【夢小説】春ノ宵ノユメ ⑦(廣瀬遼一/シンデレラ) | マドカのラズベリー☆デイズ

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【夢小説】春ノ宵ノユメ ⑦(廣瀬遼一/シンデレラ)

⑥はこちら。



「ここ、ですか....なんだかすごく素敵ですね」


益田さんの顔利きで訪れた温泉宿は、秘湯の一軒宿だった。
一本桜のあるところから車で15分ほどのところ。

その宿は豪華ではないにしても、とても落ち着いた風情ある雰囲気で、部屋の窓からは満開の山桜が目の前に見えた。

今日は一本桜を見にくる予定のお得意さんが急にキャンセルになり、私たちがかわりに楽しませてもらえることになったのだった。


「ねえ、遼一さん、今日は桜づくしですね」
「ああ.....山桜は少し色も違うな」
「こんな風にゆっくりした時間もたまにはいいですね」
「だな」


たわいもない会話をしながら、私はいつになく遼一さんのそばにずっとくっついていたい気持ちが強くて。

元気づけたいと思っているせいなのか。

それとも、いつになくそんな私に気づきながらも「仕方ないな」と苦笑しながら、それにつきあってくれている彼の優しさによけいに甘えたくなったからなのか。

どっちも、なのかもしれないけれど。

広い和室の庭側に面したところにあるソファに、私たちは二人肩を寄せ合って座っている。

遼一さんが私の肩を抱いて私はされるがままに彼にくっついたまま、触れ合ったところから伝わる互いの体温を感じている。

私たちは夕食の時間になるまでそうやって、たわいもない会話をしながら穏やかな時間を過ごしていたのだった。


温泉にゆったりと入って部屋に戻ってくると、部屋の照明がついていない。

(あれ、遼一さん、お風呂からまだ帰ってきてないのかな....)

部屋の中をきょろきょろと見ると、思わず視線が止まった。

さっきまで二人でいた庭側のソファに浴衣姿の遼一さんはすでに座っていて、少しだけ窓をあけたまま、タバコをくゆらしていた。

ソファのそばの間接照明だけが彼の横顔を照らしている。

その物思いに耽る横顔は何かいつもの彼じゃないみたいで、私はその場にたたずんでしばらく見とれていると。


「○○?......なにしてんだ、そんなとこで」


ふと急に私の気配に気づいた彼が、不思議そうな顔でこちらを見つめていてニヤリと笑う。


「俺にみとれてたのか?」
「そ、そんなんじゃ.....」
「ははっ、図星か。○○......こっちこいよ」


思わず赤くなった頬を手でおさえながら、彼の隣に座ると遼一さんが抱きしめてくる。

石けんの香りと彼の肌の香り、そして、今しがた燻らしていたタバコの残り香がふわっと漂ってきた。


(遼一さんの香りだ.....なんか、落ち着く)


「さて、寝るか」
「え、もうですか!?」
「なんだよ。なんか物足りなさそうな顔して。なにを想像してのか言ってみろよ?」


そういうと彼はおかしそうにニヤニヤと笑う顔を私に近づけてくる。
思わず顔を赤くして怒ったふりをした。


「想像なんてしてませんってば......もう....元気ないから心配したのに」


すると布団にごろんと横になった遼一さんが手招いている。


「○○、こっち来い、こっち来い」
「.......もー!私、ペットじゃないって言ってるのに」
「いいから、こっち来なさいって」


クスクスと笑う遼一さんの笑顔。
私は憎まれ口をたたきながらも、いそいそと彼のそばにいく。
するとすぐに遼一さんが抱きとめてくれた。


「はぁ......なんか俺も、今日は少し感傷的になっちまってるな.....」
「あ......でもそれは仕方ないですよね。だって大事な人を亡くしたんですから」
「......何だ?お前がそんな顔することないだろうが」
「だって....」


すると、優しく彼の大きな手が私の背中をなだめるようにポンポンとなでる。


「残されたものは<寂しい>、そう思うもんだ。まぁ、それは時が解決するんだろうけどな」
「遼一さんも......さみしい?」
「............何度会っていたとしても会えなくなると人間同じように思うもんだろ。毎日会ってたとしてもそう思う相手にはそうなんだろうしな。でもまぁ、じぃちゃんも辛気くさいのは嫌だろうし、俺もそんなのゴメンだわ」


そう言って私の肩にあごを乗せてつぶやく。


彼のそのぬくもりを感じながら、ふと思う。


私たちもいつかそうなるのだろうか。


この先、ずっと遼一さんと一緒にいられたとして、どちらかが先に旅立つときがくる。
この手で彼を抱きしめられなくなるときが来るのだろうと思うと、バカらしいと思いつつも胸の奥がふるえた。

(つづく)


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