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前エントリで官邸がまとめた「これまでのアベノミクスの成果について」という資料をご紹介したが、この中に雇用の改善をアピールする資料がある。まずは、そのページを見ていただきたい。
2月の完全失業率は3.6%、有効求人倍率1.05倍と改善している。この結果かなりの職種で人手不足が目立つ状況となっている。特に昨年の有効求人倍率の伸びに比べて雇用者数の伸びが大きいのは、景気の回復に伴い、求人とともに求職者のほうも増えていることを示している。
それを示唆しているのが昨年来の女性労働参加率の急増(右側のグラフ)だが、おそらく自分にできる仕事があるのならパートにでも出てみようと考える女性が増えたのだ。そこで、本当にそうなのかを確認するために、男女別、世代別に最近の非正規雇用の増減を調べてみた。
このグラフは、一昨年から昨年にかけて非正規雇用者(年平均)がどれだけ増減したかを見ている。
特に増加しているのが65歳以上の男性だが、この世代で働いている人はその前の世代よりぐんと減っているので、増加率でみても18.4%(全体は6.8%)と突出している。
65歳を過ぎても働く人が増えたのはおそらく非正規雇用に移行する団塊世代が多いからだが、これは景気が回復してきたからで、不景気ならそのまま再雇用などしないだろう。老人がいつまでも居座るのは良くない気もするが、これからの人材不足のお役に立てるのならそれはそれでいいことだ。
次に目立つのが、35歳以上の世代の女性の増加だ。景気が良くなって求人が増え、出来れば働きたいと思っていた人が職についたのだろうか。そして、学生アルバイトが増えている。これも、人手不足が顕著になってきた外食産業などのサービス業を中心に求人が増えたからだろう。
つまり、安倍政権がこれからの労働力不足の切り札として期待している、若者、女性、高齢者が非正規雇用の形で参加してきたのである。学生アルバイトやパート勤務、高齢者の再雇用の賃金は一般的に低い。そしてこれが、景気が回復し始めているのになかなか平均の賃金が増えない大きな原因だ。
アベノミクス第一の矢は狙い通りはたらき、消費者物価や地価は下落から緩やかな上昇に転じた。それに伴い実質賃金は下がっているが、それは、非正規雇用の増加が全体の平均値である名目賃金の上昇を吸収しているからとも言えるだろう。個々の賃金が下がっているわけではないのだ。
そうしたなか、やっと賃上げの春になり、基本給とボーナスが上がり始めている。
消費増税は余計だったが、それ以外はアベノミクスが狙ったシナリオ通りではないか。景気回復時に仕事が忙しくなれば残業で対応したり短期のアルバイトを雇ったりする。そして、それが続きそうなら長期のパートやアルバイトを雇い、人材の取り合いが始まれは賃金を上げ正社員への取り込みを図る。
それは、経営者なら当たり前のやり方であり、景気回復過程でこういうプロセスをたどることはあらかじめ予想できた。新たに仕事に就く人が増える一方で平均の賃金が下がることは当然であり、別に経営者が賃下げに走っているわけではないのである。
実質賃金が下がったとしてアベノミクスを厳しく批判する向きがあるが、政府が賃金を決めるわけでもないのにそれを避ける方法があるのだろうか。上記で述べたように、非正規雇用の増加は働く意思のある人の増加であり、それはアベノミクスによる景気回復がもたらしたものだ。
また、デフレから脱却するということは緩やかなインフレになるということで、実質賃金の低下はすでにその過程に到達しつつあることを示している。そして、現実に賃金が上がりはじめ、消費増税後の「気分」もそう悪くない。その気分に冷や水を浴びせても決して景気のためにはならないのである。
(以上)
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