大人の絵本(P.Dluckerのブログ) -考えるカブトムシ-

カブトムシは本を読み、生態学を勉強し、絵を描き、サラリーマンになることで「考えるカブトムシ」になりました。

では大人になった人たちに絵本を書こうか。でも大人の定義ってなんだろう。


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「さんげつきー」

中国河南省淮水に流れる如水のほとり。失踪した同期の官吏を探しにきた袁傪という若者の一行が、叢に飛び込んだ虎を訝しげに思っていたところ。「危ないところであった」とその虎は何度も呟いています。その声を聞くや否や、相手が猛獣であったことも忘れ、無心に叢に近づき、袁傪は虎が飛び込んだ先に語りかけます。

袁傪「その声、我が友、李徴じゃあるまいか」
虎「いえ人違い、もとい虎違いじゃありませんか」
袁傪「いやいや、そんなことはない。声は多少違うかもしれないが、その神経質で一見ユニークな言い回し、君は李徴のはずでしょう」
虎「・・・はてさて、なんのことでしょう。」

人と獣が叢を境界として会話するという超常的な事態であるのにも関わらず、とぼけた虎の回答によって奇妙なやりとりが更に続きます。

袁傪「黙秘ですか、いいでしょう。それでは貴虎(あなた)を李徴ではない、道すがら出会った一頭の虎と仮定した上で、私の話を聞いてもらいましょう。私は監察御史、陳郡の袁傪といいます。私には、切磋琢磨し合ってきた隴西の李徴という風変わりな同期がいたのです。その彼が一年前失踪してしまいました。
李徴は博学才穎、若くして名を虎榜に連ねたのですが、性格は傲慢で且つ尊大。人からの干渉を嫌うがゆえに孤独であり、その一方で人一倍人の目を気にする神経質で自己中心的な性格です。変な知恵があるのものだから、逆に自身の矮小さが気になってしまい、その能力を正しく活かすことができなかった器の小さい男です。」
虎「友人をいくらなんでも・・・」
袁傪「己の才能を信じるがあまり、下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈することを潔しとしなかったようです。いくばくもなく官を退いてしまいました。人と交を絶ち、妻と子を差し置いて、ひたすら詩作に耽るようになったと人伝てに聞きました。それこそ虎になってしまってもしょうがない奴なのだと、私は思います。」

とぼけた回答をした虎に対するイラつきだけでなく、古い友人の自己中心的な過去を振り返ったことで袁傪の感情は自然に高ぶり、口調は自然と早口に、そしてややきつくなっていました。その圧力に押されたためか、やや遠慮がちに虎が口を挟みます。

虎「うん、虎に対する価値観の相違がありますね。虎に対して偏見をお持ちではないでしょうか。
虎の生活、虎ライフというものも悪いものではないと思っています、うさぎとか美味しいし。
うさぎ~美味しい~かのやま~♪ははは
とはいえ、もちろん問題もありますよ。これが本当の虎ブル発生、なんつっ亭www」

もはや虎のとぼけたを意に会することなく、袁傪の話が続きます。

袁傪「ちょうど一年前の今頃、この如水のほとりで彼は急に発狂し失踪してしてしまったそうです。」

如水のほとりで失踪した話に触れた瞬間、叢を取り巻く空気が一変したことを袁傪は感じました。そして、叢に隠れて見えないはずの虎の顔つきが険しくなったと、ありありと感じることができました。
もの言いたげな虎の沈黙があり、静けさと対極ある緊張感がこの叢に広がりました。
袁傪のおもわず息を飲む音がなると、しばらく間を置いて、ゆっくりと虎が語りはじめます。

李徴「袁傪、今から話すことをどうか落ち着いて聞いてほしい。いかにも私は隴西の李徴だ。ちょうど一年前、この道を通った夜を昨日のことのように今でもはっきりと思い出す。」

顔が見えないとはいえ、緊張した面持ちであることは間違いなく、声も幾分懐かしい友の声に近づいた気が、袁傪にはしました。ちょうど一年前、この道を通った夜に何があったのか。

