台風15号が通過してから一週間。
千葉県(房総半島)や静岡県(伊豆半島)等では、いまだに大規模な停電被害が継続していると報じられています。
被災地域の皆様のご苦難はさぞや、と思われますが、本当に一日でも早く「日常」に戻ってほしいものです。



地震や台風等の自然災害で避難生活を余儀なくされる場合、
「災害発生後、三日間生活できれば、後はどうにかなる」
というのが「定説」だったと思いますし、
僕自身も
「非常用電源と飲料水を三日分確保できていれば、なんとかなるだろう」
と考えていました。

しかしながら、今回の台風被害が超長期化している現実から、今後はその考えを改めなければならないようです。

いわゆる「ライフライン」は、ざっくりわけると「電気」「ガス」「水道」の3つですが、その中でも「電気の供給障害」=「停電」が、どれほどに深刻なことであるか、まざまざと見せつけられたように思います。
「照明」「冷暖房」「調理」等、家庭における一般生活に必要な電力のみならず、「水道のポンプアップ」「テレビ・ラジオ・電話無線基地局の稼働」等、なにもかもができなくなってしまった。
我々の生活が、いかに「電気」に依存したものであるか。

特に「在宅酸素療法(HOT)」を行っている呼吸器疾患者にとっては「電源の確保(濃縮酸素の確保)」が生命に関わるわけですから、「非常用電源」の確保は「至上命題」といってもよいかもしれません。



そもそも「停電」が発生した場合、どのようにして「復旧」されるのか?

「九州電力」のホームページにわかりやすいイラストがありましたので紹介させていただきます。


①基本事項として、
「発電所」で作られた電気は高圧送電線によって各地の「配電用変電所」まで送電されます。
「配電用変電所」からは「配電線」(街中でよく見かける「電線」です)によって各家庭や施設などに電力供給されるのですが、一般的に「配電線」には「エリア」が設けられていて、各エリアの中には「区間」が設けられています。
上図を例とすると、配電線「Aエリア」の中は「Ⅰ区間」「Ⅱ区間」「Ⅲ区間」に別れてます。
「Aエリア」は「Bエリア」と隣接しているのですが、通常は「連携スイッチを切る」状態にしてあります。


②「停電」の発生です。
「ある区間内」で断線等の事故が生じた場合には、変電所で異常を検知して「該当エリア」全体を停電させます。
仮に「Aエリア・Ⅱ区間」が倒木により断線したとすると、「Aエリア」全体が停電し、隣の「Bエリア」は停電していない状態となります。


③「Aエリア」の停電を復旧するためには、「断線箇所」を特定しなければなりません。
そこで、まず「Aエリア・Ⅰ区間」だけ通電させてみます。
「Ⅰ区間」には問題箇所がないので、正常に通電されます。

④続いて「Aエリア・Ⅱ区間」まで通電させてみます。
「Ⅱ区間」には問題箇所があるので、変電所で異常を検知し、「Aエリア」全体が再び停電します。


⑤「Aエリア・Ⅱ区間」に損傷があることがわかったので、今度は「Bエリア」側から通電させます。
「Aエリア・Bエリア」間の「連携スイッチ」を繋ぐことにより、「Bエリア」側から「Aエリア・Ⅲ区間」に通電が開始されます。
「Ⅲ区間」には問題箇所がないので、正常に通電されます。

⑥「Aエリア」内で問題があるのは「Ⅱ区間」であることがわかりました。
あとは「Ⅱ区間」内の損傷箇所を発見し、修復することで、「Aエリア」全体の通電が再開されます。


以上の説明イラストは、わかりやすくするために「とても簡略化して」描かれていますが、実際の「区間数」はもっと多くありますし、各「エリア」も、もっと複雑に隣接しあって、それこそ「網目状」になっています。

しかも、電力供給施設には、「復旧優先度」というものが設定されていて、「病院」「公共施設(避難先施設)」「官公庁」「交通機関」等が多く集まる人口密集地などは、停電時に優先的に復旧できるように、複数の「エリア」から配電可能な「配線」が形成されています。

万が一の時には、
「Aエリアの替わりにBエリアから」
「BエリアがダメならCエリアから」
「CエリアもダメならDエリアから…」
という風に「複数のルート」を確保することで「長時間の停電が発生しない工夫」をしているのですが、

今回の台風被害では「配電線がそこらじゅうで損傷している」状態になってしまったため、「複数のルート確保」が裏目に出てしまい、どのルートならば通電可能であるか確認し、かつ損傷箇所を特定するまでに、現場ではとても苦労されているようです。

「配電線の損傷箇所の特定」に難儀しているだけではなく、通電を邪魔している「倒木」や「倒壊物」「飛来物」の除去作業にかかる手間や、「損傷箇所までの立ち入りの困難さ」等、他にも様々な要因があって、「台風15号通過」から一週間経過する現在においてもなお「全面復旧までには、まだまだ日数を要する」とアナウンスされているわけです。


「そりゃあ完全復旧まで時間がかかるのはもっともだよな」とも思いますが、現地に住む方々にとって「継続する停電」はとんでもないストレスでしょうし「なに悠長なことやってるんだ!」と言いたくなるのも理解できます。

今回のような広範囲で長期化する「大規模停電」が、今後「自分の住む地域」で発生した場合に、我々呼吸器疾患者は、どう対処するべきか?

この「テーマ」、次回ブログに続きます。