Eyes on me⑤(シンデレラ・國府田千早) | マドカのラズベリー☆デイズ

マドカのラズベリー☆デイズ

声フェチで乙女ゲー好きなヒトのつれづれメモブログ。
乙女ゲーの妄想小説、夢小説書いてます。コメ、レス歓迎!

【夢小説/眠らぬ街のシンデレラ】Eyes on me⑤(國府田千早)
inspired by Superfly「Eyes on me」
_____________


翌朝、風子がコーヒーを作りながら私に話しかける。


「ねえ、○○、國府田先生、悩んでたよー?」


結局、ちゃんと千早さんが処方してくれた薬を飲んで寝たら熱は下がっていた。
そして翌日出社するために慌ただしく用意をしている私を見ながら彼女は続ける。


「○○が最近よそよそしいって。僕に言えない事があるのかってさ」
「う.....」
「どうせあんたのことだから、また余計な気を回してるんでしょ?だめだよー?國府田先生にちゃんと甘えなきゃ」


こういう風に言える風子が少し羨ましかった。
そう、自分でもわかっている。それなのに私は........


「黙ってるってことは案の定そういうことか」


ため息まじりに風子が言う。


「全く何考えてんだか。あの先生なんて甘え甲斐あるじゃないの?」
「う、ん....私、いろいろ考えすぎちゃって.....素直になれないっていうか」
「なにそれ。○○は國府田先生が好きなんでしょ?だったらその胸にどーんと飛び込んで甘えればいいだけじゃないの。あんないい男に甘えなくて誰に甘えんのよ??いいとこだけ見せたってしょーがないじゃん」


風子の言う事はいちいち最もなのだ。
本当にいやになる。

甘えられないのは、きっと、嫌われたくないから。
そう。勝手に飽きられるのが怖いと思っているのだ。私は。


「都筑先生くらい美人で頭もいい人なら、千早さんの隣にいてもすごくお似合いって気がするんだよね....」
「○○.....でも、実際、國府田先生の隣にいるのは○○だよ?釣り合ってるとかそんなの関係ないよ。○○だって、すごく頑張ってる立派な編集者じゃない!胸はっていいんだよ?」
「風子.....ありがと」


私は彼の隣にいてもいいと思える「何か」のカタチが欲しいのかな?

でもそんなの....きっと際限などない。
どこまでいっても、自分が納得しなければ、どんなにきれいであっても、どんなに仕事ができて肩書きがあっても自信なんてつかない。

頭ではわかっているのに。
頭でわかってもどうにもならないことも知っている。
だから都筑先生の事だって、彼女は彼女だと頭では理解してるのに、まだ胸のあたりがモヤモヤしてるのだ。

ふと廣瀬さんが言った言葉を思い出す。

「頭で考えずに、ハートで感じる事」

思い出してみたものの、答えがでなくて、思わずため息をついた。

______

千早さんもあれから忙しいらしく、電話もあまりできずにいた。

私も月刊誌の他に増刊号の担当を任されて、締め切りばかりでバタバタしていた。
忙しさで寂しさを紛らわせることも初めはできていたけれど、それも息切れしてくると集中出来ない。


千早さんの声が聞きたいな......そう思っても遠慮してかけずにいて、ある日、限界になりそうな頃、私はメールを打った。

<千早さん、忙しいと思うけれど、声を聞かせてもらえますか?よければこちらから電話します>

こんな事書いて邪魔にならないかな.....?
って、私ってば恋人に許可求めるメールなんて出してしまってる。

はぁ、なにやってんだか........。
気が重い。半ば返事が来る事は期待してなかった。
本当に忙しければ携帯なんか見てる暇なんてないだろうし。
それでもいいやなんて思ってた。


すると、ボーッとしてる私を隣の編集者がつついている。
ハッと目を上げると、編集長が私を呼んでいた。


「お前.....なんか疲れてないか?ボーッとして.....病み上がりは休める時は休んどけ。このところ、誤字脱字、多いぞ」
「す、すいません....ちょっと一息いれてきます」


私は編集長とまわりに何ともなしに言って、休憩することにした。

_______


(はぁ......しっかりしなきゃいけないのに.....何やってんだろう私)


休憩のために屋上へ行って外の空気を吸う。
風に吹かれながら星を見てたらなんだか涙がにじんだ。
仕事もプライベートもどっちもダメダメなんて.....情けない。

こんなとき、余計に彼が恋しくなる。
逃げる事だとわかっていても。


(やっぱり会いたい....どうしよう、すごく会いたくてたまらなくなってきちゃった。千早さん、どこにいるの?)


私って本当にバカだ。なんなの、このタイミングで。
自分から遠慮してたくせに。
千早さんは歩み寄ってくれてたのに。
なんで自分から遠ざかっていたのだろう。

結局、私は千早さんが好きで好きで、しょうがないのは変わりがなくて。

ふさわしいかそうじゃないかなんて、誰が決めるものでもない。
周りからどう見られるとか、誰が噂しているとか、そんなものは私と千早さんがお互いに思い合っていれば、問題になるはずはなかった。

それなのに。

自分たちの気持ちの他に大事なものなんてないはずなのに。
一番大事にしなくちゃいけないものを、私は大事にしなかったんだ。

「う......」

情けなくなって涙がポロッと出た。
こんなとこで泣くなんて。
みじめな気持ちを引きずっていると、携帯が鳴る。

ーーーあ、千早さん.....

「.....」

私はまたためらってしまった。
でも勇気を出して震える指で携帯のボタンを押す。

「○○?」

彼の声を聞いた途端、
溢れるように涙が後から後から出て来てとまらない。
一言も発しない私にいぶかしげに彼はしゃべる。


「もしもし?○○だよね?....どうしたの?何かあった?」


私はかぶりを振ってかろうじて答えた。


「な、何もないです。ただ声が聞きたかっただけで......ワガママ言ってごめんなさい」
「泣いてるの?」
「ち、違います。そんなんじゃなくて.....」


でもその後が続かない。
千早さんは急に声色を変えて言った。


「今、会社だね?30分でそっちいくから、会社の前で待ってて。ちゃんと待ってるんだよ?」


有無を言わせない口調。
私は緊張しながらも実はホッとしていた。

(つづく)