【夢小説/短編】Bitter & Sweet①(遼一)
Inspired by SUGA SHIKAO "COFFEE".(YOUTUBE)
ああ、確かに悪かったと思う。
俺も徹夜が続くと、つい言わなくていいことを口走ってしまう。
仕事相手にはそんなことはないが、アイツが相手だとつい....。
今回も急遽決まったアイツの出張がバレンタインと重なったことで、2/14に会うという俺たちの約束は流れてしまった。
しょうがないと聞き分けよく言えば。
『遼一さんは.....バレンタインに私と.......』
「なんだ?」
『........いえっ、な、なんでもないですっ!』
携帯越しに少し焦りながらも拗ねたような口調でアイツが言う。
おい、待てよ。
そんな風に言われたら気になるだろ。
「言いたい事があるなら言いなさいよ?」
『なんでも....ないです』
「.......わかった。じゃあ、仕事頑張れよ。帰ってきたらうまいもんでも食べにいこうぜ」
『.......』
「おーい、○○サン?」
『........編集長に呼ばれたんで切りますね。また....連絡します....』
電話口の向こうで、いやにしょぼくれた声音のアイツのつぶやきが聞こえ、そして通話が切れた。
「.............ったく」
はぁ、と携帯を見つめて息を吐きだした。
またアイツは言いたい事を言わないでためこみやがった。
まぁ、今回は俺にもその原因はあるから何も言えないけど.....。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
バレンタイン当日。
俺はキッチンにいって、コーヒーメーカーからコーヒーをカップに注ぐと、一口すすって、デスクに戻る。
相も変わらず俺も締め切り前だ。
数日前の元気のないアイツの声がまだ耳に残ってる。
『また....連絡します....』
結局あの後、アイツからは電話もなく、昨日メールが一通、事務的なものがきただけだった。
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from:○○
sub:出張の予定
遼一さん、お疲れさまです。
2/14の出張、帰りは最終の
新幹線で戻る予定です。
落ち着いたらまたメールしますね。
お仕事頑張って下さい。
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それは、恋人へ向けて、ではなく、担当者としての<取り繕った感>で上塗りされたみたいなものだった。
だから、少し心配になってしまう。
取り繕わないといられないほど、不安になってるのか?
なぁ、お前は自分の場所で、やりがいのある仕事を頑張ってるんだろ?
俺は......そういうお前を.......仕事を頑張ってるお前を見てるのは、嫌いじゃないんだぜ?
コーヒーをまた一口すすりながら、タバコに火をつける。
ゆっくり吸い込んで煙を吐きながら考えるのはアイツのことばかり。
アイツがしょぼくれたのは、やっぱりバレンタインが彼女にとっては特別だからだろう。
俺への気持ちを形にしたいって思ってくれたんだよな?そうだろう?
バレンタインに俺へのチョコレートを、アイツがすごく楽しそうに準備してくれてるような気配はなんとなく感じてた。
10日くらい前からやたら俺の味の好みを確認してきたり、レシピ本を読んでケーキ作りの研究しているらしい事も。
すごく、楽しみにしてくれてたんだよな。
それを思うと、こっちまでため息をついてしまう。
パソコンを立ち上げても、デスクに肘をついてみても、頭に浮かぶのはアイツの顔ばかりで、さっきから俺がやってることといえば、タバコを吸う事とコーヒーをすする事だけじゃないか。
ああ、それからため息をつくこともだな。
「ったく、なにしてんだか」
全然原稿なんか進みやしない。
俺は髪をかきむしると、タバコを消して、コーヒーを飲み干した。
気になるなら行動すればいい。
それだけのことだ。
「よし、じゃあお迎えにあがるとするか.....」
俺は書き上がらない原稿は無視する事にして、アイツを東京駅まで迎えに行く事にした。
(つづく)
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