機甲兵団ワルキューレ ~第6話 サハド~ | 台本、雑記置場

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・機甲兵団ワルキューレ ~第6話 サハド~


~登場人物~


アイゼン=レーグ=ジーン:♂
・サハド最高司令官。
石油、エネルギー資源で台頭(たいとう)したサハドを軍事コミットに改革した
冷徹な軍拡主義者。現在は他の多数の有力コミットから警戒されている人物。
極端な軍事革命により、領地内に多くの反乱も抱えている。


リブボルト=テム:♂
・サハド軍事部門責任者。大きな戦いでは前線指揮にでることもある。
速戦を得意とし、一気にサハドの領土を広げたが鎮圧戦に苦戦する。勝ちにのれば強く、負けには
流されるわかりやすい勢いタイプ。


レイア=ナギ:♀
・サハドの新鋭機、ルナシャドウのテストパイロットの傭兵。正規パイロット達に
戦闘シュミレーター無敗という異例の成績を残しルナシャドウに搭乗。半ば私物化している。
近接戦闘と正確な操縦技術、優れた判断力と惨忍さを持つ。その技術を買われサハドに
雇われた。自信家だが、パイロットとしては天才。


ランド=キャット:不問
・アイゼンの秘書官。声や外見からは年齢、性別の判別がむずかしく、実際にその性別を
知っている者も極僅か。秘書官としての任務を淡々とこなし、感情を表にださない。
命令されれば自身も出撃するらしいが、腕前は未知数。


・用語解説・
ファントム:人型の戦闘兵器。武装を変えることで様々な戦場に高い適応性を持つ。
コミット:国に代わり世界を動かすようになった、企業、経済、資源を多く持つ様々な集団。
  それぞれの資本を武器に領土を日夜奪い合う。
ワルキューレ:コミットに支配された抵抗組織「ラグナロク」のファントムの機体コード名。


~劇中表記~


アイゼ:
リブ:
レイア:
ランド:


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


~サハド司令会議室~


アイゼ:なに!?今なんといった!リブボルト!


リブ:はっ、アイゼン閣下、ですから、その…


ランド:反乱分子殲滅(せんめつ)にだした部隊は、情報収集し帰還した索敵用車両を残し、
  全滅いたしました。


アイゼ:バカな!最新鋭のファントムを2機も出したのだぞ!?我がサハドの精鋭機2体を
  落とせるような機体が、たかが反乱分子にあるというのか!?


リブ:それは…反乱分子も、ファントムを所有しているらしいことまでは掴めたのですが…
  その情報も錯綜していて…


ランド:殲滅に出した部隊は、全員名誉の戦死か、恥辱(ちじょく)である降服を致しました
  ので、現状、敵戦力を測りきれておりません…。


アイゼ:わしの自慢の機体だぞ!変形機構も搭載した重火力ファントム「ドルドラム」に、
  電子戦初のハイパーレールガン搭載の「グロリア」だぞ!それが勝利はおろか、2機とも
  撃破されただと!?


リブ:いえ、その…ドルドラムは連絡が途絶えたままです…、グロリアは、あの…


アイゼ:あの、ではない。はっきりといわんか!


ランド:機体は武装を破壊され捕縛、パイロットも拘束された模様です。


アイゼ:なんだと!連絡が無い!?もう部隊を派遣してから3日目になるのだぞ!!
  そのうえグロリアは降服だと!?奪われたようなものではないか!


レイア:部屋の外にまでお声が響いておりますよ?司令閣下殿。あまり興奮すると、お身体に
  よろしくないんじゃないですか?


アイゼ:…レイア!貴様をこの会議室への入室を許可した覚えは無いぞ!


レイア:あらあら、冷たいお言葉ですこと。それが閣下の大声を聞きつけ胸を痛めて来た、
  忠実なる部下へのお言葉?


リブ:ええい、控えろ!レイア!何が忠実な部下だ!この傭兵風情が!


レイア:その傭兵風情に、ダブルスコアでテストに敗北した、ドルドラムのパイロット殿は
  いかがなさったのでしたか?


ランド:連絡がありません。あの方の性格からして、降服は無いでしょう。つまり…


レイア:無様に負けて死んだ…と。ふふ、あっははははは!


アイゼ:何がおかしい!?


レイア:御自慢のファントムも、無能が乗っては意味がありませんでしたね。司令閣下殿?


アイゼ:貴様…!


リブ:ええい、何用だ!我々はこれから、反発を強めてきた各コミットへの対応と、
  反乱組織への対策で忙しいのだ!邪魔をしにきたのならば、さっさと失せろ!