李徴「大雪が降ったせいで、長い列ができていた。どこまでも続く、灯篭の灯りが綺麗だった。(中略)なんでもないようなことが・・幸せだった。
なんでもないような夜のこと~、二度とは戻れない~よ~る~♪ ちょうど一年・・・」

虎の少しハスキーな声で、調子の良い軽やかな歌声が叢越しに広がりました。悪くない歌声でありましたが、不思議と頭痛がしました。ひとしきり、サビを歌い終えると、軽い調子で再び、虎である李徴が話しはじめます。

李徴「なんかね、詩作も煮詰まっていたし、うまくいかない自分の人生に急に頭にきちゃって、宿抜け出して走り回ってたんだよね。そしたら、いつの間にか虎に変わってたんだよ。はじめはどうしようかなと思ったんだけど、早いもので、あれから一年経っちゃうんだね。いやね、案外というか、むしろ悪くないんだよね。でさ、J-ポップと狩りのコラボレーションがさ、新しい詩の扉を開いたっていうか、身体に馴染むっていうか。こんなことなら、はじめから虎に生まれてくればよかったなぁ、なんて思うこともあるよね。そうそう、我が妻子にもよろしく伝えておいてよ。姿形はずいぶん変わっていたけど、元気にやってるから、そっちもがんばってってさ。あぁ、もう夕方じゃん。お腹すいたからちょっとうさぎでも狩ってくるわ。近くに来る用事があったらまた顔出してよ。」

この古い友人には、詩人としてのプライドだけでなく、人としての誇りが微塵もなくなってしまったと袁傪は思った。もちろん個人の視点に立つと、中途半端な才能にしがみつくよりも、また今更何もできない妻子を気にかけるよりも、よっぽど幸せなのだろう。いたたまれない気持ちであることには変わらないが、呆れ果てるのをとおり越して、ある種の感心が、袁傪の胸中に生まれたこともまた事実であった。うさぎを狩りにいった虎においてけぼりを食らった袁傪一行は、余りの無気力さゆえに、夕刻のしばらくの間、叢の前から立ち去ることができなかった。

時に、残月、光冷やかに、白露は地に滋く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた。人々は叢の前に立ちすくみ、最早、事の奇異を忘れ、粛然としてこの詩人のある種の薄倖を嘆じるのであった。


20141124自宅
20160207しるびあ

すごい久しぶり
本業が忙しくて

「山月記」が好きゆえの
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「秩序なき世界、すなわち善が勝利しえない世界における犠牲者の位置を受難と呼ぶ。この受難が、いかなるかたちであれ、救い主として顕現することを拒み、地上的不正の責任を一身に引き受けることのできる人間の完全なる成熟をこそ要求する神を開示するのである。(「困難な自由」レヴィナス)」
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「美しい答えなどなにものでもないのが、いったいいつになったらわかるのか。わからんのか、まやかし以外のなにものでもないんだぞ。人間の中身が定められているのは、彼を不安にさせるものであって、彼を安心させるものによってではないのだ。(・・・)神は動きを意味しているのであって、説明を意味しているわけではないのだからな。(エリ・ヴィーゼル「死者の歌」より)」
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私の仕事は開発が予定されている地域に赴き、実際に開発される予定の範囲の中で調査を行い、「重要ないきもの」がいないかを把握することである。
そう、私はヒト社会といきもののシステムの間に立つ仕事をしている。

どんなにヒトが少ない「名もなき町」であっても、すべからくその土地で暮らしてきたヒトビトの数え切れない時間が膨大に染み込んだ場所であり、固有に名付けられたものごとがあり、日々の暮らしの温かさと悲しさと穏やかさと切実さが複雑に織りなしている。ヒトの声を聞くよりも、ヒト以外の声を聞くことが多い日々の中で不思議な出来事に出くわすことがある。3年前の夏の出来事を以下に語ってみたい。

日本海側の中核都市にある駅から車で30分程の距離にある町での調査での出来事。
調査の折、その地域の様子を聞こうと、わたしは水田脇にいた肌の黒い町 の人に声をかけて見ることにしました。

