「言語にとって愛とは何か」についてその蛙は考えていた。
言語とはもちろん人間のものであり、
蛙は言語を持たない。
故に人と同様の思考を持っているわけではない。
しかしながら、その命題を考えることが、
喫緊の課題であると蛙は肌で感じていた。
両生類の肌は多くの場合、
表面が湿潤な状態に保たれている。
その肌は社会の中に渦巻く、違和感、不条理さ、自己愛の欠如を敏感に感じ取ってしまう。
この蛙はヤマアカガエルである。
山の中で文字通り、人しれず、ひっそりと
人間愛について考えてくれていた。
それは生物の分類群を超えた、愛であった。
充分な愛を持って、社会の未来を具体的に想像しなさい。
ある種の思考によってそういう結論に蛙は至った。
しかし言語を持たない蛙はその結論を伝える術を持たなかった。
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