レイア:おやおや…閣下が先日ご所望でした、西地区のファントムを片づけてきたご報告に
  参ったというのに、冷たいお言葉ですこと。


ランド:三日前にレイアさまに出された、西地区反乱軍の鎮圧作戦のことでございますね。
  その鎮圧の報告は、軍部を通していない非公式のものですね。データにありません。


レイア:軍部なんてお堅い所は通さずに、親愛なる閣下に喜んで頂こうと、まっ先にこちらに
  直接ご報告をと思ってねぇ…。ふふ。


ランド:軍部への報告は、我が軍に所属する者の規則です、レイアさま。


リブ:そうだ!軍令違反で独房にでもぶちこんでやろうか、この端女(はしため)が!


レイア:黙りな!その端女一人が、あんたらが何か月も苦戦していた西地区の雑魚を三日で
  片づけて来てやったっていっているんだよ!確認くらい自分でしな、腰ぎんちゃくが!


リブ:お前という奴は…!


アイゼ:…急いで問い合わせろ。西地区には監視部隊を置いておいたはずだ。


ランド:はい。すぐに。通信開始、情報部より応答あり。西地区の反乱部隊、壊滅確認との事。
  バラバラになった機体の各部位は遠距離からの望遠でも目視できるそうです。
  市街地は広範囲で火災発生、まだ消火作業にも入っていません。


アイゼ:市街地で広範囲の火災?


レイア:西地区の者は敵コミットと内通していたのでしょう?ついでに燃やしてきて
  差し上げただけのことですわ。報酬は明日までに。多少の色はつけて下さるのでしょう?


リブ:市街地への攻撃は命令違反だぞ!何が追加報酬だ!軍事裁判にかけられたいのか!?


ランド:…しかしリブボルト将軍、西地区の敵部隊は確かに市街地の補給を受けねば、あんなに
  長く滞陣(たいじん)も抗戦も出来なかったはずです。


リブ:その証拠がつかめるまでは市街地には手だしならん!我がサハドが他のコミットに
  暴虐の謗り(そしり)を受けるではないか!


アイゼ:その通り。サハドは人権を尊重するコミットとして市民の目にあらねばならん。


レイア:あっはははははは!人権尊重?証拠をつかむまで?その悠長な姿勢の結果が、
  わずかファントム5機と、ハエのような戦闘機集団、蟻のような戦車部隊を潰せない
  軍事コミット・サハドの目指す姿ですか?あっはははははは…!


リブ:いい加減にせんか!レイア!!


レイア:いい加減に潰さなきゃ、なめられるんだよ、あんな雑魚の集まりは!そんなことも
  わかんないから、そこらじゅうで下らない反乱がおきるんだ。西地区の反乱から数か月、
  その間に起きた反乱の数は!?鎮圧できた数は!?


ランド:反乱、8。鎮圧は3です。いずれも、反乱組織がファントムを所有していない地区の
  鎮圧のみです。


アイゼ:むぅ…。


レイア:司令閣下殿…。軍事コミットとして台頭(たいとう)してきたサハドが、
  なぜ今更人権などとおっしゃるのです?司令閣下の軍事路線への転換のご英断は
  素晴らしかったですわ。いつの間にこんなに軍は腐抜けたのですか?


リブ:我が軍事部門をバカにするか!?レイア!


レイア:ご立派な軍事部門の、エリートパイロットの皆様で、私に勝てたパイロットは?


ランド:0です。レイア=ナギ様の実戦テストスコア、現在24-0です。


レイア:御立派な軍事部門をお持ちですのね、将軍殿?


リブ:傭兵風情が…腕が立つからといって、言いたい放題…。


アイゼ:もういい。西地区の鎮圧、御苦労であった。市街地の破壊も功績として認め
  金額の上積みはしようではないか。


リブ:閣下!?なにをバカな!?


アイゼ:しかし、虐殺をしたのはサハド軍ではない。たまたまサハド軍が雇った傭兵、
  レイア=ナギの暴走として世間には発表させてもらう。上乗せ額は契約の2倍、どうだ?


リブ:なるほど…。虐殺(ぎゃくさつ)の汚名はすべてこの者に。さすがは閣下!


レイア:く…くくく、あはははははは!きゃははははは!!虐殺!?汚名!?傭兵には
  サハド王国最高勲章よりも、輝かしき事ですわ!光栄の至りです、司令閣下殿!
  それで…。お次の仕事を頂きたいのですがねぇ?


アイゼ:お前は西地区から戻ったばかりであろう。もう次の任務を受けるというのか。


レイア:あいにくと、機体に損傷が無かったもので。ただ整備が終わるまで退屈でしてねぇ。
  退屈紛れにこうしてご報告と、次のお仕事を頂きに参った次第ですわ。


ランド:ヴァルハラ地区も自治区として対処に困っている地区でもあります、閣下。


アイゼ:ふむ…しかしあそこに大した戦力はいまい?


