『新』カゲロウプロジェクト完全解釈マニュアル 歌詞3 | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 全体では、第8回になりますね。今回は歌詞の3回目。重要曲『デッドアンドシーク』とかも含みますが、まずは歌詞から分かる事、という事であっさりめ。


デッドアンドシーク。

幻想話の暴走
飛び込んだ事故の彼方から
単身で僕は気が付いた

反面、彼女は失踪
繰り返した伴侶の会話の温度は
簡単に脳裏で憎悪になって

その瞬間意識の高揚
気の遠くなる程の量の
計算で頭が詰まって

これが「人体組織の変貌」
冴えきった目の配色がなんだか
怪物じみてないですか

脳汁治まらない 細胞が知ろうとする
真夏日を描いた 赤、白、青の幻想

解剖で血に塗れた手を取ってよ

きっと君はまだあの夏の温度に
縛られてるんだ

「僕はまだ正常さ」
大丈夫、君以外を××してでも
すぐ助けるから

数年余りの研究
その精度は人類進歩の
数世紀分もの成果になった

幻想理論の究明
あの数奇で妙味で
どうしようもないような
空間はどうにも厄介そうで

あれは空想世界の存在?
物語の「中身」の様で
非現実じみていたんだ

ただ単純科学は聡明
あの時と同じ様に描いてやろう
「君と、僕のように」

絶対に許さない 明るい未来なら
あの日から、もう全部奪われてしまった

存在を確かめる様に今日もまた

実験を始めよう カウントダウンで
あのドアを さぁ、もう一回開こうか

「ねぇ。次は君の番だよ。
うまく逃げられるかな?」

幻想話の暴走
飛び込んだ事故の彼方から
単身で僕は気が付いた

 デッドアンドシークの『視点』は事故に合い、何かに気が付く。

反面、彼女は失踪
繰り返した伴侶の会話の温度は
簡単に脳裏で憎悪になって

 妻だか長年連れ添ってきた友人だかは失踪してしまう。
 しかも、誰かに連れ去られたらしい。伴侶への情が、連れ去った者への憎悪に変わる。

その瞬間意識の高揚
気の遠くなる程の量の
計算で頭が詰まって

これが「人体組織の変貌」
冴えきった目の配色がなんだか
怪物じみてないですか

 その時、デッドアンドシークの『視点』は、『天才的な頭脳』というような『能力』に目覚めて、目が『赤く』なる。

脳汁治まらない 細胞が知ろうとする
真夏日を描いた 赤、白、青の幻想

 デッドアンドシークの主人公は、『カゲロウ世界』を探求しようとしている。彼の伴侶はこの中へ?

