【夢小説】夕立ちの中でキミは①(影山未来/シンデレラ) | マドカのラズベリー☆デイズ

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【夢小説】夕立ちの中でキミは①(影山未来/シンデレラ)

Inspired by スガシカオ "夕立ち"
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<僕に堕ちてしまえばいいのに.....

そしたら僕の腕の中に閉じ込めて一生離す気なんてない

僕は君を甘やかして、甘やかしすぎるほど甘やかしたいんだ

ねぇ、どうしてかわかる?>





「夕立ちの中でキミは」(影山未来)




いつも思ってたんだ。

キミは好きな人の前ですごく嬉しそうな顔をするくせに、時にものすごく寂しそうな、なんともいえない顔もする。


今日だってそうだ。


今日は皐月さんが途中から仕事でいなくなったから寂しそうな顔をしていたんだろうけど、それだけじゃない。

なぜかいつだってキミは不安そうな顔をその後にしてる。

皐月さんは気付いてないの.....?
そんなキミのこと。



二人を見てるといつもイライラする。



これでまだ、お互いの気持ちを告白してないだなんて。
信じられないよ。

そのくせ、あんな風に二人で見つめ合ったりして、一体どういうつもりなの?

彼女の皐月さんに見せる笑顔を見る度.....僕の心の中はどす黒く変色していくような気がする。

彼女のきれいで大好きな笑顔を見る度、どうしてそれが自分に向けられていないモノなのか......。

今までこんなに誰かに執着したことなんてなかった。



だからその黒い想いがどれだけ深く自分に突き刺さってるかなんて、その時僕は知らなかったんだ。







「○○ちゃん!どしたの?なんか、元気なくない?」

「あれっ、未来くん、今来たの?」


○○はパッと表情を変えて未来に笑いかける。
VIPルームの入口で戸惑うような瞳で佇んでいた彼女は、今までのネガティブな感情を何もなかったかのようにその表情を消す。


「まあね。で、なんかあった?」

「ああ、今日は皐月さんの取材も兼ねて、インタビューして、それから....」

「.......もしかして予定変更されちゃった?」


消したはずの表情も、彼を想うとすぐに顔に出てしまうほど彼女は素直で。
そんな○○を見ていると、未来はついやんわりとした微笑みで見つめてしまう。

年上なのに、どうしたってカワイらしくみえてしまうから。


「さっき、皐月さんが出て行くのをチラっと見たから、もしかしてって思って」

「あ、うん。急ぎの仕事が入ったって」


仕事なんだからしょうがない、と自分に言い聞かせてるんだろうか。
未来は彼女を観察しながら、さりげなく言ってみた。


「ねぇ、○○ちゃん.....この後の予定ってある?」

「この後?編集部に戻って、とりあえず今日の記事まとめようかなって思ってるけど」

「それさ、明日にして、今からの時間を僕にくれない?」

「え?」


○○は驚いて未来を見つめる。
するとニッコリ笑って彼は言った。


「気分転換にさ、つきあってよ」


そう言うと○○の肩を抱いて、出口へ向う。
驚いていた○○だったけれど、未来のその屈託ない笑顔を見ていたら自然と笑っていた。


「いいよね!?まだ日が落ちるまでに時間があるから、なんだかサボッてるみたいだけどさ、人間はオンオフの切り替えが大事なんだよね」

「オンオフ?」

「うん、○○ちゃんは根詰めすぎるタイプだから,特にそうだよ?」

「で、でも.....」

「今日は僕に付き合わなきゃダメなんだからね」


そういって未来は笑いながらウインクをする。

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「ねぇ、未来君、どこに行くの?」
「まだ、内緒だよ?」


タクシーで移動して車が止まった先は......


