東海道戦争・幻想の未来ー筒井康隆全集1ー
筒井康隆
昭和59年2月28日読了
筒井康隆は、やはり面白い。小説にとって唯一の価値判断となりうるものはこの面白さであって、他のものではない。なんと言っても、読書は娯楽なのだから、面白くもないものを苦労して読むのはおかしなものだ。
「お助け」
時間を止めた世界で自分だけが自由に動き回れたら……という願望(欲望)の悲劇を描いた作品。
「廃墟」
核戦争後の滅びゆく一群れの男たちの悲劇を描く。
「怪物たちの夜」
核爆発以降の犯罪捜査を描いた作品。四本の腕を持った男を刑事は如何にして捕まえたか?
「パチンコ必勝原理」
ノーベル物理学賞受賞の湯上博士がある日下町のパチンコ店にやって来て……。
「お紺昇天」
愛し合う車と人間の物語。
「うるさがた」
辺境の観測所に勤める俺は、ある日、地球で起こった暴動によって宇宙船が破壊され、さらに15年勤めることになった。ところが、一緒にいるアメリカンというロボットがうるさいやつで……。
「幻想の未来」
核戦争後の地球。さまざまな新種が環境に適合すべく生まれ、結局適合しきれずに滅んでゆく。滅亡は、やがて有機生命体に代わる単一の意識を持った惑星の誕生を告げるのであった。オムニバス風七つの物語。
最近読んだいくつかの作品(『銀齢の果て 』『わたしのグランパ 』)は、ちょっとね、という感じでしたが、やはり初期は違います。
結局、何だかだ言っても、みんな書きたいことが無くなっちゃうんですよね。
作家の引き際。
難しいですね。
そしてもうひとつ。
核戦争を扱った作品が多かったこと。
米ソ冷戦時代で、切実な問題だったのですね。
これは今も、もっと書かれてよいテーマだと思うのですが。