図書館でずいぶん前に予約していた 湊かなえくんの『告白』。


ようやく順番が回って来、読むことができました。


前評判どおりの、今年の本屋大賞にふさわしい力作でした。

告白/湊 かなえ
¥1,470
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一応長編に分類しましたが、それぞれが独立した短編としても読めないことはありません。


それもそのはず、第1章「聖職者」は小説推理新人賞受賞作です。


それに繋げる形で視点を変えた5つの章を加えたものが本書『告白』です。




物語は、中学1年の3学期の終業式の日、担任の教師の独白で幕を開けます。


今日で私は教師を辞めます。

なぜなら、私の娘がこの学校で死んだから。

いいえ、事故ではなく、このクラスの生徒に殺されたのだから。

娘は、電気で感電させられ意識を失くした後、プールに投げ込まれたのです。

犯人の二人が今飲み干した牛乳には、娘の父親(彼はHIV感染者)の血液を入れておきました。

血液検査を受け、感染していることが分かったら、命の重さと大切さを実感し、娘にしたことを反省し謝罪してくれることを望みます。



続く第2章では、クラスの委員長が担任の教師に宛てた手紙、というスタイルです。


春休みが終わり2年生になりましたが、先生の娘をプールに投げ込んだ直くんは登校して来ません。

新しい担任の教師と私とで家庭訪問を続けていますが、引きこもりの状態はだんだん悪化しているようです。

もう一人の犯人修哉くんは、クラスのみんなから陰湿ないじめを受けています。

修哉くんに同情していると思われた私も同じ目に遭いました。

先生、私は知っています、終業式の日に二人が飲んだ牛乳に血液など混入していなかったことを。

なのに、なぜ……、1学期の終業式の日、新しい担任は熱血教師を気取って直くんの家の前で、大声で学校に来るようにと叫び、その晩、直くんはお母さんを殺しました。



第3章は犯人の一人直樹の母親の日記。


日記の最後は、母が息子直樹を殺そうと決意したところで終っています。



第4章は直哉の回想。


中学生になつてから僕はツイてない。

だが、そんな僕に修哉くんが近づいてきて、担任の教師の娘を感電させて驚かせよう、ということになった。

ところが、驚かすだけのはずが、死んじゃったんだ。

修哉くんはどうやらはじめから殺すつもりだったらしく、「みんなに言いふらせ」と言う。

でも僕は、これを事故として片づけることに決めた。

担任の娘をプールに運んだ。

娘が目を開けたが、構わずプールに入れた。

やった! 修哉は殺人に失敗したが、僕は成功したんだ!


第5章は主犯の修哉の遺書。


学校の体育館の演台に爆弾をしかけた。

明日の始業式で自分はこれを爆破させて死ぬ。

これまで自分は、自分が事件を起こせば、自分を捨てて出て行った母が、帰って来てくれると信じていた。

だが、間抜けな同級生のせいで計画は失敗した。

そしてね母は再婚していた。

もうすぐ子供も生まれるという。

だから自分は、自分を捨てた母へ復讐するため、大勢の他人を巻き添えに自殺する!


最終章第6章は担任の教師から直哉への電話。


あなたはすぐれた才能を持ちながらそれを生かせていません。

残念ながら、1年生の終業式で行った私の復讐は失敗しました。

娘の父親が直前で気付き、牛乳をすり替えていたのです。

でも、直樹くんについては、自分の母親を殺すところまで追い詰められていたのですから、復讐果たせたと思います。

残るは、修哉くん、あなたです。

あなたが学校に仕掛けた爆弾は、私がはずして別の場所に設置しておきました。

私はあなたが爆弾のスイッチを押さないことを希望していましたが、あなたは押してしまいました。

すごい威力でしたよ。

どこに設置したか教えてあげましょうか。

それは、あなたの母親の研究室です。


面白かったですよ。

時間を忘れて一気読みしちゃいました。

ぜひ読んでみてください。


評価 ☆☆☆☆



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