解剖で血に塗れた手を取ってよ

 何かの人体実験を想わせる。Uzakさんの解釈を借りると、ここが『コノハ改造シーン』なのだが、断定は出来ない。一度時系列との擦り合わせを行いたい。

きっと君はまだあの夏の温度に
縛られてるんだ

「僕はまだ正常さ」
大丈夫、君以外を××してでも
すぐ助けるから

 『事故』と『失踪』は夏に起きたのだろう。彼が探求しようとしている『世界』では時が止まっているないし、繰り返している事が伺える。

数年余りの研究
その精度は人類進歩の
数世紀分もの成果になった

 『事故』と『失踪』から数年後、主人公の科学力は爆発的に伸びた。数世紀分だ。仮に5世紀とすれば500年分であり、かなりケレン味に満ちたレベルの『技術の飛躍』だ。

幻想理論の究明
あの数奇で妙味で
どうしようもないような
空間はどうにも厄介そうで

 『カゲロウ世界』を究明する事が、探求の目的である。

あれは空想世界の存在?
物語の「中身」の様で
非現実じみていたんだ

 『カゲロウ世界』内を遂に観測。『世界』内に誰かを見る。そこでは『繰り返し』という非現実な物語が展開している。

ただ単純科学は聡明
あの時と同じ様に描いてやろう
「君と、僕のように」

 デッドアンドシーク主人公は、その2人組の姿に、自分と伴侶の姿を重ねた。

絶対に許さない 明るい未来なら
あの日から、もう全部奪われてしまった

 彼の感情は、最早『伴侶を探す』事から、2人組の仲睦まじい様子への嫉妬へと完全に転嫁してしまった。

存在を確かめる様に今日もまた

 彼は何度も何度も、その2人組が『交通事故』という悲劇により引き裂かれる様を『世界』内に干渉し、『試行』する。『実験』を繰り返す。

実験を始めよう カウントダウンで
あのドアを さぁ、もう一回開こうか

 そのドアの向こう側が『カゲロウ世界』の入り口となっている。

「ねぇ。次は君の番だよ。
うまく逃げられるかな?」

 2人組のどちらかに、『死の運命』を与える。うまく逃げられるか? と嘲り笑う。

人造エネミー。

「夢の消えた毎日を
繰り返していたって
意味などないよ。」と
素晴らしいこと言うね
君もそう、
「非現実を愛してます。」
なんて指では言うけど
口では何も言えないのにね

顔も声もない人と
繋がってるなにかを感じてる
それはきっと
相思相愛じゃないけど
そうやって今日もまた
一日が終わるけど
君は生きたようなフリをして
して そして眠る

ああつまらないなと
目を背けてみても
閉じることは出来ないくせに。
ねぇ、
そんなことを認めもしない割りに
今日もまた厭らしい顔で
画面の奥の私を見てるよ?

それが最善策じゃないことを
きっと君は知ってる
萎んだ暗い毎日に
溺れてるのは苦しいよね
嘘じゃない現実が何なのか
解らないのなら一緒に
人が造りだした世界で
生きるのはどうかな?

君を否定するような場所なんて
いる意味が無いでしょ?
もう全てNOにして
私だけを見てよ。

「ああ素晴らしいね。」と
手を叩いてみても
全部嘘で外はゴミだらけ。
ねえ、苦しいほどそれに
埋もれた君が
何で今あっちにむける冷たい顔で
私を見てるの?

それが最善策じゃないことを
きっと君も知ってる
それの先にあるのはきっと
底無しの孤独感
光の射さない毎日を
繰り返してた部屋に
崩れ始めている私の
ノイズが響いてる
「こんなの全然解らないよ」
叫んだ私に君は
「喋るだけのおもちゃはもう
飽きた」と言った

「夢の消えた毎日を
繰り返していたって
意味などないよ。」

 夢とは何を指すか。『-in a daze』の人造エネミーの章にて、シンタローは黒歴史として、『フード付きパーカー』や『赤ジャージ』を着ていた頃もあったらしい事が示唆されている。しかし、彼が過去にメカクシ団であった事はないようだが。そういう子供じみた夢の喪失?
 シンタローは『透明アンサー』でマフラーの女の子を亡くしている。それを『夢』がなくなったと表現しているのか。
 この楽曲は小説版の『人造エネミー』の内容とは被らない。時系列的には『未来』の彼らだろう。『メカクシ団』に入団もしたかもしれないそれからのシンタローは何らかの形で『夢を失った』?
 如月モモの楽曲でも『夢』というフレーズが出て来るのは興味深い。

指では言うけど
口では何も言えないのにね

 タッチタイピングは得意でも喋るのは不得意。

そんなことを認めもしない割りに
今日もまた厭らしい顔で
画面の奥の私を見てるよ?

 厭らしい、というのは要するに性的関心の事であろう。押し隠しているが、この時期のシンタローはエネにそれを抱いているという事である。

嘘じゃない現実が何なのか
解らないのなら一緒に
人が造りだした世界で
生きるのはどうかな?

 エネは明らかに、『電脳世界』においでよ、と誘っているが、そんな事が可能なのかは分からない。シンタローが電脳世界に行くには、『電脳紀行』の序盤のような経験を、シンタローに課すという事である。
 それでも、エネはシンタローに来て欲しいらしい。かなり依存的に感じる。

もう全てNOにして
私だけを見てよ。

 現実から目を背ける事をエネは積極的に勧める。むしろシンタローの関心を独占したいらしい。

「ああ素晴らしいね。」と
手を叩いてみても

 ここは何となく白衣の科学者の手を叩くシーンを想い浮かべてしまう。シンタローの精神はかなり退廃的な領域だ。

何で今あっちにむける冷たい顔で
私を見てるの?