ランド:はい。自治区自体にはいないでしょう。ですが、ドルドラムとグロリアが撃破された
  のは、ヴァルハラ地区の奥にある洞窟の反乱組織です。そして、その前に索敵特化機
  「シグナル」が撃墜された場所は、自治区前の砂漠地帯。つながりがある可能性は
  極めて高いです。


リブ:つまり、自治区をまずは破壊しておく、ということか?


ランド:はい。そして高い可能性で、自治区が攻撃をされている事を知れば、敵はドルドラムと

  グロリアを撃破した部隊が援軍を出して来るかと思われます。


アイゼ:ほう。それはなぜだ?ランド。


ランド:地形をご覧ください。ヴァルハラ地区は大きく開けていますが、今回殲滅部隊が
  全滅した場所はヴァルハラ地区南東、せまく入り組んだ場所です。万が一自治区を制圧
  されれば、あの地域は袋の鼠です。


アイゼ:なるほどな…あそこを抑えておく事は、今回の反乱分子の行動。特に反攻行動を制限す
  ることにもなりうるということか。


リブ:し、しかし閣下!あそこもまだ反乱組織である証拠は何一つ…


レイア:まぁだそんなこと言ってるのかい?この無能は。


リブ:なに!?


レイア:虐殺の称号なんて一個でも二個でも何個でも貰ってやるよ、払うものさえ払って
  くれればねぇ…。


ランド:レイアさまに出て頂ければ、自治区破壊の問題はそれで解消できるかと。その上で
  援軍の掃討をお願いするもよし、データ回収を依頼するもよし。正規軍は今は各方面の戦線に
  釘付けで動けません。


レイア:澄ました顔で言うねぇ、この子は。気にいったよ。暇潰しに可愛がってあげようか?


リブ:いい加減にせんか!レイア!…閣下。ご判断を…!


アイゼ:ランドの言うことが最上の策か…。レイア=ナギ!


レイア:はい、司令閣下殿。


アイゼ:お前にヴァルハラ自治区の破壊。ならびに援軍が現れた場合はその部隊の壊滅、
  またはデータ回収を命じる!いいな?


レイア:かしこまりました、喜んで。報酬は西地区の5倍でお受けいたしますわ。


リブ:ご、五倍だと!?


レイア:こちらの自治区の地域は、御自慢の精鋭部隊がやられた大変危険な地域なのでしょう?
  私も敬愛なるコミット、サハドのために命を賭けて任務に臨むのですから…
  少なすぎるくらいですわ?


リブ:貴様一人で、我が精鋭部隊がやられた戦地におもむくというのか!?


レイア:ええ。足手まといは結構ですわ。


リブ:ぐ…!ぬぅ…!


アイゼ:援軍が来て、それを壊滅した場合は5倍。データの回収までならば3倍。これでいいな?


レイア:御意(ぎょい)のままに。それではレイア=ナギ。出撃いたしますわ。すべてはサハドの…くく。
  親愛なるサハドのために。あーっはははははは…!


リブ:よいのですか?閣下…あんな輩(やから)に、あのような約束…。


アイゼ:たかが傭兵だ、いざとなったらファントムにのっていないときに始末しろ…。


リブ:なるほど…。かしこまりました。


ランド:…通信回線が自動で起動します。映像、モニタにでます。


レイア:閣下…そういう素敵なお話は、秘め事のようにこっそりと、淑やかにするものですわ…。
  夜這いのお誘いでしたら、いつでもよろしくてよ…?ふふ。サハドの回線の暗号を、

  1からかけ直すことをお勧めいたしますわ。それではごきげんよう…。


ランド:ハッキング…ですね。帰還してからの1日で我が軍の暗号パターンが抜かれるとは…。
  レイア様が優れているのは、操縦能力だけではない模様ですね。


リブ:…どこまで!どこまで我々を愚弄するつもりだ、あの女は!おのれぇぇ!


アイゼ:リブボルト、落ち着け。回線の暗号を急いで別回線に切り替えろ。正規回線、
  サブ回線両方だ。…あの死神めが。  



~~~~~~~~~~~~~~~~~


ランド:次回予告。


リブ:我が精鋭部隊を打ち破った、生意気な反乱分子「ラグナロク」


アイゼ:ヴァルハラ自治区とラグナロクの繋がりを確かめるため。


レイア:自治区を破壊するため。そして破壊活動を止めに来るであろう援軍を殲滅するため。


ランド:そのために、サハドの死神がヴァルハラを舞う。


リブ:次回、機甲兵団ワルキューレ ~第7話 忍び寄る影~


レイア:さぁて、サハドの新鋭機を潰した部隊の、お手並み拝見といこうか。
  前の戦場よりは、楽しめそうだねぇ…。あっははははは…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


続く