「かかりつけ医(一次医療機関)」の6割以上は「複数主治医体制」を望んでいる。


「こちら地方」の医師会が行ったアンケート結果によると、

『かかりつけ医』が求める「患者の管理」のあり方として、

「複数主治医体制」65%
「どちらでもよい」30%
「かかりつけ医による管理」5%
「専門医による管理」0%

という回答だった。

「複数主治医体制」というのは、
『普段は「かかりつけ医」で患者の様子を診ているけれど、時々は「専門医」(二次医療機関)にも診てもらう』
ということ。

「専門医に任せる」という意見は0%というアンケート結果が示すとおり、
開業医は「自分の患者を手放したくない」
ということがわかる。

重篤な患者以外は「かかりつけ医」が診るべき、という考えなのか、
それとも、
病院を運営し継続させるためには一定の患者数(固定客)が必要、ということか。

いずれの理由にせよ、「患者を手放すつもりはない」ということは間違いないのだろう。

しかしながら一般的に「地域の個人病院」等は、患者の状態に対する処置を「院長ひとりだけ」で判断しなければならない。
その患者の病気が進行・悪化したときに、「どのタイミング」で専門医(二次医療)を紹介したらよいのか?
「いま紹介したら早すぎないか(もしくは遅すぎないか)」をひとりで悩んで判断せねばならない。

複数の専門医やスタッフが集まってカンファレンスを行い、治療方針を決定する二次医療機関や三次医療機関とは違い、良くも悪くもすべてを自分で判断し責任も負わなければならない。

そこで「かかりつけ医」が求めるものが「複数主治医体制」なのだ。

普段の患者の管理は「かかりつけ医」が行うが、時々は「専門医」にも診てもらい、より高度な治療が必要になる「適切なタイミング」を判断してもらう、ということだろうか。




では『専門医』が「患者の管理」についてどう考えているかというと、

「かかりつけ医」からの「紹介」により転院(レベルアップ)してきた患者に対する今後の管理方針として、

(症例数から)
「かかりつけ医が行う」65%
「複数主治医体制で行う」20%
「専門医が行う」15%

だったそうだ。


つまり、
「かかりつけ医」にとって「患者を専門医に紹介するタイミングが遅れる」ことは一番避けたいことだから、結果「早めの紹介」となりがちで、
患者を紹介された「専門医」にしてみたら、「まだ、かかりつけ医で診てもらっていて大丈夫な状態だね」とか、「とりあえず、ウチでやれることはやったから、あとは、かかりつけ医でお願いね」とか、そういうことになりやすいのだろう。

「おいおい、この患者を紹介するのはまだ早いよ~!」という専門医の声は、当然、紹介した「かかりつけ医」にもそれなりに伝わるだろうから、若い「かかりつけ医」のドクターなんかだとベテラン「専門医」に対して、今後の対応は慎重になってしまうかもしれない。


「患者」にしてみたら「大病院に行け、と言われて来たのに、かかりつけ医に戻された」とか「なかなか専門医を紹介してもらえない」なんていうことが「不安」や「不信」に思えてしまうこともあるだろう。

結局は、誰にとってもあまりよいことではなさそうだ。


基本的には「複数主治医体制」で対処したいよ、という「かかりつけ医」と、
今後は「かかりつけ医」だけによる管理で充分だよね、という「専門医」との、
立場の違いから生じているであろう考え方のズレが根本なのではないか?

そもそも、専門医が「かかりつけ医に患者を戻そう」とするのは、
①現在の全国の病院の病床数約135万床から20万床を削減し、2025年には115万床とする。
②比較的軽度な患者30万人は「在宅医療・在宅介護」へシフトさせる。
という政府与党の考えや思惑も背景にあるわけで…


ちなみに、
2025年時点での必要病床数の予測値は「150万床」なので、あれれ?数合わなくなくね?
とか、
病床数の削減は「儲け」にも直結するから私立病院はなかなか受け入れない。仕方がないから「公立病院は率先して削減しなさい」と指示される。
→結果、公立病院のサービスはどんどん低下し、かつ差額ベッド代とか値上がりするんじゃね?
とか、
病院が多い都会と、圧倒的に医師が少ない地方とでの格差が益々拡がるんじゃね?
とか、

詳しく話せば、いろいろと「気になる」ことがあるのだけれど、選挙期間中につき自主規制。



話を戻して、

重い病気やケガの患者の対応をしなければならない専門医(総合病院)と違って、開業医の先生方は「楽な商売」なのかと思いきや、実はそれなりの苦労もあるのですねぇ。
…ってなことを、主治医Dr.と話していたのだけれど、

主治医Dr.曰く、
「だからさ、勤務医時代の同僚だった専門医に、電話とかで相談してくる開業医Dr.って多いんだよね」
「やっぱり横のつながりってのは大事でね」
「若いDr.の中には、勉強はできるんだけど、そういうの苦手な子がいるんだよねぇ…」

なのだそうな。


なんとなく、素人目には、

「おねげぇでございますだぁ」
という「かかりつけ医」と、

「うむうむ、よきにはかろうかのぉ」
という「専門医」の、

なんかそういう構図が垣間見えるような気もするのだけれど、

これがまた「二次医療機関」と「三次医療機関」とか、大病院どうしだったりすると、いろいろと「めんどくさい」こともあるのだろうと想像できる。

とりわけ、我々難病患者はそういう「構図」の中で「取り扱われている」ということを承知しておいたほうがよいのかもしれない。

僕の場合は「二次医療」から「三次医療」へ、さらに「移植機関」へと、スムーズに繋いでもらえたけれど、
なかなかそう上手くは繋いで貰えないケースも多いのではなかろうか?

「難病患者」は「普通の患者」よりは慎重に扱って貰えるし、かかりつけ医もリスクが高い患者を「かこいこもう」とはしないだろう。
けれども「難病」というレアケースだからこそ「高次医療機関」へ「どのタイミングで繋げばよいのか」戸惑っている主治医も多いだろうし、それを不安(不満)に感じる患者だっているだろう。



治療が適切である。
手術が上手である。
人柄がよい。
「よい医者」というイメージはそんなところだろうけれど、

パイプ(人脈)が太い。
情報を多く持っている。
そういったこともまた「よい医者」の要素なのだろう。

「頼れる医者」
「安心できる医者」

そういう「医師」と巡り会えた「難病患者」は、
実はとても幸せなのかもしれない。