群青の闇にぽっかりと浮かぶ糖蜜色の月。

  あきまま文庫-MOON

今宵はHALLOWEEN NAIGHT

魑魅魍魎共が浮かれ騒ぐ夜。


あれから一年。

密やかな吐息が零れる。。。


Yo ho yo ho a pirates life for me.
We pillage,plunder,We rifle,and loot.
Drink up me 'ear-ties yo ho.
We kidnap and ravange and don't give a hoot.
Drink up me 'ear-ties yo ho.

(ヨーホー、ヨーホー、海賊の暮らし
 略奪 強盗 くまなく奪う
 親切心なんてものはとっくに飲みほしちまったぜ、ヨーホー
 誘拐 破壊 おかまいなしさ
 思いやりなんてものは忘れたさ、ヨーホー

                    A PIRATE'S LIFE FOR ME)


甲板から聞こえる荒くれ男達の濁声。

みんな勝利の美酒に酔いしれているのだろう。


「どうした、こんなトコで」

不意に艶やかなバリトンボイスが響く。

振り向かなくても判る。背中に注がれる熱い視線。

逞しい腕がわたしの肩を強く抱きしめた。

彼の纏う重苦しい空気にわたしの全てが包まれる。

「月を・・」

「え?」

「月を見ていたの」

「ああ・・・」

さらりと絹のような黒髪が揺れ、天を仰ぎ見た。

「綺麗な月だな。あの夜と同じだ」

「覚えていた?」

わたしはゆっくり身体を捻ると、彼の方へと向き直る。

燃え盛る炎のような瞳がわたしの心を捉えた。

そう・・あの夜のように・・・


ほんの一年前まで、わたしはイギリスの名門コートニー家の

ご令嬢として何不自由なく幸せに暮らしていた。


否―――

幸せなのだと信じていた。

狭い籠の中で飼いならされた小鳥は大空を飛び回る

術を知らない。

だから・・

二周りも歳の離れた公爵様の後妻として嫁ぐ話にさえも

首を縦に振らざるを得なかった。

父母の言葉に逆らう術など持ち合わせてはいなかったのだから・・


輿入れの前夜寝付かれぬまま、わたしは月を眺めていた。
   あきまま文庫

折りしもハロウィン・ナイト。

ジャク・オ・ランタンの灯りが街のそこかしこでゆらゆらと揺れている。

わたしの中に芽生えたほんの少しの冒険心。

嫁いでしまえば今以上に窮屈な暮らしが待っている。

今夜だけ・・・すぐに戻るから・・

乳母(ばあや)の目を盗んで、そっと館を抜け出した。

外から来るものに対しては堅強な見張りも内から出て行くものには

大した注意を払わない。

わたしの謀は造作もなく成功してしまった。


さぁ、これからどこへ行こう。

タイムリミットはきっかり8時間。

婚礼の支度をする為、メイドが部屋を訪れるまでには

帰らなくてはいけない。

「Trick or treat.」

家々の戸口を叩くゴブリンや魔女が口々に唱える呪文。

顔を覗かせた大人たちは皆一様に怯えた表情を形作った。

形式的なやり取りの末、子供たちはお菓子を手にする。

大人たちも愉しそうに微笑む。


「はぃ。お姉ちゃんにもあげる」

いきなりわたしの前を歩いていた小さなゴーストが振り向くと

クッキーの入った袋を差し出した。

「え・・あの…」

「今日の報酬さ」

大人びた口調に思わず笑みが零れる。

「どうもありがとう。坊や」

ゴーストは頭を掻くと足早に闇の中へと溶け込んでいった。

あきまま文庫


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時期はずれになってしまいましたねあせる

思いつきでささっと一話完結にしようと書き始めたら・・

例の如く終わらなぁ~い!

初の外国物←  でも時代考察はめちゃくちゃです。。


もうしばらくお付き合い下さいませ>w<