ざっくり言えば、社会保障とは、現に困窮している人を救う救貧の政策と、早晩、困窮しそうな人がそうならないように防ぐ防貧の政策の、総称である。以前、同様のことを書かせていただいた。
社会保障においては、困っている人などに、必要な物やサービスを提供する。通常は、現物支給をするか、もしくは、困っている人などが一旦、自腹を切って必要な物やサービスを購入し、後で領収書と引き換えに、償還払いをする。それが、大原則である。
健康保険法の傷病手当金と出産手当金、雇用保険法の基本手当、労働者災害補償保険法の休業補償給付と傷病補償年金などは、子ども手当などと同様に、現金が、振り込まれる。一見すると、同じように見えるが、同じではない。
今、列記した健保の傷病手当金等々は、所得補償のための制度である。何らかの事情により、給与所得者が所得を得られなくなっていて、所得を補償(*)している。
「所得を得る能力を失っているので、所得を得ることができない。その、得ることができなかった所得に関し、現物支給をしている」と申し上げれば、違いを、ご理解していただけるだろうか。
だから、子ども手当は、社会保障ではない。子ども手当を社会保障だとするなら、子ども手当は、日本の社会保障の全体像を、著しくいびつにしている。バラマキ4Kのうち、特に子ども手当のみを、重点的に書いてきたのは、子ども手当が、原則から著しく逸脱しているからである。
平成22年度子ども手当法に対するつなぎ法案に賛成した全ての国会議員、特に、みんなの党の寺田典城氏に、「どんな政治信念に基づいて賛成したのか」、改めて問いたい。
神奈川県鎌倉市にて
佐藤 政則
(*)
所得保障という語もあるが、所得補償とは、若干、意味が異なる。保障は、損失や被害が出ないように保護すること。補償は、損失や被害に対して償うこと。