市沢小のワークショップ | ア マ キ オ ト の 日々

ア マ キ オ ト の 日々

2012年9月より始動した伊東歌織によるダンスプロジェクト『アマキオト』
にまつわる日々の事、稽古場風景などを綴っていきます。

とにかく色んな感情が蠢いた1週間だった。
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なかでも、ひときわ大変で面倒で面白くて大変だったのは、小学二年生のダンスワークショップだった。

一昨年、横浜市の特別支援級の子供達のダンスワークショップを受け持ったご縁で、今年もまたアートの時間さんが声を掛けて下さった。しかし一昨年は15名1クラスを三日間だったのに対し、今年は30名2クラスを三日間。初めての試みだし、久しぶりのワークショップでもあった。

その2クラスはまるでタイプが違って、こちらの計画通りにいかないことがしばしば起こった。何が大変って、言葉での説明や仕切りが効かないこと。それから、子供達のなかで起こる喧嘩や「やりたくなくなった」理由は分刻みで変わり、その対応をしきれないところにもあった。

2日目に、一つのクラスで途中から全くワークに参加しない男子が4人ほど居た。理由は様々であり、ワークを進める最中はそれについて一人一人聞く時間もないし、問題解決をする暇もない。だからと言って、何故やらないのかは気になるし、このままで良いのかとても疑問だった。ちょっとした隙に、一人の男の子に聞いた。

「何でやらないの?」
「面倒臭いから」「やりたくないから」

「俺ダンスなんか大っ嫌いだもん」

これは、個人的にとてもショックな言葉だった。ダンスに救われてきた身として、「ダンスが大嫌い」と面と向かって言われてしまうと、どうしたら良いか分からなくなった。

しかし後で先生から話を聞くと、彼は「見よう見まねで動く」ことをとても苦手にしている傾向があり、直ぐに人と同じ動きが出来ない。ついていけないと感じてしまうことや周りから取り残されてしまう感覚が、面白くないという気持ちを生んだのだと思った。

もう一人は、振付の時につけた覚えやすい食べ物の単語が、自分の名前をからかわれた時に使われる単語だから、というのを2日目のワークが終わってから告白してきてくれた。

また、初日に気分が悪くなり、ワークが終わってから吐いてしまった為、参加するとまた吐いてしまうかも知れないから嫌だ、という子については、途中音響係を任命すると喜んでやってくれていた。

つまり、本当はやりたい。でも今やりたくない、やれない理由がそれぞれあり、うまく言葉に出来ないしそれをどう表現したら良いか分からないだけなのだ。


ワークショップは、ある程度こちらでリーダーシップを取りつつ子供達の創造性を引き出し、最終的に何かしらの達成感を感じて貰うこと、成果発表のようなものを期待されがちだ。勿論今回も、そういう方向性でアシスタントと共に打ち合わせをして進めていく予定だった。というか、一つのクラスはそれが出来たし、それはこちらが想像する以上の出来栄えで、子供という可能性に満ちた存在を改めて尊敬してしまった。

さて、もう一つのクラス。
私の選択肢は二つだった。
やりたい子供達、漏れてない子供達と一つの方向性を目指し、ワークショップを進め、出来るだけクオリティを高く仕上げること。または、ワークショップとしては一見グダグダとしてしまうカオスな時間を受け入れつつ、漏れ落ちていきそうな子供とも向き合いながらノロノロと進めて行くこと。

後者は、満足感の高い、達成感あるワークショップとはほど遠い。しかし私は後者を選んだ。

ダンスは優劣を競うものでない。
ダンサーは先生ではない。
踊ることは心や身体を開放し、人と繋がるためにあり、踊れない人を排除するものではない。

それは、例え伝わらないとしても伝えようとしなけらば全く意味がないと思った。短い時間のなかで様々なことが起こり、子供の表情ややる気が変化してゆく。その度にやることを考えたり、立ち止まるのでアシスタントと共有出来ないまま進めてしまったという反省点はある。

しかし、最終的には全員が踊った。正確には、参加をした。全く参加しなくなってしまった膝を抱えていた女の子も、遠くで見ながらポンポンを振っていた。ダンスなんか大っ嫌いと言い放った男の子が、グループワークにも参加し、苦手な場面も楽しそうに踊っていた。音響係をしていた子は本当は踊りたい、ということを告げてポーズでずっと止まって待っているグループに入った。名前を馬鹿にされて踊るのが嫌になっていた子は、振りを変えてもそこには参加しなかったけど、文句を言いながらも結局は楽しそうに参加していた。

まあ、こんな風に書くとダンスを通して子供達の気持ちが変化し、素晴らしいことが起こっているように思える。

しかしこれは分刻みで起こっている出来事なので、その瞬間瞬間はカオス以外の何者でもなかった。それでも、エネルギーをかければ心が伝わること、本気でなければ全く伝わらないこと、言葉ではなく身体のエネルギーでしか分かり合えないものがあり、特に子供達はそこに大きく反応するということをガツンと体感出来た。

いつの間にかワークショップ用の言葉や身体を設定し、彼らを騙しにかかろうとしていたのかも知れない。そんなものは微塵も通用しないぜ、と頭を引っ叩かれて気づいて、とても大事なものに触れることが出来たのです。

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アシスタントの京極くん、紅音ちゃん、お疲れ様でした!!!

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