1月22日に急性フィラリア症で、吊り出し手術をしたダックス♀みかん
22日は2匹のフィラリア虫が摘出でき、術後の経過も良好でした。

その時に、取り出せなかったフィラリア1匹が、右心室の心室内の乳頭筋という筋肉の延長である腱策(けんさく)に絡みついているようで、22日のオペ以降、外れて心房に上がってこないかチェックしていただいていましたが、状況は変わりませんでした。
この虫のせいで、心雑音もあり、予後が心配でした。

それが今朝、再び血尿があって、フィラリア虫が吊り出し手術できる位置に上がってきたようです。
幸いに経過をみるため入院中であったので、すぐに手術ができました。

吊り出しできたフィラリア虫は、計7匹(♀フィラリア6匹、♂フィラリア1匹)
心臓の腱策に絡みついていたフィラリアも一緒に出てきたとのことです。
まだ、こんなにたくさんのフィラリアがいたんですね。
でも、これでほとんど取りきれたのだとしたら、幸運です。

フィラリアの吊り出し手術は、いつでも出来るわけではありません。

フィラリアが、本来の寄生部位である右心室から肺動脈にかけての部位から、右心房や大静脈洞に移動する と、激しい血液の乱流によって赤血球の崩壊(溶血)、血色素尿(ヘモグロビン尿)の排出、急激な右心不全の発現によって、急激な元気の消失、食欲の廃絶、 呼吸困難、心拍の亢進といった症状が現われます。
このような急性フィラリア症の発現が、吊り出し手術が可能になるタイミングです。

時間が経過して、フィラリア虫が、吊り出しできる場所から移動してしまうと、手術は不可能になります。
また、急性症状が自然に収まるケースは非常に少ないので、そのまま放置すると予後はよくありません。死に至る場合もあります。

みかんは、とてもラッキーでした。

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フィラリアに感染した犬は、東京ではほとんどみかけませんが、千葉、埼玉、茨城センターから引取りした犬の中には、稀に感染している子がいます。

通常は、通年(1年を通して)のフィラリア予防薬の投与で血中のミクロフィラリアを殺して、親虫であるフィラリア成虫の寿命(通常4~6年)が尽きるのを待つことになります。
ミクロフィラリア(子虫)を駆除することで、体内のフィラリア虫が増えることを防ぎます。
またフィラリア予防薬の投与で、成虫の寿命も縮まるようで、早ければ2~4年で陰性に転じます。

近年、新しいフィラリアの治療として、抗生剤であるビブラマイシンの連続投与によって、フィラリア虫を早くに死に至らせる方法があり、当会でも実施しています。
これは、フィラリアが体内で生息するために必要なフィラリアに寄生している菌(

ボルバキア菌)を殺すことで、フィラリアが体内で生きられない環境を作るという治療方法。
ビブラマインの連続1ヶ月投与ののち、2~3ヶ月間をあけて、また連続1ヶ月投与。
今まで何頭か治療をしてきましたが、平均2クール(6ヶ月)で、陰性に転じました。
アメリカではいくつかの治療文献が出ているようです。
体重に見合った投与量がありますので、必ず病院で相談してから実施してください。

みかんの退院は経過をみて。
近いうちに元気な姿で預かりママのおうちに帰れると思います