ボイスドラマSTARGAZER番外編  鎮魂歌 2 | 天音鈴の人生楽しまなきゃ!!

歌を歌う男の姿がそこにはあった。 



語るような歌も、詰るような歌も、愛を語る歌も、すべてが 本物だった。


ライブ中に しゃべりはほとんどなく、そこには 掻き鳴らされるギターの音と 歌だけがあった。




派手なパフォーマンスのひとつもなく、あるのはただひとつの音楽だった。




すべての客が 一瞬たりとも聴き逃さないように集中しているのさえ わかるほどに。




静けさが 痛かった。




照明に照らされた彼の横顔から 光が弾ける。


音楽が




温かい・・・





『えっと、、、まあ、今日はこんな感じ。来てくれてありがとう。』





フロアの照明がついた。






簡素なMCで閉じられた幕に、やっと会場が呼吸をはじめた。








『十瑠!』
『十瑠!!おい!聴こえてんのか?』





『え?あ、、、』





『水』




『あ・・・』





『タオルも』




『す・・すみません』





『あんなあ。水もタオルも、お前が握ってたら、俺は いつどうしたらよかったんだ?』


と笑ながら頭を撫でられて正気に戻った。




『ごめんな・・さい・・でした』




『は?』




『え、、、あ、、すみません。』




とたんに 笑い声が響いた。




『さて、ライブの感想は?』




改めて聞かれて俺は 迂闊にも 答えてしまったんだ。




『すごかった、、』