あちん (幽ブックス)/雀野日名子
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メディアファクトリー 2008年5月刊





第2回「幽」怪談文学賞短編部門大賞受賞作です。


舞台は「F市」となっていますが、著者雀野日名子くんの地元福井の県庁所在地「福井市」ですね。


お堀に囲まれた福井城址に立つ福井県庁。

福井市は、昭和二十年、戦災に焼かれました。

その際、人々は炎から逃れようとお堀に飛び込み、大勢の人が亡くなりました。


ここまでは史実です。


主人公は、県庁の「みらい町づくり室」に勤務する公務員です。

雨になると、お堀からは「オホリノテ」なる藻草が歩道に這い出してきます。

「オホリノテ」は、お堀の底に沈んだままの人々が、藻草に姿を変え這い上がろうとしているのだ、と言われています。

そして、通りかかった人の影を喰うのだとも。

ある雨の日、主人公は、顔の半分が潰れた片腕の鉄五郎とぶつかって転び、「オホリノテ」を踏みつけてしまいます。

主人公はそのとき鉄五郎から、「あちん、あちん!」と呼びかけられます。

「あちん」とは何を意味する言葉なのでしょうか、そしてまた鉄五郎とはいったい何者なのでしょうか……。


どうでしょう、怖そうですか?


本書にはこの表題作の他に、「タブノキ」「2時19分」「迷走」「もうすぐ私はいなくなる」と何れも福井を舞台にした怪談4編が収められています。


ばくの地元を舞台にしてますので、「O島は雄島だな」とか「福井駅には自動改札機はねぇよ」と突っ込みを入れながら楽しめました。


でも残念なことに、怪談なのにそれほど怖くなかったんですよね。



評価 ☆☆



もう少しで☆3つというところですかね。



雀野日名子くんて他にも著書あったんですね。 ここ