シングー河のアメチスト | 南米・鳥獣虫魚・探遊

シングー河のアメチスト

ワイン色のアメチスト(紫水晶)をご存知でしょう。ギリシャ語で「酔わない」を意味という。アメチストを削ってグラスを作って、水を注ぐとワインそっくり。でも、いくら飲んでも、ちっとも酔っ払わないぞ!(アタリマエだ!) ……というのが語源と語られていますな。



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ブラジル産アメチストの結晶


ヒーリングは、「冷静さをもたらす、感情や欲望のコントロールできる、禁酒禁煙、ダイエット、人間関係の解決、恋の駆け引き、邪気払い、家内安全」などなどパワー万能系。古来よりバチカンの聖職者たちもお守りにしてた。そういえば、「ダヴィンチ・コード」に登場した悪~い司教もデカい石を持ってたね。


アメチストは世界中で産するポピュラーなジェムだけど、他国を圧倒しているのがブラジル。アマゾン地方ってのは比較的新しい堆積盆地が広いから宝石類は多くないけど、ブラジル高原に続く岩盤にアメチスト産地が散在している。


アマゾンのアメチストで最も有名なのが、アラグァイア河畔パウ・ダルコだ。紫色が濃いという特徴があって、最上級品質にランクされている。世界的に有名な英語のブ厚い宝石教本では、1979年の発見逸話をこう記述している。「ある日のこと、ボア狩りをしていた村人が穴に逃げ込んだ。大蛇を捕らえるために砂浜を掘ったら、見事な紫水晶の結晶がころげ出た……」 しか~し、一般のブラジル人は、田舎でもヘビを食わんから、ボア狩りするなんて聞いたことがないぞ(笑)。明らかにお話しを面白くするためのウソだね。パウ・ダルコ・アメチストをお客に売るときに興味を引かせるネタとして、宝石業界がデッチあげたに違いない。この宝石は、大蛇の化身なんですよぉ、とか言って。濃いパープルは、たしかに神秘的だけどね。



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15カラットのパウ・ダルコのルース(磨き石)


グランデ・オガワは今までに、トカンチンス河水系のマラバ周辺、タパジョース河水系のクルア・ウナなどで小片を拾ったことがあるけど、もっともたくさん掘ったのは、シングー河畔である。最近、10年近く前に出会ったお宝の産地に、記憶を頼りに行ってみた。



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約10年前の産状


あれれ、ないねぇ。昔は岸辺に転がっていたのに。丹念に探していくと、小さな結晶があった。確かにここに違いない。風雨と共に岩塊にコケがむして、見つけにくくなっていたのだね。浅い川底の転石を洗うと、あったあった。地主のオバちゃんと話をして、拾ってもいい許可をもらう。ついでに鉱床のあった位置を正確に教えてもらった。



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この辺りの水中に鉱床がある



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今回拾った岩塊


シングーのアメチストは、おそらく先カンブリア代か古生代初期の地殻変動でできた亀裂空洞に結晶したものと思われる。特別な宝石質ではないけれど、グランデ・オガワはアマゾンのヒーリングを感じるね。近い将来、こいつでペンダントを作ってみたい。

日本では、釣り最中に遭難があったるするんですよね。シングー・アメチストのアクセサリーは、邪気払い&安全釣行・祈願アイテム。

そう、大蛇の化身なんですよぉ(笑)。



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こんなのを原石ペンダントにしよう


シングー河の流域には、他にもアメチストが採れるとこがある。新産地もまだ眠っているだろう。奥地探索で、パウ・ダルコ級を拾いたいなぁ。