【夢小説】Fireworks⑤(遼一/シンデレラ) | マドカのラズベリー☆デイズ

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【夢小説】Fireworks⑤(遼一/シンデレラ)

Inspired by EXILE "Fireworks" & Skoop on somebody "線香花火"

④はこちら


それからしばらくして、遼一さんと私は女将さんにこの旅館で一番いい離れの部屋に案内してもらった。

離れの部屋はゆったりとした諏訪湖の見える、遠くにアルプスが望める清々しい眺めのいい部屋だった。
すぐそばには散歩できそうな森もあって、そこもこの旅館の敷地内だという。

森のまばゆい緑と湖の深いブルー、そして耳にするのは葉がこすれてさらさらとなる音、鳥たちの声。

夏なのに湿度も低くて、暑さと湿度から開放されて心の底から息がつけるような気がしていく。
私は窓から外を眺めながらも肩の力が抜けていくのがわかった。


「なんだか、すごく素敵なところですね....思わず深呼吸しちゃう」

「ああ、俺もここに来るとホッとするな。空気がいいし、ウルサイ締め切りもないしな」

「原稿は全部あげてこれたんですか?」

「まぁな。お前と一緒に過ごすのに邪魔なんか入らせてたまるか....」


そう言うと、窓を開けて外を眺めていた私の隣に立って、私の肩を抱き寄せた。

そして顎をくいっと持ち上げられると、あっという間にとろけるようなキスをしてくる。

息をする間も与えないくらいそれは激しくて、久しぶりのキスに体の力が抜けそうになった私は遼一さんにもたれかかるようにして立っているのがやっとだった。


「ん......」

「やっと二人きりになれたんだから、これくらいさせろよ」


私がぼうっとした顔で彼を見つめると、遼一さんはふっと笑う。

その笑顔がなんだかとても優しくて.....いつも意地の悪い事を言うくせに、時々本当に優し気な目で見る遼一さんのその笑顔に、私はいつも見惚れてしまう。

でも今さらそれを見透かされるのも恥ずかしくて、私は彼の胸に顔をうずめる。

すると遼一さんの胸の鼓動がトクントクンと聞こえてきて、無性に愛しい気持ちになった。
それにいつもの彼の香りが私を包んでいる。
いつも彼が吸うタバコの香りといつものコロンの香りが混ざった遼一さんの香り。
久しぶりに触れ合えた喜びをふつふつと感じて、私はそのまま抱きついていた。


「私、こないだ遼一さんの家に行った時、いろんな会社の担当者さん見てて思ったの。私も遼一さんとあんな風に仕事したいなって。もっともっといろんな仕事を遼一さんと一緒にしたいなって。お互いを高め合えるような、そんな仕事.....」


締め切りを全部終わらせて来たという遼一さんに、こないだ見たやりとりの時に思ったことをポツリと口をついてでる。
すると、頭の上でクッと笑う気配がした。


「なに、お前、そんなこと考えてたの.....やっぱり○○は世界が砂糖菓子でできてる発想からまだ抜け出してねーな」

「なんですか、それ」

「俺があいつらと関係性を良くしてるのは、お互いそのほうがスムーズに仕事しやすいからに決まってるだろ」

「すごく気づかってたと思うんだけどなぁ...」

「お前は本当におめでたいやつだな」

そういってまた彼はクッと笑う。

それでも私は遼一さんがすごく優しい人だというのは知ってる。この世界で生きていくのは大変なことだから。

昔、遼一さんが小説だけで食べていけない頃、出版社で少し働いていたと言ってた。

その時もきっとたくさんの編集者を見て来て、大変だった事も多かったんだと思う。

結果的に自分がスムーズに仕事ができるから、と彼は言うかもしれない。

けれど、そのやり方は決して担当者に押し付けるようなものではなくて、遼一さんも担当編集も、そしてその後に仕事をする人も含めて、すべてがウィンウィンでいられるように動いているのがわかるから。

きっと彼は認めやしないだろうけれど。そういう人だから。

人の痛みを知っている人、だと思うのだ。




「遼一さん、お茶でも飲みますか?さっき女将さんに『お茶は私がやりますから』ってお断りしちゃったんです。だから私いれますよ?」


私は彼の胸に埋めていた顔をあげて言う。


「そうだな。お茶でも飲んで、そこらへん散歩するか?それとも風呂に入るか?」

「お散歩もいいですね!」

「今のうちだけだぞ、この周りがこんなに静かで気持ちいいのは」

「え?」

「あと3日するとここの花火大会があるから、観光客が押し寄せてくるはずだ」

「花火大会、ですか?」

「ああ、諏訪の花火大会は有名だからな、聞いた事ないか?」

「ない、です....」


(もしかして、前にカジノのみんなと見に行けなかった神宮の花火大会の埋め合わせって考えてくれてたのかな?)

私が想いを廻らせていると、突然、部屋のドアが開いた。


「遼ちゃん、いるー?」


(え?だ、誰?!)

ドアを見ると、背のすらーっとした細身で中性的な顔をした男性が顔を出した。
少し色素が明るめの長めの髪を後ろに束ねて、ラフなジーンズにラフなシャツを着ている。
見た感じ、サラリーマンぽくはないみたい。人畜無害な笑顔を振りまいていて、一体何の仕事してる人なんだろうと考え込んでしまう雰囲気だった。

すると、その男性は抱き合ったままの私達を見つけると、私の顔を見てにこにこしながら近寄って来た。

「なんだー、ラブラブなとこ、ごめんね?あ、遼ちゃん!いるなら返事してくれよ」

その男性は遼一さんを見つけると、さらに満面の笑みを浮かべた。

けれど。

遼一さんは笑ってないどころか、眉間にしわがよっていて.....不機嫌というより、怒ってる様子だった。


「夏、お前、いきなり入ってくんな!一体、何の用だよ?」
「え.....?」


そこにいたのは、この旅館の一人息子であり、遼一さんと子供の頃遊んでいたと言う「夏」という人だった。

(つづく)

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