東京喰種14・ネタバレ感想。 | 墜落症候群

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墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

5 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 ネタバレあり・決着は付かずに漫画は続く。, 2014/10/21
投稿者 天田龍太郎 (東京都練馬区) - レビューをすべて見る
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レビュー対象商品: 東京喰種トーキョーグール リマスター版 14 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) (Kindle版)
 面白いし、今もっとも勢いのある漫画のひとつだとは思うが、売上ランキングトップ独走中の現在、ちょっと好みによる、つまりは独断と偏見によるレビューを書いてみたいと思う。
 この漫画に感じるのは、物語としての性急さである。
 何ていうか、もっと丁寧にやれば、きちんとお話になる展開もすっ飛ばして、ひたすら行き急ぐようなお話で、なんだか勿体ない気が前からしている。
 例えば、その性急さについて、すぐに思い浮かぶのは、ヒロインのトーカの弟、アヤトのことで、彼が黒ウサギとして暗躍していることがちらりと語られたりもするが、そのことはスルーされる……物語としての大展開を重視しているというか、拾われない伏線を放置しているというか。
 衝撃の展開については、今巻では、隻眼の王の正体及びピエロに関してだけれど、なんだかなあ……これもどうなんだろう。これも疑えるだけの意味深さがなかった、まるでこれまでのキャラクターがなかったかのように、新しい面が切り出されているって感じで、多重人格的というか……これについても、ちょっとした危うさ、「味方や表の世界にいるはずのキャラクターなのに、実はちょっと暗い一面を持っているのでは?」というチラ見せがあると「やっぱりね」という面白さもあったように思う。
 この物語は、まるで積み重ねを拒否しているかのようだ。
 段々と人を喰う喰種に染まっていく、ダークヒーロー的な主人公は、新しく、また格好良いとも思うんだけれど、しかし今巻の結末を見ると、内面世界での終わり、自分なりの人生の意味付けは切なく映るも、彼を待っていた仲間や、もう一人の主人公・亜門との言葉による語り合いみたいなものがあまりにも為されないままに終わってしまった感はある。
 ある意味ではかなりディスコミュニケーション的というか、独り閉じていくというか、それは確かに新しい時代を捉えているのかもしれなかったが、何となく作風全体にデザイン的ながらも、ウェブ漫画出身作家特有の古さみたいなのを感じるところもあり……いやはや、うまくまとまらない。
 結局、主人公が武器になって終わるこの物語は、きっとカネキくんのための物語ではなく、ある種の喰種と人間、ピエロの移り変わる勢力争い、それを描写するものであって、だから主人公が交代してもよい群像劇なのかとも思う。
 衝撃的で挑戦的な漫画ではあるが、一度連載を終了させることにより話題を取るなどの場外戦術などもあり、一つの物語としての完成度などから、勢いはすげえ、とは思っても、手放しで「面白い!」と拍手しきれない自分がいる。

 王道少年漫画的な、そういう面白さと比すると足りないものがあるって感じなのかなあ……そもそも王道少年漫画じゃないんだからいいだろ、って話かもしんないけどさw
 まあ、足りないところで批判するのはよくないと、俺自身も常々思っているから、戒めないと。