Fate/Zeroはとても面白い。 | 墜落症候群

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墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 お話の密度という意味でもそうだが、本当の意味で凄いのは、アニメーション会社の動画作りだと思う。徹底したクオリティで作られている。ほとんど現実に近い描写の中で、現実以上の動きをするアニメは、やはり、物語というよりも、映像作品として純粋に魅せられるものがある。今回で言えば、アサシンの罠抜けの描写は、原作ではあまり重要なシーンではないが、かなり格好良く描かれていたと思う。キャスターの殺し方はかなり地味な物だったが、殺害描写にはかなり規制が入るだろうから、仕方ないのだろうね。この物語というのは、そもそもFate/stay nightのセイバールートの前座というか、そこに至るまでにセイバーのフラストレーションを溜めていくというか、衛宮切嗣はともかくとして、セイバーが報われるという物語はないので、必然的に主人公が定まらず、全てのマスターサーヴァントコンビに焦点が当たるようになっている。ステイナイトのような主人公だけの成長に焦点が当たっているタイプの物語ではない。
 視聴者各々、何となく味方したくなるコンビがいることと思う。
 ゼロにおいて、準主役というか、いわゆる若者の成長のようなものを見せてくれるのは、ウェイバーとイスカンダルのコンビ。
 他の登場人物も色々な思惑を抱えながら、時に戦ったり、時に自壊するように崩落していったりする。
 虚淵が書いた小説とあって、かなり黒いものもあるが、基本的にはきちんとエンターテイメントしていると思う。
 ただ、言いたいことは、切嗣は王道的な主人公ではないし、セイバーに感情移入すると、あまり物語を楽しみ切れないのではないか、ということだけだ。
 あくまで群像劇というか、聖杯戦争全体を楽しむようにすればいいと思う。

 分割2クールになったのは本当に残念なんだけど、このクオリティならば、仕方ないのかな、とも思う。
 そもそもアニメというのはただでさえ一週間に一片で、一気に楽しむことが出来ないというフラストレーションを抱えざるを得ないので、更に待たされると聞かされるとちょっと萎えるものがあるのは事実だ。
 けれども、これだけのクオリティのアニメは時期が開こうが何だろうが、どうしても視聴を続けてしまうだろうとは思う。これからも楽しみだ。