【夢小説/眠らぬ街のシンデレラ】「no title④」(廣瀬遼一) | マドカのラズベリー☆デイズ

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収録日前日。

私は本誌の方の仕事を急ぎで仕上げると、密着取材の方の仕事の確認を始めようとした。

番組によっては、今度出版される本の宣伝だけの場合もあれば、トーク番組では大まかに決められた台本にそって遼一さんがインタビューされる場合もある。

その部分をもう一度確認しておこうと思ってファイルを開くと、携帯が震えだした。


(あ、遼一さんから電話?何か確認かな)


「もしもし?遼一さん?」
『おー、お疲れ。〇〇、今日は何時くらいに仕事終わりそうだ?』
「今、収録の番組の確認してたんです。まだもう少しかかりそうなんですけど」
『他に仕事は?』
「いえ、これを確認すれば終わりですけど……?」
『じゃー、大丈夫だな。すぐ下に降りてこい』
「え、あの……」


気づけば既に電話は切れている。
私は肩をすくめると、確認しようとしていたファイルをバッグにしまい、足早に編集部を後にした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

エントランスを出たところの車のそばにたたずんでいるのは——……

「遼一さん!」
「お疲れ」

車に寄りかかりながらタバコを吸っていた遼一さんの口から煙とともに白い息がこぼれた。

銀杏の木もまだそんなに色づいていないのに、夜の寒さときたらここのところ冷える一方で、彼の吐き出す息が余計に気温が下がっているのを感じさせた。


「お待たせしちゃいました?」
「いや、さっき来たばかりだ。まあ、いいから乗りなさいよ」


彼があけてくれた助手席にすべりこむと、遼一さんも寒そうにしながら運転席に乗り込んできた。


「さて、明日は早朝から大東テレビにいかなくちゃならないからな。〇〇はウチに泊まっていけばいい」
「え」
「お前の家から早朝出向くのは大変だし、待ち合わせとかするより俺とはじめから同行してた方が簡単だからな」
「確かにそうですけど……」
「それに」


そう言ってニヤリと笑いながら遼一さんが言う。


「さっきお前がやり残した明日の番組の確認なんかは、これからウチで俺とすればよろしい」


そうして、私が何も言えないでいるのを、了承だと受け止めた彼はさっさと車を走らせたのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

明日も早朝から仕事ということで、途中、食事をせずに彼の自宅へ帰ってきて、私は夜食の準備をしようとする。


「遼一さん、ちょっと待っててください。簡単なものですけど、すぐ作りますから」


(冷蔵庫にあるもので適当に……あまり材料がないけど、あたたまるものでも作ろうかな)


すると、遼一さんがキッチンに行こうとする私の腕をつかんで、自分の方に引き寄せた。
思わず私はバランスを崩して、遼一さんの腕の中に飛び込んでしまうと、そのまま肩を抱かれる。


「いいから、こっち」


そしてそのまま、リビングのソファに連れてこられると、遼一さんが自分の足の間をポンポンと叩く。


「ほれ、ここ」


なんだかその眼差しに吸い寄せられるようにして、そこにストンと座ると、彼をじっと振り向きながら見上げた。
彼の表情の奥に何があるのかと思いながら。

すると遼一さんはそんな私に気づきつつも、私を後ろから抱きしめて耳元で低く囁く。


「明日の取材の確認はしなくていいのか?」
「あ……します!」


後ろから抱きしめられたまま、私はそばにあったバッグから取材ノートを出して確認を始める。


(朝からお昼すぎまでは、本の宣伝コメントで割と顔を出すだけの番組が多いけど、夕方からはトーク番組が多めになる……ここらへんよく私も番組の流れを見ておかなきゃ)


そんなことを思いながらも、こうやってレジュメに目を通しながら、遼一さんとくっついてるとゆったりとした暖かさに包まれていつの間にか外の寒さで固くなった体がほぐれている。

