【藤井聡】「もはやデフレ状況ではない」という言葉について
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/07/01/fujii-97/
(抜粋)
「(3)有効求人倍率が1.08倍」についてですが、
藤井氏は「未だ」というフレーズに「0.61という水準は低いのだ」というニュアンスを込めておられるわけですが、果たしてその通りなのでしょうか?
「高い、低い」を論じるには必ず比較対象が必要になります。藤井氏はこれに続く文章で、「これは、正社員になりたい人が100人いるとすると、なれない人が約40人程度いる、ということを意味しています。」と述べています。つまり、「正社員になりたい人全員は正社員になれないのだから、この水準は『低い』のだ」と仰りたいのでしょう。したがって、この場合の「低い」の比較対象は「望む人全員が正社員になれる『1.00』」であると考えられます。
「なりたい人が全員正社員になれること」そのものの是非は脇に置くとして、過去の実績から正社員有効求人倍率「1.00」が比較対象として妥当なのかどうかを考えてみましょう。
厚生労働省 一般職業紹介状況
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001119759
より、
表番号1:労働市場関係指標(求人倍率・求人数・求職者数・就職件数)
表番号14:正社員労働市場関係指標(実数及び季節調整値)
を元に「有効求人倍率」の推移を見ると、
足下で全体の有効求人倍率が「1.00」を超えて改善していること、正社員有効求人倍率も同様に回復傾向にあることが分かりますね。直近で同程度の水準であった07年でも正社員有効求人倍率はほぼ「0.60」程度ですので、別段「0.61」という数字を「低い」とは言えないのではないでしょうか?
ちなみに、「正社員有効求人倍率」の統計を取り始めたのが04年11月だそうで、それ以前のデータは存在しません。よって、過去(例えば高度成長期)の正社員有効求人倍率がいくつだったかは分かりません。つまり、「望む人全員が正社員になれないのはおかしい」というのを正社員有効求人倍率の統計データから主張するのは難しい、と言わざるを得ません。
むしろ、「統計開始以来の最高値を更新中!」と宣伝してもいいくらいでしょう。藤井氏は「内閣官房参与」でもあるワケで、自分が関与している政権のプラス材料をあえて宣伝しない姿勢はどうなのかと。
さて、グラフを眺めていると、「全体の有効求人倍率」と「正社員有効求人倍率」が似たような推移を見せているので、相関関係を見てみましょう。
かなり、強い相関関係にあることが分かりますね(R2=0.9939)。つまり、有効求人倍率が「1.00」の時、正社員有効求人倍率はほぼ「0.60」程度になるようになっているのが本来の関係だ、ということです。したがって、「有効求人倍率はまあまあだけど、正社員有効求人倍率がまだ低い」という指摘は過去の統計を全く踏まえていない話である、と言わざるを得ません。
そもそもの話、「有効求人倍率が1.00以上」を達成できていた期間ってどれくらいあるんでしょう?
厚生労働省 労働市場分析レポート第29号 平成26年2月28日
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/roudou_report/dl/20140228_02.pdf
より、
こうやって見ると、高度成長期の後期、バブル景気、いざなみ景気の後期、くらいしか有効求人倍率は「1.00」を超えていないんですね。「いい感じ」どころか「久方ぶりの高水準」と言うべきではないのでしょうか?
過去の実績で見てもかなり稀な「良い実績」を「まぁまぁだね」と言い、相関関係を見れば別段悪いわけでもないモノを「まだ低い!」と言う・・・。なんだか『是々非々』のバランスを欠いてるような・・・。
このレポートでは「有効求人倍率が上昇局面で1倍を超えた年」をピックアップして各種指標を比較しています。
有効求人倍率を雇用形態別に比較したものですが、確かに時代が進むにつれて全体の有効求人倍率に対する「常用フルタイム」の求人倍率は低下傾向にあるようです。しかしながら、産業構造が変わり、雇用形態が多様化し、さらにこれから先も働き方の多様化が予想される中にあって、果たして「常用フルタイムの求人倍率」だけを比較して「正社員になれない労働者がいるのは問題だ!」と主張するのはどうなんでしょう。
さて、「バランスを欠いた評価」をする人と言えば、
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-811.html
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-865.html
えっと、確かこの方々は「師弟」でもあり「兄弟弟子」でもあるんでしたっけ?
「類は友を呼ぶ」とはよく言ったものです。
「批判のための批判」「活動のための活動」と“あらぬ言いがかり”を付けられたくないのであれば、口先で否定するのではなく、実際の言動で示していただきたいものです。