politicsという英単語を、英和辞典で調べれば、たいてい、一番目に、政治という語が出てくる。たしかに、ざっくり言えば、そういうことになるけれど、それぞれの語の語感は、全然違う。
そもそも、日本語単語の政(まつりごと)とは、祭祀を行うことである。祭祀とは、神々や祖先を祭る儀式のことである。なんのために、そういう儀式を行うのか。争いに勝ち手に入れた権力を維持するため、ではない。天下泰平を願い、民が、平穏無事に暮らせるように、儀式を行うのである。
現在、この国に、「国民の生活が第一」みたいなことを言う国会議員がおられるそうだが、この国において、政とは、国民の生活を平穏なものにすることであり、それ以外ではない。もちろん、第二、第三などない。
politicsという語が持つ語感は、とても、きな臭いものである。あくまで、私の言語感覚だけれど、争いの気配を感じる。独り善がりになってはいけないので、ロングマン現代英英辞典第4版で、politicsを調べてみると、一番目に出てくるのは、
『ideas and activities relating to gaining and using power in a country, city etc』である。力のぶつかり合い、駆け引きのようなものを、感じてしまう。
西欧の歴史を学ぶと、横暴な専制君主がいて、人民が革命を起こす。権力が、人民の手に移り、人民の人権が保障されるようになる。
経世済民。世を治め民を救うことである。幕末において、economyという語に、経済という語を、訳語として当てはめたそうだ。この国は、そういう国である。経済とは、ひたすら売上げを増やし、実質GDPを押し上げることではない。
神奈川県にて
佐藤 政則