「日の出桟橋!?」

「そう、今からほんの少しだけ船の旅に出かけるよ!海から東京の街を見てみない?」


そう言うと未来はチケットを買って、○○の手を握って、船へと駆け出した。
そんな未来の後についていく○○も、かすかに香る海の香りに少しワクワウしていたのだった。







「水上バス乗るの、初めてだよ.....そうだよね、東京って川が多いからこういう交通手段もあったんだった.....」

「でしょ?たまには違ったとこから見る風景もいいもんだよ」


水上バスに乗り込んだ○○と未来は外のデッキに座って、出発の時を待っている。

座っていても、水の上に停泊している船ということもあり、ゆらゆら揺れていて、それがまた非日常的なかんじがしていた。

そしてそこに飛び交ういろいろな言葉。

聞き覚えのある言語、知らない言葉、関西弁や色々な言葉がそこにはミックスされていて、○○はついそんな風景をキョロキョロしながら見てしまう。

そしてその姿を見て、未来は楽し気に笑っていた。


「○○ちゃん、すごいキョロキョロしてる」

「だって!いろんな人がいるなぁって。観光客と一般客が混じってるんだねぇ.....こうやってみると、やっぱり東京って観光地なんだなぁって思って」

「だよね。僕、そういうとこも含めて、人と風景を船から見てるのが好きなんだ」

「よく来るの?」

「時々ね。気分変えるのにちょうどいいでしょ?」


そう言って笑う未来に,少しはにかみながら○○は言う。


「未来君」

「なぁに?」

「ありがとね.....」


ちらっと未来を見て、恥ずかしそうに目線を戻す○○を見て、未来は突然彼女をキュッと抱きしめながら頭をポンポンと叩く。


「もう~○○ちゃんはカワイイこと、すぐそうやって言うんだから~」

「きゃ...」

「でもさ、お礼を言うなら風景を見てからにして欲しいな」

「もう!未来君てば.....」


なぜ彼女を抱きしめたのかは、○○をかわいく思ったせいなのか、この二人きりのシチュエーションに浮かれた気持ちになっていたからなのか、もっと深い想いから来ているのか、その時にはその意味なんてわからなかった。


「あ、出発するみたいだよ」

「わ、み、未来君、う、動いた!」

「ねぇ、○○ちゃん、こっち!デッキにいるんだから,もっと見やすいとこに行こうよ?」


そういって未来は笑いかけ、彼女も笑顔で立ち上がった。


水上バスはゆらっと動き始める。その途端、風が二人を包む。
夏の終わり、まだ少し蒸暑いこの時期に涼しい風は心地良くて。


日の出桟橋を出発した船はまだ夕暮れの東京湾を進む。

それでも海から見るビル達は夕暮れの光にキラキラと輝いていて、風を感じながらそれを見るのはとても気分がいいと、○○は感じていた。


○○はただ、今だけは未来に甘えてしまってもいいのか、少しだけ躊躇っていたけれど。


(でもこういう時、未来くんてカンがいいから、甘えさせてくれちゃうんだよね.....)


言い訳だと思っても、今は甘えさせてくれるこの空気が心地良くて、○○は未来のそばに寄り添う。


「ん?どうしたの?○○ちゃん?」


不思議そうな顔をして振り向いた彼から香ってくるのは柑橘系の爽やかな香り。

○○は少しだけその香りと、すぐそばにある体温がもたらす安心感を味わう。


「顔、赤いよ.....」
「え?」


未来が少し近づいた気がした。
ふ、と顔をあげると、真剣な顔で○○を見下ろす瞳とぶつかる。


未来のその表情からは何も読み取る事ができなくて、でもなぜだか自分の心臓のドキドキいう音だけがやたらと聞こえていた。


周りにはたくさんの乗客がいるのに、なぜだか目に入らなくなっていく。
今聞こえるのは自分の心臓の音と、未来のいつもより少しだけ低い囁くような声。


「船、揺れるかもしれないから、僕につかまっても構わないよ.....」

「あ.......」


心配そうに言う未来の端正な顔を見つめる。いつもなら懐いてきそうな明るい言葉をかけてきそうなのに。

「気を遣ってもらってる」ことよりも、彼のさりげない優しさがなんだか嬉しくて、逆に甘えたい気分になってしまう。

○○は未来の服の裾をキュッと掴んでみた後、思い切って彼の腕に手をかける。
驚いた顔をして振り向いた未来が、次の瞬間、ふわっと笑ってくれたその笑顔にホッとした。


「いいよ?掴まってくれてたほうが僕も安心するから」

「未来君......」

「ん?」

「ありがとう.....」



優しくされて泣きたくなったのは夕暮れ時のオレンジ色の光のせいか。

街のビルたちがピカピカをあまりにキレイだったからなのか。

いつになく、大人っぽい未来のさりげない優しさのせいなのか。

はたまた、ただ自分が弱っていたせいなのか....



きっと、そのどれもが理由なのかもしれない。



けれど、非日常は二人をどんどん不思議な気持ちへと包み込んで行く。

二人は寄り添うようにして、しばらくそのまま船の旅を続けた。



(つづく)

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久々に未来くん。
どうしてもスガシカオの「夕立ち」を聞いてて描きたくなりました。
大好きな曲。
映像が昔から勝手に頭の中に流れて来ます。
この世界観(ま、私の妄想だけど)と歌詞の雰囲気をのせていけたら、と思ってたりします。

これは中編くらいで....短編よりは少し長め、かも。
宜しくお付き合いください(マドカ)