笹本稜平著
文春文庫
2012.2.8読了
☆☆☆☆
8000m級の山への登山という、主人公が言うところの「死を前提としたスポーツ」を通して、人の生きる目的は何か、生きがいとは何かということを、深く掘り下げてひとつの結論にたどり着く。スリリングに展開する登山のシーンと並行して、そんなメンタルというかスピリチュアルな領域に、もうひとつのストーリーがあります。故に、主たる3人の登場人物(矢代、竹原、神津)の思考、行動、台詞は意味深く、単なる小説ではなく人生の指南書?のような雰囲気すらあります。
ヒマラヤの情景や登山に関する深い知識、そしていつもながらの圧倒的な描写力で臨場感は抜群。山にあまり興味ない人でも、その魅力を充分に体感できます。
読み進むにつれて主人公たちはどんどん厄介な状況に陥ってしまう、にもかかわらず残りページ数が僅かしかない!。最後はどんな展開で終るんだろうと、変なことが気になってしまいました(笑)。
清々しいエンディングだけど、聖美がもし生きていたのであれば、それはそれでちょっと悲しい気もするな。