クリスマスを知らない青春@東京登戸 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

12月25日(土)戦争体験&クリスマスライブ@東京

登戸にあるオープンハウスは、オーナーのこっへぇ、書道家でおかまの会長(英利)、料理の達人ケイなどが住んでいるシェアハウスである。日当たりのいい3階建てで、部外者も泊めてもらうことができるという。
今日のライブの主催者キミコさんはいつもすばらしいライブを企画してくれるが、今回もすごい。
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スペシャルゲストはクリスマスのなかった時代に青春を過ごした82歳の猪熊得郎さんをむかえる。それにくわえて広島で被爆した79歳の詩人橋爪文(はしづめぶん)さんまできてくれるとは最高のクリスマスだ。
まずは猪熊さんの話の前にライブの前半がはじまる。
オープニングアクトはSage(セージ) カリンバの演奏だ。カリンバはヤシや木製の箱に鉄棒の鍵盤をつけ、親指ではじく、アフリカ発祥の楽器である。Sageは独学でカリンバを制作し、奏法を習得したすばらしいミュージシャンだ。
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やさしい音色がシャボン玉のように散らばり、心に染みわたっていく。
ライブではSageがカホンをたたいてくれる。
オレは今回、特別な選曲をした。テーマは戦争と命である。
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1、 Merry christmas children
2、 In the name of love
3、 WAR
4、 生きてればいいさ
5、 背中
6、 老人と星

「Merry christmas children」(ミニアルバム「水の惑星 癒しの森」)は、オリジナルのクリスマスソングだ。
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「Merry christmas children」

天使の羽毛が夜空を舞い
真白き産着で街をおおうとき
ひとひらの雪をつかまえると
ひとしずくの涙を残し消えていく
Merry christmas
Merry christmas
貧しき者
孤独の宝石かかえる者
Merry christmas
Merry christmas
神のためじゃなく
愛しき命に
祝福あれ

天国も地獄もこの世にある
君の生きる今がどんなつらくても
ひとかけらの夢が降りつもってく
ひとつぶの願いが世界を変えてく
Merry christmas
Merry christmas
けがれし者
罪という学びを選びし者
Merry christmas
Merry christmas
神のためじゃなく
愛しき命に
祝福あれ

星々の光が君にとどく
消えていった者も君を守っている
ひとりひとりが胸に火をいだいて
愛する者たちへ受けわたしていく
Merry christmas
Merry christmas
子供たちよ
恐れと希望を受けつぐ者
Merry christmas
Merry christmas
神のためじゃなく
愛しき命に
祝福あれ
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1928年(昭和3年)東京都日本橋生まれ、82歳の猪熊さんはかくしゃくとしていて、ユーモアたっぷりな輪芸の達人である。
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「戦争前の東京はモボ(モダンボーイ)とモガ(モダンガール)にあふれていました。渋谷から銀座までさまざまな店にはサンタのかっこうをした店員が楽しそうに働いていたんです」
これには一同驚きである。現代よりも戦前の日本のほうがクリスマスが盛んだったなんて知らなかった。
「戦争がはじまり、楽しいクリスマスは一掃されました。政治家やマスコミが反西洋を叫びはじめます。ほしがりません勝つまでは、お国のために贅沢は敵だなどと、おしゃれは非国民あつかいされ、あらゆる喜びが禁止されたのです」
徴兵は20歳からだったので、猪熊さんは親の反対を押し切り15歳の少年兵として志願しました。前線に赴いた少年兵は42万人もいたという。
「天皇のため、お国のためと理想に燃えて満州へ渡ったのですが、この目で見た関東軍の現実は理想とほど遠いものだったのです。わたしにとってはじめての戦闘体験で、同級生をはじめ11名の友が死にました。戦争とは殺し合い以外の何者でもなかったのです。敗戦による混乱で反乱や略奪、仲間同士の殺し合いなどが起こります」
関東軍兵士60万人は極寒のシベリアに送られ捕虜生活を送る。
「わたしは17歳の誕生日にアムール川をわたり、シベリアで強制労働を強いられます。零下30度から40度の中、一日一回ひとかけらのパンと塩だけのスープ。シワキ収容所では6人に一人が栄養失調による病気を併発して死んでいきました。
地獄はそれだけではありません。
仲間が死ぬことは自分の食料が増えると喜ぶのです。仲間の死体からは衣服からなにからはぎとられ、ロシア人に売り一切れのパンに変える。人間の誇りさえも剥奪されるのです」
命からがら帰国した猪熊さんを待っていたものは、さらに悲惨な現実だった。
18歳の兄は人間魚雷「回天」によって沖縄出撃途次戦死し、父親は交通事故で死んでいた。「シベリア帰り」というだけで職につけず、それをひた隠しにしてさまざまな職業を転々とした。
「若者たちの青春が、戦争のためでなく、
平和のための豊かで幸せな青春であることを心から願って、
一日でも長く語り続けます」
猪熊さんの話が終わったとき、圧倒的な感動がみんなをつつんでいた。それは「感動」と呼べばいいのかわからない。悲惨さも生きる力も幸福もすべてが巨大なかたまりとなって臓腑の底に打ち込まれたような感覚だった。
それは遠い過去の話ではなく、今同じ時代を生きている人の経験なのだ。
「今は平和だから幸せだ」というのではなく、オレたちが何気なく過ごした今日は、昨日を生きたくても生きられなかった人々の命のうえに築かれている。
その命をせいいっぱい生きているのか?
これから生まれてくる命を生かす明日をつくっていけるのか?
後半は命そのものがテーマだ。

