少年は森に消えた

少年を止めるものは何もなかった

少年は森に消えた

少年の背を人々は冷たく眺めるのみだった



少年が去ることを人々ははじめに惜しんだ

しかし

少年が持つ秘密が自らをも危ぶむかもしれないと

そんな噂が人々の中に流れた時

人々は少年から露骨に離れた



誰もそれが本当かを確かめない

誰も少年に問わない

ただ離れた

我が身が大切だから

家族が大切だから

少年一人が犠牲になればいいのだから




少年は森に消えた

少年が森に消えた理由も

人々は知らない

少年は森に消えた

少年を止めるものは何もなかった

少年は森に消えた

少年は誰のために消えたのか

残された事実はただひとつ

誰もが見てみぬ振りをした




私はもう繰り返さない