麻黄(エフェドリン)による尿閉の怖さ | MTFのAkemiのblog イタリア児童文学・皆既日食・足摺岬が好き

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私は、イタリア児童文学が大好きで、皆既日食も大好きで、足摺岬も大好きな、団塊の世代に属する元大学教員で、性別はMTFです。季節の話題、お買い物の話題、イタリア語の勉強のしかた、新しく見つけたイタリアの楽しい本の話題などを、気楽に書いていこうと思っています。

去年の年末から今年の正月休みにかけて「尿閉」というひどい体験をしました。端的に「尿が出なくなる」症状です。

 

尿道が狭まって排尿に支障が起こるのは、わたしのようなMTFの性別適合手術(SRS)を受けている者には起こりがちのことなので、最初はそれの再発かと思いました。が、今回はどうもそれとは違っています。SRSの影響による尿道狭窄ならば、尿道カテーテルのバルーンを膀胱に達するより前に尿道内で膨らませ、そのまま引っこ抜くという荒療治を何回かやると改善するもので、そのやり方もちゃんと執刀したクリニックで教わっています。が、今回は、その方法ではほとんど改善しません。

 

尿意が強く起こってトイレに行っても、尿はほんの少しずつしか排出されないので、残尿が溜まり続け、ひどい「頻尿」になります。おちおち眠ることもできなくなります。

 

しかも、いちばん悪化したのが、救急外来もほとんど開いていない大晦日。結局、近所の泌尿器科クリニックが軒並み正月休みをとっている1月4日までは、ひたすら我慢の毎日で、5日にクリニックが開いてから初めて駆け込みました。

 

そのクリニックで最近の服薬経歴がわかる「お薬手帳」を見てもらった結果、「風邪薬の前立腺に対する副作用が原因のようです」との見立てを得ました。

 

なるほど、十二月の下旬に入って一般的な風邪を引き、内科クリニックで漢方薬の「麻黄附子細心湯」を処方してもらっていたのですが、確かに、尿閉が起こったのはそれを飲み始めてすぐで、大晦日から三が日にかけても、風邪がこじれたままだったので、その薬を飲み続けていたのです。

 

「麻黄」は風邪薬によく使われる生薬で、その中の有効成分は「エフェドリン」だそうです。エフェドリンは風邪で弱った体を元気にする作用があるので、多くの市販の風邪薬に入っており、伝統的な漢方薬である「葛根湯」にも「麻黄」の形で入っているそうですが、「麻黄附子細心湯」の場合は、麻黄が主成分となっているため、副作用が出る場合ももろに大きく出るとのことでした。

 

で、その麻黄、ないしエフェドリンが起こす副作用の代表的なものが、前立腺肥大を増悪させることだそうです。男性(の身体で生まれた人)で、年齢の高い人は、前立腺が肥大している人が多いこと、周知のとおりですが、そういう人がエフェドリンの一定量以上含まれている薬を飲むと、肥大した前立腺が外側へ向かってのみならず内側の尿道に向かっても腫れてきて、尿道を圧迫し、場合によっては腹圧をかけても尿が通らないほどにしてしまうとのこと。これが「尿閉」だそうです。

 

 

 

 

幸いにして、原因がわかったので、すぐに麻黄附子細心湯の服薬をやめ、三日か四日ぐらいするとだいぶ楽になりました。そしてあらためて前立腺の体積を測ってもらったら、29ミリリットルで(健康な人は15~20ミリリットル)、若干肥大の域に入っているそうです。

 

わたしの場合、SRS後もいろいろ事情あって、男性ホルモンを時折補充してもらっていたせいで、前立腺に関しては同年齢の男性とあまり変わりのない状態に置かれてしまっていたわけですね。

 

幸いにして、SRSで尿道の長さを縮めてもらっているおかげで、尿道カテーテルを自分で突っ込んで尿を排出しようとする際には、普通の男性連中ほど苦労しなくて済み、それがせめてもの救いでした。

 

これを機に、そろそろ男性ホルモン補充療法は卒業して、体のホルモンバランスを(現在の両性ホルモン混合状態から)女性ホルモン中心に完全に切り替えるほうへと進もうかと思っています。