7、 マーマレードスカイ(after HIROSHIMA)
8、 ぬちどぅ宝
9、 存在の歌
10、 絆
11、 家族
12、 ありがとう(アンコール)
13、 空の約束(アンコール)

広島のことを歌った「マーマレードスカイ」を14歳で被爆した79歳の文さんがじっと目を閉じながら聴いてくれた。文さんとのオペラが来年実現しそうだ。
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「ぬちどぅ宝」ではアメリカで平和運動をしていたマミが美しい舞を舞ってくれる。
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「ありがとう」のまえにアツシをステージで紹介する。
「アツシは4本指ということで差別をくぐってきました。しかし今日からアツシは1000人と4本指の握手というプロジェクトを開始します」
アツシは会場にいる30人と握手をした。
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アツシの4本指よって、ひとりひとりがちがうことをリスペクトし、手をつないでいく。アツシの見えない5本目の指が未来を指し示してくれたのだ。
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ライブも終わり、クリスマスパーティーがはじまる。ケイちゃんの料理もすごいが、りんごでバラをあしらった手作りもケーキも芸術品である。
New 天の邪鬼日記-101225kohhei.jpgケイとこっへぃ

Sageさんの紡ぎだすカリンバの音色にキャンドルの焔がゆれ、世代や国籍を超えた人々が語り合うすばらしいクリスマスだった。
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「みんなからAKIRAさんへクリスマスプレゼントでーす!」
えっ、マジ? これチョコレートかな。包装紙を開けると、名前書道家であるオカマの会長(英和)が書いたオレの名前がアクリルケースに飾られていた。
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暗い世界が見えたなら
僕はすかさず駆けつけるんだ
そしてこの手に持っている
希望に満ちた光を取り出し
世界を明るく照らすんだ

膨大な知識を持った会長がオレの名前の由来を説明してくれる。
「明という字は『日』と『月』からできています。『日』は古くは『口』のなかに『分』という字を書き、『窓』を意味します。『月』は月明かりを意味します。
つまり『明』という字は、真っ暗な部屋に窓から月明かりをいれて明るくする、『あかるい』という意味を表します。
総じて、明という名前には、真っ暗な心や真っ暗な世界に、明るい笑顔や明るい光、道しるべを示す人という意味があります」
おおー会長のありがたきお言葉。名前に恥じぬよう精進しまっす。
ケツは貸ねーけど。
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