__.JPG

わたし「お仕事中、すみません。○○という水田に生育する重要な植物を探しています。」
町人「○○ですか?ここではありふれたもののようにおもいますが、重要というのはどういうことでしょう。」
わたし「そうですね、全国的には少なくなってきております。それゆえ、重要ないきものと位置付けらています。」
町人「○○を見つけて具体的にどうするのですか。」
わたし「場合によって、移植することになるかもしれません。」


町人「水田には○○以外にも△△などもありますが、それらは大事とはいえないのでしょうか。」
わたし「そうですね。もちろん、大事でないわけではありません。ただ”保全する対象”とはなっておりません。」
町人「例えば、○○を保全する意義として考えられるのは、○○が生育できることで同様の生育環境に生育している他の生物も包含して保全できるということです。しかしながら、移植するという方法では○○しか守ったことにしかならないのではないでしょうか。」
わたし「おっしゃる通りです。現在では”いたしかない手段”として移植という方法で対応している側面があります。勿論、理想的には貴方がいうように○○という特定の種だけではなく、環境全体を保全して行くことを目指すべきと思います。」


黒いマネキン「私はーマネキンとしてーこの電柱にくくられて10年以上、この水田を見てきました。この水田は、見ての通り4年ほど前から放棄され、既に水田としての機能を失っております。数年前まではこの水田だったものにも夏、水がはられてトノサマガエルがあちこちで泳ぎ回り、様々な小さい虫達で賑わっていたものです。川の反対側の田んぼを見てもらえますか。彼岸で帰省してきた人々が自分の子供を連れて水田脇を歩いて回っています。あれがこの町の水田の風景なのです。あの風景の中に○○がいるからこそ、○○の生育している意義があるのだと私は思います。開発にも意義があると思います。しかしながら、開発と環境との妥協点を見つけることが難しいことをゆめゆめ忘れてはいけませんよ。」

__.JPG


わたしは少しの時間、この黒いマネキンと話をしていたようです。
この電柱に括り付けられた黒いマネキンは、そこまで話すとすっかり動かなくなり、静かに水田脇にいるマネキンとしてイネを狙っている雀どもに睨みを効かせるのでした。

この黒いマネキンから、とても難しい宿題を貰ってしまいました。しかしながら、本質的な問題をついているように思いました。今後、ヒト社会といきもののシステムの関係はどのように変化していくのでしょうか。

※このはなしはフィッ・・フィッ・・・・フィックッションn。フィクションです(グスンっ)。



「調査にて」をちょっと改定150127


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「いつか連詩する日」>「いつか連話する日」への投稿。
「冬子」に続いた前4つの投稿のキーワードを使って作話。
こういうの作るの好き。とても。
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夏子がこの部屋を出て行ったのは、先月のオワリのことだった。
私はいま夏子が描いた絵を壁に立てかけ、部屋でひとりその絵を眺めている。
私は夏子のことをちゃんと理解できていたのだろうか。
この溶け出したまあるい世界の絵は彼女そのものなのかもしれなかった。

二人の別れは、彼女の慟哭と私の左頭部の痛みのうちにやってきた。
彼女が飛び乗ったバスはまるで、目的地のない方角に進み時刻表ない停留所に向かい、1000年後まで走り去ってしまうようにも見えた。

私はまだ2015年にいて、それ以上先に進めないでいる。
もしかしたら「来年」も2015年かもしれない。
1000年後に行くにはどうしたらいいだろう。
きっと大爆発が必要だ、世界全体を覆い尽くすような大爆発が。

私はペンキを手に取り、夏子の絵にぶち撒いた

溶け出した世界に黄色の染料が華々しく飛び散った

(やった大爆発を起こしてやったんだ)

私はコブシを握り締め、天を仰いだ

ふと、壁にかけた絵に目を戻すと、そこには溶け出した世界を黄色でまあるく縁取った「向日葵」が咲いていた

「向日葵」は夏子が一番好きな花だった






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共通キー;冬子(気分で夏子にする)
キー1;溶ける、絵
キー2;慟哭、左脳
キー3;バス、方向音痴
キー4;大爆発
その他;オワリと名古屋(尾張)がかかっている

IMG_2724.JPG冬は寒い

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