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炭酸水素ナトリウムをご存じですか?
別名は、重曹、重炭酸ソーダです。パンを焼く時に、膨らすために使います。私は少し古い人間ですから、胃酸過多のとき、制酸剤として使うのは知っていました。とは言うものの、自分で使ったことはありませんでした。
 今日は重曹の話です。
 
 先日、猫が元気・食欲が無くなったと云って来院されました。診察台に乗せて貰いましたところ、確かに、元気がなく、うつろな目をしています。急に逃げ出そうとしましたので、首のところの皮膚をつまんで制御しようとしましたら、痛がって暴れます。手を離して診察台から降りないように囲むようにして、連れて来られたときに入って来たカバンに入れました。
 少しずつ、診察を始めますと、脇の所が、10cmほど、大きな穴があいています。このようになっている時は、化膿して、中の膿が出た状態の時に見られます。ところが、不思議なことに化膿の臭いにおいがしません。
 耳を触りますと、熱いです。熱を測ろうとしますと、痛がって身体を触らしません。検温は諦めることにしました。
 傷口は大きいですから、どちらにせよ、縫って傷口を小さくする必要がありますが、あまりにも、痛がるので、鎮静剤の注射を打ちました。 しばらくしますと、大人しくなりましたので、先ず、傷の周囲の毛を刈って、綺麗にしてからと思って、ハサミで毛を刈っていますと、痛がります。
 傷口が大き過ぎるので、縫っても皮膚が足りるかなと思いながら、傷口を整えていましたが、やはり痛がります。 このままでは、とても、縫合など出来ませんので、麻酔をかけることにしました。
 しばらくしますと、全く、動かなくなりましたので、猫を横にして、腋の傷を眺めていますと、お腹の方へと続いています。
 猫の皮下は、犬よりも隙間が多いので、背中の方に化膿していて膿がありますと、お腹の方に回り、お腹の皮膚の弱いところに穴があいて、膿がどっとでることが多いです。
 自分で、このように考えながら、臭くないのをすっかり忘れて、もう一度、背中を上に死しましたら、予想通り、背中に5センチほどの穴があいていました。
 この部分も縫合する必要がありますから、毛を借り、縫いやすいように、傷口をハサミで整えますと、皮膚がボロボロと落ちます。 採れた皮膚を拾い上げますと、皮下にある筋肉が真っ赤な色で見えます。皮膚は少し触るだけでダンボール製の皮膚の感じでボロボロ落ちます。やっと、気がつきました。皮膚は血の気はなく、白くなっています。そして、臭気がありません。 そっと皮膚をつまんでみて、皮下の中に、医療器具を突っ込んでみました。器具は力を入れなくても、どこまでも入っていきます。皮膚がボロボロ落ちますと書きましたが、その皮膚には、毛がちゃんと生えていました。毛ごと皮膚を引っ張りますと、どんどん、とれてしまいます。あっという間に、私の手のひら大に、皮膚が取れて、真っ赤な筋肉が見えました。
 その時の感じは表現できません。ぞっとしたというか、恐ろしい気がしました。
 この間、猫からは血の一滴も出ませんでした。

飼い主さんに、私が説明したことは、これは化膿していたのでもありません。何か薬品を皮下に注射器のようなもので注入されたのだと思います。脇のほうは、体液が出て濡れた状態でした。その液体は、身体の上の方の組織を殺してしまい、皮膚に栄養を送っている皮下織を全滅させたために、皮膚が腐らないで、ミイラ化したのだと思います。
 しかし、全部確かめたわけではありませんが、皮膚の8割は、ついてはいますが、全部とれてしまいますから、生きていくことはできません。

麻酔が覚めますと、痛がりますから、安楽死を勧めました。
 連れて来られたのは、代理の方でしたので、飼い主さんに電話をして了承を得て、安楽死をしました。
 この猫の外に、猫がいますから、その猫も同じようにされる可能性がありますから、警察に届けられたらとお話しました。

 この猫は、野良ネコで、ご飯をやってはいましたが、家には入れないで物置小屋で寝ていたとのことです。そのために、汚れて臭いがするので、毎日、重層を溶かして身体を拭いていたとのことでした。と電話でお話した時に、
 私は重曹ではこのようなことには、ならないと思います。
と返事をしたものの、納得のいかない例でした。仮に、私が推理したように、薬品を皮下に注入しても、このようになる前に、身体の調子が悪くなって死んでしまうと思いました。

 インターネットで、「重曹」と入れましたら所、掃除の薬として重宝なものであることを知りました。
こんなページもありました。
http://plaza.rakuten.co.jp/artlabovagoods/diary/200506280000/
 お風呂に使ったら、洗剤も要らない、匂いも無くなる、・・・・。

外のページを見ると、大量にネットで販売しています。私も知っているのは、胃酸過多で胸がむかむかする時には、すっきりするので、常用している人を見ていました。飲んでも、大丈夫ですから、大丈夫と思っていました。
 皮下に注入する物質としたら、強いアルカリ性のものか、強い酸性の液がありますと自分で喋っていたのを思い出し、調べてみましたら、
あるページには、
ペットのドライシャンプーにも
身体の各所に振りかけてブラッシングすると臭いが取れます。ペットが身体を舐めても安心です。
ペット小屋の四隅や敷き砂の下にも敷いておきます。1週間程度で交換してください。
とありました。しかし、化学の所には、酸性・アルカリ性のことが書いてありました。

酸性は金属を溶かす性質があり、アルカリ性はタンパク質などを溶かす性質があります。
酸性は酸っぱく、アルカリ性は苦みがあり、触るとヌルヌルした感じがあります。
中性とは、どちらの性質も持たない水溶液のことです。

やっと、思い出しました。重曹は、胃酸過多に使うということは、アルカリ性なのだ、中和されて、胃酸過多が一時的に解消するのだ。
 
 身体中の皮膚が無くなり、これではかわいそうなので、残っている皮膚を縫い合わせて、見た目には、皮膚が覆われている状態で帰って頂きました。
 この時点でも、私は重曹のことは頭にありませんでしたが、臭いにおいもしませんので、素手で縫合をしました。
 そのため、終了後に、手が少しヌルヌルしますので、何度も手を洗いましたが、手の平がカサカサになりました。 これは、明日起きたら、この猫と同じように、皮膚がボロボロ落ちるのではないかと、お風呂に入ってからも、何度も手をあらいました。

 この猫は、2月から毎日、重曹で拭いていたそうです。
こんな基本的な薬の知識もなくて、獣医師失格だなと反省すること頻りです。

この薬に限りません。 皆さんが、病院や動物病院で受け取られる薬も、少なすぎて効かない方がいいことが判ります。受け取ったら、必ず、確かめる必要があります。

それにしても、どうして、重曹を使ったら、石鹸も要らないということを書いてあるホームページが許されているのか 不思議です。

 重曹のことは、ご自分で確かめてください。(http://shop.aparagi.net/study/vs.htm  )

皮膚に塗りますと、皮膚が溶けてしまいます。