いつもの遼一さんのぬくもりと、彼のいつもの匂い。

私が見ているレジュメを覗き込むようにして、私の肩に顎を乗せてくる彼の心地よい重み。


「なんだか陣内さんもずいぶん盛り込んでくれてるじゃないのよ。まぁ、ありがたいことなんだけどな」
「ふふっ、編集長も、書籍編集部も来月は遼一さんのインタビューをこの取材記事と一緒に載せようと張り切ってますからね。私も明日は気を引き締めてとりかからないと!」
「おーおー、ずいぶん張り切ってるな」
「そりゃあ、テレビに顔を出す機会なんてあまりないんですから。私ももっとファンの人に遼一さんを知ってもらいたいですし」


そう言うと耳元で遼一さんがクスッと微かに笑うのを感じた。
不思議に思って少し彼の方を振り向くと。

優しげな瞳で私を見つめる彼が間近にいて、思いのほか、その距離が間近で目を瞬かせていると吐息がかかった。


「え……?」


抱きしめる手の力が少し強くなる。
そして抵抗する間もなく、可笑しそうに笑う声が耳をかすめたと思った途端、柔らかな唇が重なった。
そして何度もついばむようにして優しくキスされると、どんどん熱のこもるそれに変わって行く。


「遼一さ……」
「いいから、黙って。こっち向けって」


じっと私の瞳の奥を覗き込むように見つめる真剣な目。

その瞳に少しだけ違和感を感じた。


(え、なに……?)


けれどそんな事から意識を遠ざけるように遼一さんのキスはどんどん深くなって、私の体の芯がアツくなっていく。

遼一さんの舌に自分のを差し出せば、絡めとられて吸い上げられた。

柔らかに、何度も、何度も。

更に上唇を食まれ、ぺろりと美味しそうに歯列をなぞられて、更に唇を開いて、もっともっとと彼のキスを求める。


バサっとさっきまで見ていたレジュメが床に落ちて、私は遼一さんに抱き上げられるとそのままソファに押し倒された。

彼の手がゆっくりとスカートの中に手を滑り込ませると、触れるか触れないかくらいの柔らかさで私の内腿を撫でていく。

その指先が触れる度、私の体は粟立ち、体の奥から甘くて熱いものが溢れ出すようだった。


「……もう、欲しくてたまらないってカオしてるな」
「遼一さん……」


互いの息づかいと、ぬくもり。
それがとてつもなくいとおしくて、私たちは互いの熱にまみれていくのだった。







「遼一さん!遅刻しますよ!!」
「しょーがないでしょうが。お前があんなカオで俺を見つめて誘ってくるから」
「ええええ?」


遼一さんはニヤリと笑うと、まだ眠そうな顔をしながらもベッドから起き上がる。
私はバタバタと支度をしてキッチンへ向かった。


「早く用意してくださいね!私。コーヒーいれてきますから」
「ハイハイ」


昨日はつい流されて熱い一夜を過ごしてしまったけれど、そもそも私がここに呼ばれたのって、朝早くから一緒に大東テレビに向かえるってことの他に、今日の取材の確認を二人でできるからっていう理由だったはずなのに。


(あんな風に流されて、そんな確認する時間、全然なくなっちゃったよ)


コーヒーをいれてる私の背後に気配を感じたと思ったら、遼一さんが後ろから抱きしめてきた。

いつになく、よく私に触れてくる彼にどうしたんだろうと思っていると。


「〇〇……今日はいいコでおとなしくしてろよ?」


耳元でそう囁かれる。


「どうしたんですか、遼一さん?」
「いいから。今日は……俺のそばから離れるなよ?これ、ご主人様命令だからな」
「ちょっと……っ!なんですかその命令は」
「ははっ」


そう言うと、遼一さんは私の耳たぶに優しくかじりつく。
まるで言う事を聞かせるように。



この時、彼は何を感じてたんだろう?



いつもと少しだけ違う何かを感じていたのに、気のせいだと、口にするほどではないと勝手に思い込んでいたのかもしれない。


(つづく)