 シンタローのエネへの無関心の示唆。

崩れ始めている私の
ノイズが響いてる

 エネの『電脳体』は崩壊し掛かっている。

「喋るだけのおもちゃはもう
飽きた」と言った

 この時のエネにはもうバックアップから復活する能力もないし、電脳世界を支配するような力もない。明らかに衰えており、喋る事しか出来ないらしい。

透明アンサー。

目まぐるしくもない
そんな毎日を
漂う様に何度も席に座って

「さぁ、どうかな?君は。」
また試す様に
数字の無い教科書が何かを言った

出来栄えならそれは
まぁ、良いほうだろう。
三桁満点の再生紙を貰って

隣の席では
照れ笑いながら
桁の低い点数の君が席についた

窓の外、求め無いのは
答がすぐ浮かんでしまうから

「それじゃほら、つまらないよ」と
君はいつも楽しそうだ

これ以上消えたい心に触れないで
今日も地球なんてどこにも見えないよ

鳴り出したアラームに
一人「冷たい奴だな」と語りかけてる

今更不思議そうに答を合わせても
何でか全て解りきってしまうから
「このまま死んだって
誰かが代わりになるから」と
呟くことも馬鹿らしいよ

漂う様な日々は繰り返すけど
君が休むなんて違和感があって

まぁ、どうあれ明日返るテストも
代わり映えしない結果なんだろうな

目まぐるしくもないそんな毎日は
何処かがもう
狂ってしまったかもしれない

君の髪の色
君の笑顔を
誰かがもう覚えていないかもしれない

「窓の中空いた席は
そこからどう映っていますか」と

君の事知ったように
何一つ解っていなくて

少しでもそれを解っていられたなら
ずっと続いていてくれた様な日々は
鳴り出したアラームを止める度に無い物だと、
気付かされてる

教室で消えたい心を傷つけて
何度も隠し通して笑っていた

ここから飛び降りていなくなった君の笑顔を

僕は明日も忘れないよ

数字の無い教科書が何かを言った

 『教科書が何かを言う』というこのフレーズと、ネット上に流布した『透明アンサー』歌詞の誤表記、『明日買えるテスト』は、俺の頭の中に、どこかサイバーパンクな世界を思い浮かばせるに充分だった。
 PVを見ると何の変哲もないただの学校で、まあ、正直少しだけがっかりしたのも否めない。特に教科書も喋っていなかったようだ(笑)。

これ以上消えたい心に触れないで
今日も地球なんてどこにも見えないよ

 俺にはどうも、シンタローに取っては、マフラーの少女の笑顔は、『救い』であると同時に『苦しみ』であったように受け取れるのである。何の変哲もない日常からも、笑みを浮かべられる彼女と、100点を取れるとしても、つまらない自分自身との対比。

「このまま死んだって
誰かが代わりになるから」と

 主人公は、自分が死んでも誰かが代わりになるというようなニヒリズムめいたものを抱いている。

漂う様な日々は繰り返すけど
君が休むなんて違和感があって

君の髪の色
君の笑顔を
誰かがもう覚えていないかもしれない

 わんにゃんぷーさん動画だと、マフラーの少女の自殺からすぐ翌日に、シンタローはその事実を知ったみたいに映像化されているのだが、むしろ歌詞からは『時間が経過してから気付いた』というようなニュアンスを感じる。

「窓の中空いた席は
そこからどう映っていますか」と

 落下の一瞬、最期に見た教室はどう見えたのか、という問い掛けと感じる。『透明アンサー解釈小説』でも教室を最期に一度振り返るシーンとして流用した。

少しでもそれを解っていられたなら
ずっと続いていてくれた様な日々は

 シンタローは笑顔を浮かべる彼女の真意に気づくことが出来なかった。

教室で消えたい心を傷つけて
何度も隠し通して笑っていた

 歌詞から読み取れるのはテストの点数が低い事への劣等感である。『解釈小説』では、自殺せざる得ない理由を色々と転嫁したが。原作として分かりやすい展開としては『虐め』だろうか。
 ただクラスメートが皆涙している描写もあるので、良く分からない。個人的には、成績が悪いだけで生命を断つという感覚は理解出来ない。ので、何か色々と事情があったとか斟酌したい所。

ここから飛び降りていなくなった君の笑顔を

僕は明日も忘れないよ

 しかし、これが原因で、シンタローの引きこもりが始まったとすれば、俺はかなり『皮肉』に感じる。個人的好みをあくまで述べさせてもらうのならば、『誰かの死』を理由に、自分の人生を半ば投げてしまうようなキャラは好みではない。
 笑顔を胸に抱いて、色々と人生を頑張っては欲しかったかな。


 第9回