閉経後乳癌治療剤「フェソロデックス」、閉経後再発乳癌で初回治療から使用可能に | 好奇心の扉

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アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市北区)は6月5日、抗エストロゲン剤/閉経後乳がん治療剤「フェソロデックス®筋注250mg(一般名:フルベストラント=Fulvestrant)」に関して、添付文書の一部改訂を行ない、閉経後進行・再発乳がんに於いて初回治療からの使用が可能となったと発表しました。


フェソロデックス筋注250mg
抗エストロゲン剤/閉経後乳癌治療剤「フェソロデックス®筋注250mg」


「フェソロデックス®筋注250mg」は、閉経後乳がんを適応として2011年9月に製造販売承認を取得し、同年11月の薬価収載をもって国内における販売を開始した、抗エストロゲン剤/閉経後乳がん治療剤です。
 *エストロゲンとは…卵胞ホルモン、又は発情ホルモンの事。


ホルモン受容体陽性乳がんは、乳がん患者全体の80%以上を占めるとされ(Robertson JFR et al. Lancet 2016)、中でも、閉経後進行・再発乳がんは、現状の治療法では治癒が困難とされています。
この為、治療は患者のQOL(Quality of Life=生活の質)を維持しながら、癌の進行を遅らせる事を目的に行われている。


乳がん細胞の増殖を促進するエストロゲン(卵胞ホルモン)が作られる場所は、閉経前と閉経後では異なります。
アロマターゼ阻害薬
アロマターゼ阻害薬の作用。

閉経前の女性では、エストロゲンは主に「卵巣」で作られます。


閉経後の女性では、卵巣機能が低下し、エストロゲンの量が減ります。その代わりに、副腎からアンドロゲンと言う男性ホルモンが分泌され、脂肪組織などに存在している“アロマターゼ”と言う酵素の働きによって、少量のエストロゲンが作られ続けます。

エストロゲン受容体とは

エストロゲン受容体にエストロゲンが結合
エストロゲンがエストロゲン受容体と結合する事で
癌細胞が増殖する。
AF-1とAF-2はエストロゲン受容体にある転写活性化領域(AF)。


この為、閉経の前と後では、治療に使う薬が異なる事があります。“アロマターゼ阻害薬”は、閉経後の乳がんのエストロゲンの合成を抑え、乳がん細胞が増殖しないようにする薬剤です。



今回の添付文書改訂は、昨年公表された第Ⅲ相国際共同臨床試験(FALCON試験)の結果に基づき、内分泌療法(ホルモン療法)による治療歴の無い『閉経後ホルモン受容体陽性進行乳がん』患者を対象に、現在の標準治療である“アロマターゼ阻害剤”の「アリミデックス®(一般名:アナストロゾール)」と比較した試験に於いて、「フェソロデックス」は主要評価項目である無増悪生存期間(Progression-Free Survival)を有意に改善。

患者の病勢進行リスクを約20%減少させる事が示されました。
また、同試験で認められた有害事象は概ねこれまでの安全性プロファイルと一致していました。


効能効果の改訂前と改訂後
効能・効果の改訂前と改訂後

この結果を受け、本剤の「効能・効果に関連する使用上の注意」の項に記載されていた「本剤の内分泌療法未治療例における有効性及び安全性は確立していない。」が削除された事により、閉経後進行・再発乳がんの患者に、初回治療から、より長期の病勢コントロールが期待出来る、新たな治療選択肢を提供する事が可能になったとしている。

またこれに伴い、副作用の項目についても「削除」と「追加」が行われた。

副作用の改訂前と改訂後
副作用の改訂前と改訂後



エストロゲン受容体にアロマターゼ阻害薬が結合し増殖阻止
アロマターゼ阻害薬(アリミデックス等)は、
エストロゲン受容体と結合しエストロゲン受容体の増殖を阻止する。
この時、AF-1の転写活性は生きている。



「フェソロデックス®筋注250mg」の作用機序。
エストロゲン受容体にフェソロデックスが結合ERそのものを破壊
「フェソロデックス」はエストロゲン受容体と結合し増殖を阻止すると同時に
エストロゲン受容体そのものを破壊(細胞死)する。



「フェソロデックス®筋注250mg」は、現在、標準治療の“アロマターゼ阻害剤”のように、エストロゲンの合成を抑えるだけでなく、エストロゲン受容体そのものを分解する作用機序を持っており、欧米に先駆け、閉経後進行・再発乳がんの1次治療薬として使用可能になった事で、病勢の進行を有意に阻止すると期待される。







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