだい!
▲自分の言いたいことをちゃんと言えない長男・保。
彼は、父親からは優秀だと信じられ、その期待に“表面上”応え続けていたため、気がついたら誰にも何も相談できない人になっていました。営業成績ゼロ(コミュニケーション能力がないから)で、会社をリストラになっても家族に相談もできない。ずっと我慢に我慢を重ねたこの人はある日自殺しちゃいます。
この保さん、弟が自分の子供を殴って怪我させたのに何も言えず、さらにはその弟が父親に包丁で刺されそうになっているのを止めずにみていました。心が死んでいる。父親が怖いだけなのか、それとも弟が死ねばいいと思っていたのか、その両方か。
コンビニのレシートの裏に書いた遺書の「申し訳ない」という一言がメッチャきつかったです。
▲終盤、連続殺人鬼化してしまう弟・稔。
「一発逆転」を口に出していた彼の大舞台が殺人とはねぇ、すごくねじくれている。この人、基本的にめちゃくちゃムカつくんですよ。学校には不登校でそのまま成長しちゃったもんで、社会と接点がなさ過ぎたのか、どんどん悪い方向へ行ってしまうのです。
中盤、この弟が放火をしたと思しきシーンがあって、父親がそれを発見する瞬間があるんですが、その時に父親が執拗に追及しない姿勢が、本当にダメだなって思った。このシーンは個人的には最高でした。
この人、結局死刑が確定するんですが、死刑執行に反対する田中麗奈演ずる星野という女性にも散々最低なことを言います。ぶん殴りたくなりましたw。
▲妻の伸子。
彼女は夫の言いなりで、自己主張がありません。しかも子供の教育にも無関心。実は夫のことがとても嫌いで家を出ていくも、結局連れ戻されるところを見ると、よっぽど夫が怖いのかなーと思います。でも、注目すべきは彼女が出すご飯。インスタントばっかりなんですよ。食事シーン、何気に怖いですよ。
観終わると、ずっしりと胃に何かが残る感じでして。
ポスターにも印字されている「俺が一体、何をした。」って言葉を考えるに、ほとんど全てあなたがやった、としか言いようのない清の最低っぷりが超印象的でしたよ。全てやったというよりは、「高圧的な態度以外、何もしなかった」と言った方が適切かもしれませんが。
いやー観といて良かったです。