相続登記・住所変更登記の義務化 | 司法書士事務所尼崎リーガルオフィスのブログ

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全国の土地のうち、所有者が不明な状態にあるものは約22%あるとのことです(平成29年国土交通省調査)。

 

所有者が不明な状態にあると、権利義務を行使する場合に支障が出ます。売却等の事情で数世代前から相続登記をしていない不動産の相続登記を進める場合や特に災害時の復興で土地を収用する場合などは登記簿上の所有者から相続人を辿ると何十人と関係者が出てくる・・・こともあります。

 

また、建物についても相続登記がなされずに何十年も放置されることで、建物が朽ち衛生・安全上の支障が出ることも社会問題になっています(これについては空き家特例法により一定の対策は整備されました)。

 

令和3年4月21日に民法・不動産登記法の改正、相続土地国庫帰属法が成立し、2年から5年内に各々施行されることになり、所有者不明土地解消を進めることができそうです。

 

以下に改正法等の概要を説明致します。

 

■相続登記の義務化

(公布日:令和3年4月28日から3年内施行)

①不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内相続登記の申請が義務となる(10万円以下の過料規定あり)

②但し、相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申し出たとき(相続人申告登記)は、申請義務を履行したものとされる

③所有不動産記録証明制度(特定名義人の所有不動産の一覧の証明書を発行)の新設

※土地・建物ともに適用

 

■住所変更登記の義務化

(公布日上記同様から5年内施行)

不動産の所有権の登記名義人は、住所等の変更日から2年以内その変更登記の申請をすることが義務付けられる(5万円以下の過料規定あり)

※土地・建物ともに適用

 

■相続土地国庫帰属制度

(公布日上記同様から2年内施行)

相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)で取得した土地を国庫に帰属させることを申請できる制度が創設

②申請にあたっては、法務局による要件審査・証人及び負担金の納付が必要とされる

建物等が立っている土地、担保権(抵当権や根抵当権等)が設定されている土地など、管理や処分に過分の費用又は労力を要する土地は対象にならない

負担金は10年分の土地管理費相当額とされる(参考例として、粗放的な管理で足りる原野約20万円、市街地の200㎡の宅地約80万円)

 

現行法だと、不動産登記は義務でないため、住所変更しても相続が発生しても手間と費用をかけて登記申請をされる方は決して多くありません。この点、会社の登記は登記変更事由があった場合から本店所在の法務局で2週間以内に登記申請する義務があるのは、会社の登記は世の中に公示し、その会社と取引する第三者が登記簿を見て契約権者等を確認する意味があるためです。不動産登記は世の中に対して、「確かにこの不動産は私が所有している」という対抗力を得ることが主な目的であることと異なります。

 

登記手続きを行う司法書士の立場で言えば、不動産登記の実体が変更した(相続の開始、住所変更、ローン完済による抵当権の消滅)後に数十年経ってから登記依頼をされると、かなりの手間と時間を要し、その上で登記ができない事態もあり得ます。実体変更があってから速やかに登記をしていれば簡単にできた登記も不可能になる場合や裁判により解決せざるを得なく多額の費用がかかることもあり、今回の改正は歓迎できるものです。

 

相続土地の国庫帰属は結果として金銭負担が生じるため、果たしてどこまで活用されるのか、は分かりませんが、これまでは何もできずに塩漬けにされるままの山林や原野の処分方法の選択ができたことは評価できるものです。

 

これら法改正により不動産登記制度も大きく変わります。一般市民の方は登記になじみがないのは当然ですが、今後は 引越したら不動産登記も!が常識になり、実体と合致した不動産登記制度となるよう願います。